車椅子バスケ選手の炎症反応や筋肉痛をロイシン濃縮必須アミノ酸(LEAA)が抑制
ロイシン濃縮必須アミノ酸のサプリメントが、車椅子バスケット選手の試合やトレーニングによる炎症反応を抑制し、筋肉痛を緩和する可能性が報告された。韓国で行われたプラセボ対照二重盲検クロスオーバー試験の結果であり、韓国運動栄養学会のジャーナル「Journal of Exercise Nutrition & Biochemistry」に掲載された。
韓国車椅子バスケリーグ上位チームの選手対象にプラセボ対照クロスオーバー試験
この研究の対象は、韓国の車椅子バスケットボールリーグの上位チームから選ばれた、脊髄損傷のある10名のアスート。このうち1名は怪我のため試験に参加できず、他の9名で検討された。年齢は34.5±8.9歳、BMI24.0±4.42、体脂肪率18.6±4.95%。
全体を2群に分け、1群は試験デザインは必須アミノ酸(leucine-enriched essential amino acid;LEAA)のサプリメント4.0gを1日3回、5日間摂取。他の1群はプラセボを同様に摂取させた。4週間のウォッシュアウト期間の後、被験者をクロスオーバーさせ、同様の介入を行った。
LEAAサプリメントの成分は、ロイシン1.61g、リジン0.67g、バリン0.44g、イソロイシン0.43gなどで構成され、プラセボはマルトデキストリン4.0gとした。外観と味は区別できないように処理されていた。
運動テストはバスケットボールの試合とインターバルトレーニングにおいて評価した。評価項目は、筋障害マーカーとしてのクレアチンキナーゼ(CK)、炎症マーカーとしてのIL-6、TNF-αで、また視覚的アナログスケール(VAS)によって、全身、前腕、上腕、肩、背部、腹部の遅発性筋肉痛(Delayed onset muscle soreness;DOMS)レベルを測定した。
IL-6レベルと、全身および背部の筋肉痛が有意に抑制される
心拍数、自覚的運動強度、乳酸レベルには有意差なし
結果について、まずパフォーマンス関連の指標をみると、安静時心拍数、試合中の最高心拍数、平均心拍数、インターバル中の心拍数、試合中の自覚的運動強度(Rate of Perceived Exertion;RPE)、インターバル中のRPEに、条件間の有意差はなかった。また、乳酸値にも有意差はなかった。
炎症マーカーの一部に有意差
炎症マーカーのIL-6はLEAA条件とプラセボ条件の双方で、運動後に有意に増加した。反復測定結果の二元配置分散分析では、LEAA条件がプラセボ条件に比し有意に低かった。
回復期のCKレベルは条件間で有意に至らないものの、LEAA条件で低い傾向がみられた。
TNF-αはLEAA条件で回復期の1日目にピークに達し、その後、急速に低下した。一方、プラセボ条件では回復期の3日目にピークに達し、LEAA条件よりも高値だった。ただし条件間に有意差はなかった。
全身および背部の筋肉痛に有意差
VASによって評価した遅発性筋肉痛(DOMS)のうち、全身および背部のVASスコアはLEAA条件では回復期1日目にピークに達した後、急速に減少した。一方、プラセボ条件では2~3日目にピークに達し、絶対値に条件間の有意差が認められた。
これらの結果を著者らは、「激しい運動の前後にLEAAを摂取すると、車椅子バスケットボール選手の筋肉痛とIL-6レベルを低下させるのに役立つことがわかった」とまとめるとともに、「障害のあるアスリートにおけるLEAA摂取の影響のメカニズムを明らかにするさらなる研究が必要」と述べている。
文献情報
原題のタイトルは、「Effects of leucine-enriched essential amino acid supplementation on muscular fatigue and inflammatory cytokines in wheelchair basketball players」。〔J Exerc Nutrition Biochem. 2020 Jun 30;24(2):38-46〕
原文はこちら(KOREAN SOCIETY FOR EXERCISE NUTRITION)