スポーツ栄養WEB 栄養で元気になる!

SNDJ志保子塾2024 ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー
一般社団法人日本スポーツ栄養協会 SNDJ公式情報サイト
ニュース・トピックス

アスリートが筋肉量低下を防ぐために必要な栄養素は? 酸塩基平衡からの検討

エリートアスリートでは酸塩基平衡が酸性側に傾いていることが多く、そのことと筋肉量低下が関連しているとのデータが、オリンピックレベルのエリートアスリートを対象とする検討から明らかになった。このような場合の対策として著者らは、アスリートにカリウムやマグネシウムを摂取し、酸塩基平衡を整えることを推奨している。リトアニアからの報告。

アスリートが筋肉量低下を防ぐために必要な栄養素は? 酸塩基平衡からの検討

オリンピック参加レベルのアスリート323名を調査

高強度の運動負荷は体内の酸産生を増やして酸塩基平衡に影響を及ぼし、アシドーシス、筋疲労、あるいは筋肉合成の低下につながる。これに対して栄養は酸塩基平衡に影響を与える要因の一つであり、食事摂取内容と尿pHに強い相関があることが報告されている。

野菜や果物は、食事性酸塩基負荷の指標である「潜在的腎臓酸負荷(potential renal acid load;PRAL)」をマイナスにする一方で、蛋白質や脂質の摂り過ぎはPRALをプラスにする。PRALがプラスに傾いた食事は、骨石灰化の減少、尿中カルシウム排泄の増加につながり、骨折のリスクをもたらす可能性もある。

ただし、エリートアスリートにおいて、食事と酸塩基バランス、筋肉量、ミネラルレベルがどのように関連するのかは、明確になっていない。本論文の著者らは、リトアニアのエリートアスリートで以下の検討を行い、この関連を明らかにした。

検討対象は、東京2020への参加が決定しているアスリート、および欧州選手権や世界陸上大会の参加経験がある341名のエリートアスリート。年齢は16~33歳(平均18.1±3.3歳)。男性234名(72.4%)、女性89名(27.6%)。トレーニング歴は7.9±3.8年で、1日あたり175.6±60.6分、週に5.8±0.8日。嫌気性スポーツ競技が130名(40.2%)、好気性競技が193名(59.8%)。

食事摂取状況とエネルギー消費

24時間思い出し法により評価した摂取エネルギー量は3,343±1,133kcal/日で、消費エネルギー量と91.4±27.8%一致した。

栄養素別にみると、競技種別(嫌気性か好気性か)にかかわらず、脂質の比率が39.0±7.8%と高く、推奨値である20〜35%を超えていた。蛋白質に関しては1.7±0.6g/kg/日であり、推奨(1.4~2.0g/kg/日)の範囲内だった。ただし、嫌気性スポーツ競技選手の29.2%が2.0〜4.8g/kg/日を摂取し、好気性スポーツ競技選手も24.4%が2.0〜3.9g/kg/日を摂取していた。

食習慣と潜在的腎臓酸負荷(PRAL)、酸塩基平衡

アスリートの食事のPRALを評価した結果、65.9%はプラス(酸性)だった。

競技種別にみると、嫌気性スポーツ競技選手ではPRALが10.7±42.1mEq/日、好気性競技選手は9.3±35.9mEq/日だった(p=0.761)。また、推定内因性酸産生量(net endogenous acid production;NEAP)は、嫌気性競技選手で56.9±43.3mEq/日、好気性競技選手で53.7±37.1mEq/日であり(p=0.469)、競技種別ではいずれも有意差がなかった。

蛋白質摂取量が多いほど、推定内因性酸産生量(NEAP)が増える

食事からの蛋白質摂取量が多いほど、推定内因性酸産生量(NEAP)が増えるという有意な相関も明らかになった。

具体的には、嫌気性競技選手においては蛋白質摂取量とNEAPの間にr=0.482(p<0.001)という比較的強い相関があり、好気性競技選手においてもr=0.274(p<0.001)という弱いながらも有意な相関が認められた。

NEAPの高い食事やリンの摂取が筋肉量低下と有意に関連

次に、多変量回帰分析によって食事摂取状況と筋肉量の関係を検討。すると、筋肉量が多いことと有意に関連する因子として、蛋白質摂取量が多いことが抽出された(β=12.6,p<0.001)。

一方、筋肉量が少ないことと有意に関連する因子として、NEAPが高いこと(β=-1.2,p<0.001)と、リン摂取量が多いこと(β=-10.2,p<0.001)の2項目が抽出された。

蛋白質を摂取するならカリウムやマグネシウムも

その他の検討も含めて著者らは、「リトアニアのエリートアスリートの多くは食事要件を満たしておらず、脂質摂取量が多すぎる。また、アスリートの25〜30%は蛋白質摂取量が多すぎ(2.0〜4.8g/kg/日)、食物性酸塩基平衡(PRAL)の不均衡と、体内での内因性酸生産(NEAP)過剰をもたらす食事をしている。そしてNEAPが高い食事では筋肉量が減少する。アルカリ性食品の摂取によって酸塩基平衡のバランスを整える必要がある」とし、「運動負荷による筋肉量増大を最大化するために、アスリートは新鮮な野菜やドライフルーツなどからカリウムとマグネシウムを推奨摂取量(recommended daily intake;RDI)の倍量摂取することが勧められる」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Dietary Acid-Base Balance in High-Performance Athletes」。〔Int J Environ Res Public Health. 2020 Jul 24;17(15):E5332〕
原文はこちら(MDPI)

この記事のURLとタイトルをコピーする
志保子塾2024後期「ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー」

関連記事

スポーツ栄養Web編集部
facebook
Twitter
LINE
ニュース・トピックス
SNDJクラブ会員登録
SNDJクラブ会員登録

スポーツ栄養の情報を得たい方、関心のある方はどなたでも無料でご登録いただけます。下記よりご登録ください!

SNDJメンバー登録
SNDJメンバー登録

公認スポーツ栄養士・管理栄養士・栄養士向けのスキルアップセミナーや交流会の開催、専門情報の共有、お仕事相談などを行います。下記よりご登録ください!

元気”いなり”プロジェクト
元気”いなり”プロジェクト
おすすめ記事
スポーツ栄養・栄養サポート関連書籍のデータベース
セミナー・イベント情報
このページのトップへ