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日本人のサルコペニア該当者の3割強はサルコペニア肥満であり、高血圧を有する割合が有意に高い

国内の地域在住高齢者におけるサルコペニアおよびサルコペニア肥満の有病率と、それらの関連因子を調査した結果が報告された。65歳以上の人口の約1割にサルコペニアの疑いがあり、その3割強はサルコペニア肥満であることなどが示されている。山形大学医学部看護学科の稲葉裕氏、櫻田香氏らの研究によるもので、「Asian Nursing Research」に論文が掲載された。

日本人のサルコペニア該当者の3割強はサルコペニア肥満であり、高血圧を有する割合が有意に高い

日本は高齢者人口が多いにもかかわらず、サルコペニアの実態が明らかでない

国内の高齢者人口の急速な増加は公衆衛生上の懸念事項であり、とくにサルコペニアの増加は身体機能の低下に伴う要介護需要の増大につながることから、対策が急がれる課題とされている。また、サルコペニアと肥満が併存するサルコペニア肥満は、身体機能の低下だけでなく心血管代謝疾患や死亡リスクの上昇と関連することから、より重点を置いた施策が必要と考えられる。しかし現時点において日本人におけるサルコペニア肥満の有病率等のデータは乏しく、実態が明らかでない。

以上を背景として稲葉氏らは、地域在住高齢者を対象とする横断研究により、サルコペニアとサルコペニア肥満の有病率、およびそれらの関連因子を検討した。2009~15年に山形県内の7都市の住民健診に参加した65歳以上の高齢者のうち、データ欠落のない6,072人(男性44.1%)を解析対象とした。

主要評価項目は、サルコペニアのスクリーニングツールであるSARC-F(Strength, Assistance with walking, Rise from a chair, Climb stairs, and Falls)によるサルコペニア疑い(スコア4点以上)の有病率であり、その関連因子として、年齢、BMI、高血圧、糖尿病、脂質異常症、生活習慣、就労状況、および基本チェックリスト(KCL)で把握した身体的・精神的健康状態などを評価した。また、サルコペニアに該当し、かつBMIが25以上の場合はサルコペニア肥満と定義して、その有病率と関連因子を検討した。

65歳以上の約1割がサルコペニアでその3割強がサルコペニア肥満

男性の8.3%、女性の10.4%がサルコペニア疑い

解析対象の平均年齢は、男性が74.7±4.4歳、女性73.4±4.5歳であり、BMIは同順に23.5±2.9、22.6±3.2であって、サルコペニア疑い(SARC-Fが4点以上)は全体で9.5%、男性は8.3%、女性は10.4%だった。

サルコペニアの疑いを従属変数とする多変量ロジスティック回帰分析の結果、男性では年齢(1歳高齢であるごとの調整オッズ比〈aOR〉1.09〈95%CI;1.05~1.14〉)、BMI(1高値であるごとにaOR1.07〈1.01~1.07〉)、疼痛/不快感(aOR5.20〈2.93~13.40〉)、不安(aOR3.02〈2.08~7.61〉)、KCLの多項目の障害(aOR2.22〈1.17~24.10〉)、運動機能低下(aOR7.36〈5.11–18.20〉)、抑うつ(aOR2.47〈1.67~8.72〉)との有意な正の関連が認められた。

同様に女性では、年齢(aOR1.05〈1.02~1.09〉)、BMI(aOR1.05〈1.02~1.09〉)、高血圧(aOR1.57〈1.17~2.10〉)、運動習慣(aOR1.41〈1.02~1.94〉)、疼痛/不快感(aOR4.62〈3.01~7.09〉)、不安(aOR1.54〈1.15~2.05〉)、KCLの多項目の障害(aOR1.77〈1.03~3.05〉)、運動機能低下(aOR8.58〈6.50~11.30〉)、社会的ひきこもり(aOR1.75〈1.08~2.83〉)、抑うつ(aOR1.88〈1.39~2.56〉)との有意な正の関連、スマートフォンの使用(aOR0.71〈0.54~0.94〉)との有意な負の関連が認められた。

サルコペニア該当者のうち、男性は35.8%、女性は31.4%がサルコペニア肥満

サルコペニア疑い該当者においてBMIが25以上の割合(サルコペニア疑い+肥満〈本稿ではサルコペニア肥満とする〉の有病率)は、男性35.8%、女性31.4%だった。

サルコペニア単独群と、サルコペニア肥満群を比較すると、男性では、サルコペニア肥満群において高血圧の有病率が高く、低栄養の割合が低いという有意差が認められた。女性では、サルコペニア肥満群において年齢が若く、高血圧と糖尿病の有病率が高く、疼痛/不快感および不安を有する割合が低いという有意差があった。

サルコペニア肥満を従属変数とする多変量ロジスティック回帰分析の結果、男性では高血圧(aOR2.94〈1.48~5.88〉)のみが有意な正の関連因子として抽出された。女性でも高血圧(aOR2.11〈1.19~3.75〉)が有意な正の関連因子として抽出され、また、年齢(aOR0.95〈0.90~1.00〉)と不安(aOR0.46〈0.29~0.74〉)は有意な負の関連因子として抽出された。

サルコペニアのスクリーニング時に肥満該当者では高血圧の存在を考慮すべき

著者らは本研究の成果として、日本の地域在住高齢者におけるサルコペニアやサルコペニア肥満の有病率に関するデータを得られたことに加え、サルコペニア肥満ではサルコペニア単独よりも、性別にかかわらず高血圧との関連が強固であったことを指摘している。このメカニズムとして、内臓肥満に基づくインスリン抵抗性を介した血管機能の低下などが関与している可能性を挙げ、「サルコペニアのスクリーニングに際して、肥満傾向がみられる場合、高血圧の存在に留意すべきではないか」との考察を述べている。

一方、研究の限界点としては、横断研究であり因果関係の推測が制限されること、骨格筋量を評価していないこと、本来はフレイルのスクリーニングツールである基本チェックリスト(KCL)を関連因子の評価に用いたことなどを挙げている。ただし最後の点については、本研究から「KCLがサルコペニアリスクの特定にも役立つ可能性のあることが示唆された」としている。

論文の結論は、「地域在住高齢者において、サルコペニアやサルコペニア肥満の疑いが高頻度で認められ、性別にかかわらずさまざまな身体的・精神的因子と関連していた。SARC-Fによるサルコペニアの早期発見と、サルコペニアやサルコペニア肥満該当者に対する多面的介入が、日本の高齢者の健康寿命の延伸に不可欠であると考えられる」と総括されている。

文献情報

原題のタイトルは、「Prevalence and Related Factors of Suspected Sarcopenia and Sarcopenic Obesity in Community-Dwelling Older Adults」。〔Asian Nurs Res (Korean Soc Nurs Sci). 2026 Feb 4:S1976-1317(26)00007-1〕
原文はこちら(Elsevier)

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