寒い季節の運動は脂質燃焼効果が358%にアップ! 0度と21度での高強度インターバル運動の比較
一年の中で最も寒いこの季節、健康づくりのための運動を屋外で行うのは少々気合いが必要だ。しかし、運動に脂肪燃焼効果を期待するのであれば、温かい季節よりも寒いこの時期こそ、屋外で運動すべきかもしれない。そのほうが運動による脂質酸化が著明に高まるというデータが報告された。
ただしその効果は翌日には持続せず、脂質代謝に注意すべき反応もみられたとのことだ。この研究の結果は、米国生理学会発行の「Journal of applied physiology」に論文掲載されるとともに、同学会のサイトにニュースリリースが掲載された。
高強度インターバル運動を課した当日から翌日午前中の代謝の変化を比較
この研究の対象は、レクリエーションレベルの運動を行っている健康な個人11名。男性7名、女性4名で、年齢の適格条件が18~30歳で平均23±3歳。体重関連指標は適格条件がBMI25~30で平均26.4±1.89と過体重に相当し、体重は80±9.7kg、体脂肪率は23.6±7.25%であり、VO2peakは39.2±5.73mL/kg/分。室温を21度に設定した温暖条件と、0度に設定した寒冷条件で、同一の高強度インターバル運動を課す、クロスオーバーデザインで検討した。両条件の施行間隔は少なくとも1週間以上(9±3日)とし、同じ曜日に行った。
以下に示す試験はいずれも夕方に施行された。参加者は、試験当日の夕方まで摂取するものが、両条件の試験日で同一とするよう指示されていた。
両条件の下、参加者個々の90%VO2peakに負荷設定された自転車エルゴメーターを60秒間できるだけ速くこぎ、続く90秒間は30%VO2peakのインターバルとする高強度インターバル運動を10回課した。この運動に伴う、体温、心拍数、脂質・炭水化物酸化、血糖値などを測定。
試験終了後の20時に研究者が用意した栄養組成が統一された栄養バー(炭水化物445g、脂質5g、蛋白質9g)を摂取、22時に就寝してもらった。翌朝にも研究者が用意した食事(炭水化物26%、脂質66%、蛋白質8%の高脂肪食)を摂取。その後、9時から12時まで1時間おきに4回の採血検査を行い、脂質・糖代謝への影響を検討した。
寒冷条件では運動中の脂質酸化が約4倍に上昇
高強度インターバル負荷中の比較
運動負荷中に計測したパラメーターのうち、条件間でいくつかの有意差が認められた。 まず、体温は寒冷条件のほうが低値で推移した。
脂質酸化速度は温暖条件よりも寒冷条件のほうが最大113%早く、トータルの脂質酸化量は358%に及んだ。その一方、炭水化物の酸化速度は有意差がなかった。
VO2とエネルギー消費は、10回施行した高強度負荷の初回時点のみ寒冷条件のほうが高く有意差が認められたが、2回目以降はいずれも同レベルだった。
翌日午前中の代謝への影響
翌日の朝食前から摂食後4時間にわたり5回測定された代謝マーカーのうち、インスリン、中性脂肪、総コレステロールおよびHDL-コレステロールはほぼ同等に推移した。ただし、朝食前値を基準にした4時間後までの上昇曲線下面積(incremental area under the curve;iAUC)で比較すると、有意/非有意な違いが認められた。
例えば血糖値のiAUCは、温暖条件では22.48±13.395mg/dLであったのに対し、寒冷条件では-36.95±51.417mg/dLであり、有意に小さかった。インスリンのiAUCは同順に、25.45±12.048mU/L、33.94±8.235mU/L、中性脂肪のiAUCは165.00±140.968mg/dL、136.776±132.872mg/dLであり、有意差はなかった。
一方、LDL-コレステロールには、食後1~2時間に有意差がみられ、寒冷条件のほうが高値で推移していた。
著者らは本研究の限界点として、検討対象者数が十分でなく、対象者は寒冷環境での高強度インターバル運動を日常的に行っている人ではないことなどを挙げている。そのうえで結論を、「温暖環境と比較して寒冷ストレス下で高強度インターバル運動を行うと脂質酸化が増加する。ただし翌朝の食後の代謝反応への影響は小さく、また好ましいとは限らない」とまとめている。
関連情報
Cold Weather May Help Burn More Fat during Exercise | American Physiological Society(米国生理学会)
文献情報
原題のタイトルは、「High-intensity interval exercise in the cold regulates acute and postprandial metabolism」。〔J Appl Physiol (1985). 2020 Dec 3〕
原文はこちら(American Physiological Society)