あなたは何タイプ? SNS利用者の特性をパターン化し分析、有効性を高める
2000年から2018年にかけてインターネットの利用者数は千パーセント以上増加し、現在、世界人口の半数以上がインターネットにアクセス可能と言われている。この変化は当然のように健康管理の手段にも波及している。いわゆる「健康アプリ」と呼ばれるツールは既に枚挙にいとまがない。しかし、それらのアプリを有効活用するために必要とされる利用者特性を詳細に分析した報告は乏しい。
本論文は、エビデンスに基づくオンラインSNS身体活動プログラムをより普及促進するための情報収集を目的に行われた研究結果。SNS利用者をさまざまな角度から検討しその特徴を把握するクラスター解析を行ったもの。
対象は、2016年10月~2017年2月にかけて、「Active Team(アクティブチーム)」と呼ばれるSNSに参加した18~65歳のオーストラリア人。「アクティブチーム」は、身体活動の増進を目的とするSNSで、ユーザーはその友人とともに100日間チャレンジする。本研究では大手メディアニュースや印刷物、フェイスブック上の広告等で告知・募集された。実際には参加者のほとんどがフェイスブック経由でサインアップした。
参加者はまず、1週間にわたり加速度計を装着し、フェイスブックを通じての連絡が可能であることなどのスクリーニングを受けた。スクリーニングを通過した者は、身体活動に関する自己報告を行うほか、SF-12による健康関連QOLの評価、DASS-21によるストレス・不安度、PSQIによる睡眠の質・量、および自己効力感などが質問票により解析された。
各項目の評価方法
DASS-21(Depression Anxiety Stress Scale 21)
うつ病、不安、ストレスの評価ツール。Depression Anxiety Stress Scales(DASS)(英語)
SF-12
健康関連のQOLを評価するツール。SF-12® (SF-12® Health Survey)(日本語)
PSQI(ピッツバーグ睡眠質問票)
国立精神・神経医療研究センター「睡眠に関するセルフチェック」参加者(n=484)の主な背景は、
- 平均年齢41歳、
- 女性81%であり、
- パートナーとの同居者が多い(72%)、
- 大学教育を受けている者が多い(57%)、
- 大都市居住者が多い(94%)、
- 肥満・過体重者が多い(78%)
などの特徴があった。身体的・精神的健康スコアSF-12は適正範囲内だった。
パラメーターの欠損がない者(n=456)を対象としたクラスター解析により、男性・女性をそれぞれ2つのクラスターに分けることでシルエットが明確になり、各群の特徴が浮き彫りになった。
具体的には、
- 女性のクラスター1(n=218)として、DASS-21がやや高くSF-12は低い、ストレスはさほど高くない若年の非活動的な女性、
- 女性のクラスター2(n=153)として、DASS-21が低くSF-12は高い、ストレスが少なく比較的高齢の活動的な女性
- 男性のクラスター3(n=58)として、DASS-21が高くSF-12も高いという、ストレスフルで活動的な若年の男性、
- 男性のクラスター4(n=30)として、BMIが高く非活動的な比較的高齢の肥満男性
の4群に分けられた。
一般市民を対象とする公衆衛生では、長期間に及ぶ日常生活習慣の影響の差異や介入効果を測定するにはRCT(無作為化比較試験)を補完するアプローチが求められる。特に利用者数が膨大に及ぶSNSアプリの効果測定においては本研究で示されたような基礎的データが有用になるケースが多いと考えられる。実際、インスタグラムの利用者の6割は18~35歳の女性であり、本研究の対象者と重なる部分が大きい。本論文の著者らは「健康増進SNSの利用者の特性を理解することは、ターゲットを絞り込み費用対効果の高いアプリの普及に有用」と述べている。
文 献
原題のタイトルは「Characteristics of Adopters of an Online Social Networking Physical Activity Mobile Phone App: Cluster Analysis」。〔JMIR Mhealth Uhealth. 2019 Jun 3;7(6):e12484〕