米国オリンピックアスリートは5年長生き 1921年以降参加の8,000人以上を調査
米国のオリンピック参加アスリートは一般人口に比較して、約5年長寿であるというデータが報告された。疾患別にみると、心血管疾患の抑制により2.2年、がんの抑制により1.5年の寿命延長がみられるという。
この研究の解析対象は、1912年(日本がアジアの国として初めて参加したストックホルム大会)~2012年(ロンドン大会)の夏季または冬季オリンピックに少なくとも1回、米国代表として参加したアスリート。出生日または出生地が不明の選手は除外し、各選手の最初のオリンピック参加から追跡を開始して、死亡日または研究のエンドポイントである2016年1月1日で追跡を終了した。それらの情報は、オリンピック競技者の公式リストおよび、新聞、書籍などの信頼できる情報から収集した。
加えて、第二次世界大戦以降の1948~2012年のオリンピックに参加した選手については、死因に関する分析も行った。
米国のオリンピック参加アスリートは一般人口より5.1年長寿
合計8,134人が選択基準を満たしていた。うち10人は出生日や出生地が不明であるため除外され、8,124人(男性5,823人、女性2,301人)が追跡され、2,309人(男性2,084人、女性225人)の死亡が確認された。平均寿命は72.4±16.1歳であり、2016年まで生存していた人の平均追跡期間は28.6±16.8年だった。
オリンピックに参加したアスリートの平均寿命は、一般人口に比べ5.1年(95%CI:4.3-6.0)有意に長かった。
心血管死やがん死の抑制が長寿に関連
1948~2012年のオリンピックに6,681人(男性4,509人、女性2,172人)の米国人アスリートが参加していた。このうち869人の死亡が確認された。このサブグループでは、一般人口に比較し5.3年(95%CI:4.9-5.8)の有意な寿命延長が認められた。
死因が不明の71人(8%)を除いて、長寿に寄与している疾患抑制効果を検討すると、心血管疾患に(虚血性心疾患、脳血管疾患)よる早期死亡の抑制によって2.2年(同1.9-2.5)、性別では男性2.3年(同2.0-2.6)、女性1.8年(同1.3-2.3)の寿命延長が認められた。また、がん死のリスク低下により1.5年(同1.3-1.8)、男性1.6年(同1.3-1.9)、女性1.1年(同0.5-1.8)の寿命延長が認められた。
同様に、呼吸器疾患(インフルエンザや肺炎、慢性下気道疾患など)の抑制によって0.8年(同0.7-0.9)、男性0.8年(同0.7-0.9)、女性0.7年(同0.4-0.9)、外的要因(怪我や事故、殺人など)の抑制により0.5年(同0.4-0.6)、男性0.6年(同0.4-0.7)、女性0.4年(同0.3-0.5)、内分泌・代謝性疾患(糖尿病や脂質異常症、アミロイドーシスなど)の抑制により0.4年(同0.2-0.5)、男性0.3年(同0.2-0.4)、女性0.4年(同0.2-0.5)、消化器系疾患(肝硬変や肝不全、肝線維症など)の抑制により男性0.3年(同0.2-0.4)、女性0.3年(同0.2-0.4)の寿命延長が認められた。
一方、神経系疾患(アルツハイマー病やパーキンソン病、多発性硬化症など)の抑制による寿命への影響は、男性が-0.1年(同-0.3-0)、女性が0.1年(同-0.2-0.4)、精神疾患(認知症や統合失調症など)の抑制による寿命への影響は、男性が0年(同0-0.1)、女性が0.1年(0-0.3)で、いずれも有意でなかった。
これら、オリンピック参加アスリートの寿命に対する各死因の影響は、男性と女性とで同等だった。
以上の結果より、著者らは「米国のオリンピック選手は一般人口より長寿であり、それは主に心血管疾患と癌のリスクが低いことによってもたらされている。神経系疾患と精神疾患については、一般人口と差がない」と結論をまとめている。
文献情報
原題のタイトルは、「Female and male US Olympic athletes live 5 years longer than their general population counterparts: a study of 8124 former US Olympians」。〔Br J Sports Med. 2020 Jul 29;bjsports-2019-101696〕
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