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日本学術会議が生活習慣病予防の基盤づくりで提言 医学部での栄養教育強化も盛り込む

日本学術会議が生活習慣病予防の基盤づくりで提言 医学部での栄養教育強化も盛り込む

内閣府の特別機関の一つであり、科学に関する重要事項の政府に対する政策提言などを行っている日本学術会議の臨床医学委員会・健康・生活科学委員会合同生活習慣病対策分科会は、このほど「生活習慣病予防のための良好な成育環境・生活習慣の確保に係る基盤づくりと教育の重要性」という提言をまとめた。妊婦や幼少期の子どもへの情報提供の重要性や、医学教育での栄養・身体活動等関連の講義数の拡大、その医師国家試験での評価なども盛り込まれている。

以下はその要旨をまとめたもの。

提言の背景

健康でいることを維持する努力は、質の高い幸せな生活のために大切。一方、現在、日本人の死因や疾病負担の主要な部分を生活習慣病が占めている。生活習慣病は一次予防が重要だが、生活習慣の乱れや代謝の変化などは、幼小児期や胎児期にまで遡ることがわかってきており、より早期から根源的な対策が求められている。

例えば、第二次世界大戦中にドイツ軍に包囲されたオランダで、飢餓状態に陥った女性市民から生まれた子どもが成人後、高率に高度肥満を認めたという事実に基づく「DOHaD (胎児プログラミング仮説)」として考察されているエピジェネティックな影響は、現在では数世代にわたって続くと考えられている。しかし国内では妊娠可能年齢の女性のやせの割合が増加している。

また幼小児期に身についた生活習慣等は生涯にわたって維持される「生活習慣のトラッキング」により、成人後の生活習慣病易発症につながる。

現状と問題点

胎児プログラミング仮説や生活習慣のトラッキングへの対策を推し進めるためのエビデンスは十分でなく、質の高い研究が必要。その一方、幼小児期に望ましい生活習慣が定着するような成育環境を整えることが困難な家庭が増えているという問題がある。

今年度から導入された新学習指導要領において、児童生徒の「健康、安全、食に関する資質・能力」が重視されており、また2018年に成立した脳卒中・循環器病対策基本法は予防の推進を基本的施策に掲げており、学校教育における循環器病をはじめとする生活習慣病予防教育の推進が求められている。しかし、現状では高校終了後、特定健診の対象となるまでの期間は不健康な生活習慣が定着しやすい時期であるにもかかわらず、ほとんど対策が行われていない。

このほか、医療従事者、とくに医師によって行われる生活指導の必要性・重要性が高まっているが、生活習慣病予防のための栄養・身体活動・生活指導に関する医学部における教育が十分でないことが明らになっている。これらに関する十分な講義・実習が医学部授業に系統的に取り入れられ、医療従事者養成教育全体に浸透させるべきである。

提言の内容

エコチル調査等のライフコース疫学研究の長期継続、幼小児期・若年世代を対象とした研究の充実(所轄省:環境省、文部科学省、厚生労働省):

環境省による「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」は対象児が 13 歳に達する2027年度までの追跡が予定されているが、少なくとも特定健診対象年齢である 40 歳まで追跡を継続し、DOHaD、生活習慣のトラッキングの解明など、エビデンスをさらに充実させるべき。また、国民健康・栄養調査の生活習慣調査や血液検査の対象齢を20歳未満にも拡大すべき。

若年女性、妊産婦の栄養改善(所轄省:厚生労働省、日本栄養士会):

学童・思春期から若年成人期の若い女性(妊娠前)のやせ、妊産婦・授乳期の低栄養は、次世代にも悪影響を及ぼすことは従来から指摘されているが、改善が見られない。今までの取り組みを検証し、精神心理的アプローチ、社会的アプローチおよび栄養学的実践法を統合した取り組みを開発し、その検証と普及が必要。

地域や学協会等と連携した学校での健康教育の深化、高校卒業後以後の健康教育の機会保障(所轄省:文部科学省、厚生労働省):

成育基本法の理念に基づき学校を核とした地域のヘルスプロモーションを推進すべき。学校は地域の保健医療機関との連携や、学協会等の協力を得て健康教育・保健活動を充実すべき。国は学協会等との連携や学校保健活動の評価を促進すべきで、地域(母子)保健・学校保健、その他の個人の健康に関する記録・データが統合的に管理され、個人が長期にわたり自身のデータを利用できるシステムを早期に実現すべきである。高校卒業後以降の若年成人期における、実践力を伴う食育・健康教育の機会が広く設けられるべき。

医学部における栄養・身体活動・生活指導教育の強化(所轄省:文部科学省、厚生労働省):

生活習慣病予防効果の向上には、医師が学校等での予防活動に積極的に関与することが必要。卒前の医学教育プログラムに、生活習慣病予防のための栄養・身体活動・生活指導に関する講義・実習を系統的に取り入れるよう各大学医学部に対して指導し、共用試験 や医師国家試験において評価を行うべき。

関連情報

提言「生活習慣病予防のための良好な成育環境・生活習慣の確保に係る基盤づくりと教育の重要性」(日本学術会議、PDF)

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