料理ができる高齢者は長生き? 調理技術と口腔機能の問題により死亡リスク最大2倍に
高齢者では調理技術が死亡リスクを左右するという実態を表す、2報の論文が発表された。いずれも東京科学大学公衆衛生学分野の谷友香子氏らが、日本老年学的評価研究(Japan Gerontological Evaluation Study;JAGES)のデータを解析した結果であり、JAGESのサイトにプレスリリースが掲載された。

調理技術が低いと口腔機能問題による死亡リスクが2倍に
1報目は、高齢者の調理技術と口腔機能問題による死亡リスクとの関連についての研究であり、「Age and Ageing」に掲載された論文に関するリリース。
研究の概要
高齢期になると、嚥下や咀嚼などの口腔機能が低下し、さまざまな健康リスクにつながる。しかし、口腔内の問題による健康リスクを緩和できるものについてはわかっていない。この研究では、65歳以上の地域在住の日本の高齢者1万121名を対象として、調理技術が口腔機能の問題による死亡リスクを緩和するかどうかを検証した。
3年間の追跡研究の結果、調理技術が低い場合では、口腔機能問題がない人に比べ、二つ以上の問題がある人では死亡リスクが2倍だった。一方、調理技術が高い場合では、口腔機能問題は死亡リスクになっていなかった。
調理技術の向上は、口腔機能低下による健康リスクの軽減につながる可能性が考えられた。
図1 口腔機能の問題数と死亡リスクの関係

研究の背景
口腔機能の状態が悪くなることが死亡リスクにつながることがわかっている。適切な調理技術があれば、口腔機能の問題によって生じる、食べられるものが限られてしまうといった問題に対処できる可能性がある。そこでこの研究では、調理技術が口腔機能の問題による死亡リスクの上昇を緩和できるかどうかを検証した。
対象と方法
2016年に実施したJAGES(日本老年学的評価研究)調査に参加した65歳以上の高齢者を3年間追跡し、1万121名を解析対象者とした。口腔内の問題は、三つの口腔機能の問題(嚥下機能低下:お茶や汁物でむせることがありますか、咀嚼機能低下:半年前に比べて固いものが食べにくくなりましたか、口腔乾燥感:口の渇きが気になりますか)の該当数を算出した(0、1、2個以上に分類)。調理技術は、7項目からなる調理技術尺度を用いて評価し、調理技術が高い群と低い群に分けた。年齢、性別、教育歴、収入、婚姻状況、就労状況、手段的日常生活動作、BMI、健康状態(うつ、がん、心臓病、脳卒中、糖尿病、高血圧、高脂血症)の影響を調整して統計学的な評価を行った。
結果
調理技術が高い群(7,588人)では、口腔機能の問題が0個の人が4,219人、1個の人が2,189人、2個以上の人が1,180人だった。そのうち、追跡期間中に死亡が確認された人がそれぞれ、130人(3.1%)、92人(4.2%)、65人(5.5%)だった。
調理技術が低い群(2,533人)では、口腔機能の問題が0個の人が1,264人、1個の人が762人、2個以上の人が507人だった。そのうち、追跡期間中に死亡が確認された人がそれぞれ、60人(4.7%)、68人(8.9%)、73人(14.4%)だった。
年齢、性別、教育歴、収入、婚姻状況、就労状況、手段的日常生活動作、BMI、健康状態(うつ、がん、心臓病、脳卒中、糖尿病、高血圧、高脂血症)の影響を取り除いて解析した結果、調理技術が低い群では、口腔機能の問題が0個の人に比べ、1個の場合の死亡リスクが1.5倍、2個以上の場合の死亡リスクが2.1倍だった。一方、調理技術が高い群では、口腔機能の問題があっても死亡リスクが上昇することはなかった。
結論
調理技術が低い場合には口腔機能の問題が死亡リスクとなること、つまり、調理技術が高ければ口腔機能の問題は死亡リスクにはならないことが示唆された。
本研究の意義
加齢とともに口腔機能の問題が増えることから、高齢者の調理技術の向上を支援する取り組みが口腔機能低下による健康リスクの軽減につながる可能性が考えられた。
プレスリリース
調理技術が低いと口腔機能問題による死亡リスク2倍(日本老年学的評価研究)
文献情報
原題のタイトルは、「Cooking skills modify the association between oral health and mortality」。〔Age Ageing. 2023 Sep 1;52(9):afad180〕
原文はこちら(Oxford University Press)







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