朝食欠食や身体活動不足などが、希死念慮や自殺未遂と関連 米国の高校生の調査
座位時間の長さ、朝食欠食、清涼飲料水の摂取の多さ、テレビ視聴やゲームプレイ時間の長さなどが、高校生の自殺リスクと関連することが米国から報告された。著者らは、身体活動量を増やし健康的な食行動が青年期の精神的健康を改善する解決策の一つであると述べている。
全米の高校生1万4,765人を調査
この研究は、2017年の米国青少年リスク行動調査(Youth Risk Behavior Survey;YRBS)のデータを利用し、米国内の公立・私立高校の生徒の回答を解析したもの。学校単位の回答率は75%、生徒の回答率は81%で、トータル60%の回答率だった。
調査項目は、メンタルヘルスと自殺リスクに関する項目、身体活動に関する項目、座位時間に関する項目、食行動に関する項目に分けられていた。
例えば、メンタルヘルスと自殺リスクに関することとして、「過去12カ月間に2週間以上連続して、ふだん行っていたことをやめたいほど悲しい、または絶望的な気持ちになったことがあるか」「過去12カ月間に、自殺を真剣に検討したことがあるか」「過去12カ月間に、実際に自殺を試みたか」という三つの質問を設定。食行動に関しては、「過去7日間で、朝食を何日食べたか」「過去7日間に、缶、ボトルの炭酸飲料(ダイエット飲料以外)を何回飲んだか」などの質問が設定されていた。
対象者の人種/民族や学年など
対象者数は1万4,765人で、約半数(50.7%)が女子生徒、53.5%が非ヒスパニック系白人、13.4%が非ヒスパニック系黒人、22.8%がヒスパニック系、10.3%がその他の非ヒスパニック系だった。年次については、27.3%が9年生(日本の中学3年生)、25.6%が10年生(同、高校1年生)、23.9%が11年生(高校2年生)、23.0%が12年生(高校3年生)だった。66.6%の生徒は普通体重で、15.6%が過体重、14.8%が肥満であり、3.0%はやせに該当した。
過去1年間に17.2%が希死念慮、7.4%が自殺未遂
主な質問項目に対する回答について、まず、単純集計の結果を性別にみてみる。
メンタルヘルスと自殺リスク
「過去12カ月間に2週間以上連続して、ふだん行っていたことをやめたいほど悲しい、または絶望的な気持ちになったことがある」に該当したのは31.5%(男子21.4%、女子41.1)、「過去12カ月間に、自殺を真剣に検討したことがある」に該当したのは17.2%(男子11.9%、女子22.1%)、「過去12カ月間に自殺を試みた」に該当したのは7.4%(男子5.1%、女子9.3%)で、いずれも女子のほうが有意に多かった(すべてp<0.001)。
身体活動
「過去7日間にわたり、60分以上の身体活動をした日(有酸素運動のガイドラインの推奨を満たした日)が1日もなかった」に該当したのは73.8(男子64.7%、女子82.5%.p<0.001)、「過去12カ月間に、スポーツチームでプレーしなかった」に該当したのは45.7%(男子40.3%、女子50.7%.p=0.001)で、いずれも女子のほうが有意に多かった。
座位時間
「1日あたりのテレビ視聴が2時間以上」に該当したのは20.7%(男子20.8%、女子20.6%)、「ゲームやコンピューターの操作が1日2時間以上」に該当したのは43.0%(男子43.0%、女子43.1%)で、性別による有意差はなかった。
食行動
「過去7日間、朝食を全く食べていない」に該当したのは64.7%(男子60.1%、女子69.0%.p<0.001)で女子が有意に多かった。一方、「1日1回以上、炭酸飲料を飲む」に該当したのは18.7%(男子22.3%、女子15.4%)、「スポーツ飲料を1日1回以上飲む」に該当したのは12.4%(男子16.9%、女子8.3%)で、いずれも男子のほうが有意に多かった(すべてp<0.001)。
身体活動や座位時間・食行動と、メンタルヘルス・自殺リスクに有意な関連
次に、ロジスティック回帰分析により人種/民族、学年、体重カテゴリーを調整のうえ算出した調整該当率(adjusted prevalence ratio;aPR)のうち、有意であった主な関連項目を紹介する。
悲しい絶望的な気持ちと関連する因子
悲しい絶望的な気持ちと関連する因子として、朝食の欠食(aPR:男子1.59、女子1.48)、ゲームやコンピューターの操作が1日2時間以上(aPR:男子1.30、女子1.21)、スポーツチームに参加しないこと(aPR:男子1.18、女子1.16)、炭酸飲料の多飲(女子のみ。aPR1.27)、有酸素運動のガイドラインの推奨を満たしていないこと(男子のみ。aPR1.23)が抽出された。
希死念慮と関連する因子
希死念慮と関連する因子として、朝食の欠食(aPR:男子1.76、女子1.50)、ゲームやコンピューターの操作が1日2時間以上(aPR:男子1.58、女子1.42)、有酸素運動のガイドラインの推奨を満たしていないこと(aPR:男子1.36、女子1.35)、炭酸飲料の多飲(女子のみ。aPR1.36)が抽出された。
自殺未遂と関連する因子
自殺未遂と関連する因子として、朝食の欠食(aPR:男子1.98、女子2.11)、テレビの視聴が1日2時間以上(aPR:男子1.73、女子1.55)、炭酸飲料の多飲(aPR:男子1.70、女子1.56)、スポーツ飲料の多飲(aPR:男子1.57、女子1.50)、ゲームやコンピューターの操作が1日2時間以上(男子のみ。aPR1.56)が抽出された。
これらの結果から著者らは、「身体活動と健康的な食事を推奨し、座位時間の多い習慣を改善することは、青少年のメンタルヘルスに有益である可能性がある」と、結論をまとめている。
文献情報
原題のタイトルは、「Physical activity, sedentary, and dietary behaviors associated with indicators of mental health and suicide risk」。〔Prev Med Rep. 2020 Jun 26;19:101153〕
原文はこちら(Elsevier)