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特集「主婦の食生活意識調査」(Ajinomoto Monitoring Consumer Survey)
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栄養バランスよりも簡便さが第一に~40年にわたる調査から見る食生活の変化【後編】

栄養バランスよりも簡便さが第一に~40年にわたる調査から見る食生活の変化【後編】

食生活で主婦が煩わしいと思っていることを事細かに調査

味の素グループが40年以上にわたって行っている「主婦の食生活意識調査(Ajinomoto Monitoring Consumer Survey)」の結果について、前編では、本調査が行われている背景や調査の対象・手法とともに、時間に追われて夕食の準備をする主婦が増加していること、それに関連し、献立に際して「簡単」であることが重視され、栄養指導における重要テーマである「栄養バランス」はないがしろにされがちであるという実情を紹介した。

後編ではさらに、主婦は食事に関するどのような行為を煩わしいと感じているのかという点や、栄養バランスを整えるうえで大切な食事の品数をどのように考えているのかという質問に対する回答を紹介する。

前編はこちら

食事関連行動の多くが「面倒」であり、しかも「面倒感」が増している

ここまでに取り上げた質問に対する回答で、多くの主婦が限られた時間の中で食事の支度をしており、栄養面に十分な配慮を行き届かせることができていないことが明らかになった。では具体的に、食事の支度や後片付けなどの工程の中で、とくに何が面倒なのだろうか。

食事にまつわるすべての行為について、面倒だとする人が増加

食事に関連することを、食材を購入する段階から、献立を立てて調理し盛り付けて、最後のゴミの始末まで、13工程に分類。それぞれについて、面倒だと「いつも思う」と「時々思う」と回答した人の割合を下図に示す。

全体的にどの工程も面倒だとの回答が多いことがわかるが、「献立を考える(79%)」ことや「食材の下処理(74%)」、「油で揚げる(64%)」、「後片付け(74%)」、「ゴミの始末(68%)」などはとくに面倒だと捉えられがちのようだ。その一方で、「仕上がった料理を皿に盛り付け(27%)」たり、「テーブルに並べる(31%)」ことは、それほど面倒だとは思われていないことがわかる。また、調理工程について細かくみると、下処理や揚げるという加熱調理は面倒と捉えられやすい一方で、同じ加熱調理でも、焼く、炒めるなどの方法や味付けは、それほど面倒がられていない。

なお、この図で注目すべきポイントは、括弧付きで示した2012年調査の結果だ。2018年調査に比較して、すべての項目において「面倒と思う」と回答した人の割合が低いことがわかる。逆に言えば、料理にまつわるすべての行為について、面倒だと感じる人が増えたということだ。

とくに、食材の購入を面倒だとする回答が51%から60%へと9ポイント上昇している。同様に、「煮る」という加熱調理も面倒だとの回答が9ポイント増えている。出前などの料理デリバリーの人気の高まりの背景には、このような変化も関係しているのかもしれない。

食事の支度や後片付けについて面倒に思うこと

食事の支度や後片付けについて面倒に思うこと

(出典:味の素グループ「主婦の食生活意識調査」)

年齢層別の回答~際立つ30代の忙しさ~

この回答を年齢層別にみた結果が右側の表の部分だ。各項目ごとに、「面倒と思う」人の割合が最も高かった年齢層は数値を赤字で示している。お気づきのように、全項目において30代がトップである。とくに、献立を考えることや食材の下処理、後片付け、ゴミの始末は、面倒だと思うとの回答が8割以上に上る。

前編の最初に紹介した質問でも、時間に追われながら夕食の支度をしている人の割合が30代で最も高いという結果だった。この二つの質問の回答から、未就学の小さな子どもがいることの多い世代の主婦に対しては、「時短」を最重視した栄養指導でなければ実効性が低い可能性が考えられる。

料理の品数を決めずに支度をしている!

最後に、「夕食の品数を何品以上と決めているか」との質問に「はい」または「どちらかと言えば'はい'」と回答した人の割合の経年的な変化をみてみよう。

まず、全年齢層でみると、2000年には両者の合計が41%であり、2015年と2018年は同率の34%に低下していた。この結果からも、時間に追われて食事の支度をしている姿が垣間見れる。しかし、単に「主婦は忙しいのだ」と認識するにとどまらず、そのような人たちに栄養指導を行う場合にどのような工夫が必要かを考えてみる必要もありそうだ。具体的には、品数を決めずに食事の支度をしている人に対し、通り一遍の指導法で栄養バランスの整え方を伝えることは、極めて困難と言えるだろう。

夕食の品数を何品以上と決めているか

夕食の品数を何品以上と決めているか

(出典:味の素グループ「主婦の食生活意識調査」)

年齢層別の回答

次にこの回答を年齢層別にみてみる。各年齢層で2000年に比較し、品数を決める人が減少していることがわかる。

20代は2000年時点では48%と、約半数は品数を決めていたのだが、2015年には41%、2018年には32%と急速に減少してしまった。30~40代は全年齢層での集計結果と同じような傾向と言えるだろう。50代は2000年から2015年にかけて42%から31%と10ポイント以上減少したが、2018年にやや持ち直している。60代は他の年齢層に比較し、品数を決める人の割合が高いものの、やはり経年的な減少傾向にあるようだ。

以上、2回にわたって、味の素グループが40年以上継続している「主婦の食生活意識調査(Ajinomoto Monitoring Consumer Survey)」の結果の一部を紹介してきた。同調査は、国民の食生活の経年的な変化を追える数少ない調査であり、その結果から、日本の主婦が食事の支度にあてる時間が急速に短くなりつつある実情が明らかになった。家庭の食卓をあずかる主婦のこのような変化は、家族全員の健康にも影響するであろうし、結果として将来の日本人の健康にも影響が及びかねない。

管理栄養士や栄養士は、このような変化を理解したうえで、栄養指導のスキルにより一層、磨きをかけていく必要がありそうだ。

特集「主婦の食生活意識調査(Ajinomoto Monitoring Consumer Survey)」

前編はこちら

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2020年度全国栄養士大会リポートを公開

「2020年度全国栄養士大会」(81/〜8/31)では、『女性の「食」に対する意識や考え方の現状からバランスよく食べるの指導について考える』をテーマにしたオンライン講演を実施しました。「あじこらぼ」では、鈴木志保子先生の解説とともに、その概要のリポートを公開しています。このリポートをリーフレットにしたPDFのダウンロードも可能です。

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