スポーツ栄養WEB 栄養で元気になる!

SNDJ志保子塾2024 ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー
一般社団法人日本スポーツ栄養協会 SNDJ公式情報サイト
ニュース・トピックス

運動中の腹痛や下痢対策に低FODMAP食は有効か? 試合前の短期摂取で消化器トラブル軽減の可能性

スポーツ領域における低FODMAP食の役割に関するナラティブレビューを紹介する。ポーランドの研究者らによるもので、競技中の消化器症状の抑制に、短期的な低FODMAP食が有効な可能性があるとしている。

運動中の腹痛や下痢対策に低FODMAP食は有効か? 試合前の短期摂取で消化器トラブル軽減の可能性

スポーツ栄養としての低FODMAP食の知見をナラティブレビューで総括

炭水化物は身体活動の主要なエネルギー源であり、とくにアスリートでは、炭水化物の適切な摂取によって、疲労の発現が抑制され、運動耐容能が上昇することが知られており、持久系競技のアスリートでは炭水化物摂取がより重要となる。実際、エナジードリンクなどの製品の多くに、炭水化物が主要な栄養素として用いられている。

炭水化物の中でも短鎖炭水化物(short-chain carbohydrates)に該当する、発酵性オリゴ糖(Fermentable Oligosaccharides)、二糖類(Disaccharides)、単糖類(Monosaccharides)、および(And)、ポリオール(Polyols)、いわゆる「FODMAP」は、エネルギー基質として利用されるだけでなく、腸内細菌に資化され短鎖脂肪酸の産生を増やし、さまざまな健康効果を発揮することが知られている。しかしその一方でFODMAPは小腸で吸収されにくく大腸で発酵されやすいことや、腸管内の浸透圧を高めることから、消化器症状を誘発することがある。

このような消化器症状を抑制する食事療法として、FODMAPの摂取を制限する低FODMAP食が用いられている。低FODMAP食はもともと過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome;IBS)の症状管理を目的として開発されたものだが、IBSを有さない場合の消化器症状にも有効性が示されている。とはいえそれらの知見の多くは臨床からの報告であり、アスリート対象のスポーツ栄養という切り口での報告はまだ多くない。

文献検索について

以上を背景として今回取り上げる論文では、スポーツ栄養としての低FODMAP食に関する知見をナラティブレビューとして総括している。

PubMed、Web of Science、ScienceDirect、Google Scholarに2005年1月~2025年10月に収載された論文を対象とし、包括基準は、身体活動における消化器症状や低FODMAPの影響を検討し、英語で執筆され査読システムのあるジャーナルに全文が公開されている原著、レビュー、メタ分析論文などであり、除外基準は、学会報告、レター、エディトリアル、基礎研究の報告など。

一次検索で412報がヒットし重複削除後の356報を3名の研究者が独立してタイトルと要約に基づくスクリーニングを実施。採否の意見の不一致は2人目の研究者との討議により解決した。113報を全文精査の対象として、最終的に73報を適格と判断した。

現時点では、試合前の短期間の実施が現実的な戦略か

持久系アスリートの消化器症状

持久系アスリートの半数から3分の2が消化器症状に悩まされているとする報告が多くみられた。著者は、これらの有病率が、研究が実施された国にかかわらずほぼ一定していたことを重要な点と指摘し、「身体活動に伴う病態生理学的反応の普遍性を示すもの」と述べている。

消化器症状の有病率が最も高い集団は過敏性腸症候群(IBS)のランナーであり、最大94%が症状に悩まされていた。一方、IBSでないランナーでのその割合は54%にとどまっていた。

アスリートに推奨される食事のFODMAP

現在、アスリートの栄養戦略に関するガイドライン等では、運動の持続時間と強度に応じた炭水化物の摂取が推奨されている。これは、炭水化物の摂取によりグリコーゲン枯渇の遅延、酸化の促進、疲労の軽減などを期待できることによる。実際、スポーツ栄養に特化したサプリメント製品の多くは炭水化物を含んでおり、FODMAPも相当量含まれている。

ある研究では、アスリートの60%が高FODMAP製品を摂取していると報告されていた。また、テストした16製品中7製品は、1回の摂取で高FODMAP食となり得る量のFODMAPを含んでいたという。

アスリートの低FODMAP食の実施状況

低FODMAP食がIBSを含め消化器症状の抑制に有効であることが知られている。しかしアスリートの低FODMAP食の実施率は高いとは言えない。トライアスロンや走行時間が60分以上の陸上競技のアスリート137人を対象とする調査では、低FODMAP食を行っているのはわずか5.4%にすぎないと報告されていた。著者らは、低FODMAP食が消化器症状の抑制に有用であることが、アスリートの間で十分認識されていない可能性があるとしている。

実践戦略

アスリートが競技中の消化器症状を抑制するために低FODMAP食戦略を採用する場合、身体活動の24~48時間前からの摂取減が有効と考えられる。ただし、エネルギー基質である炭水化物の摂取量を維持しながらこの対策を行うことが必要。個々のニーズに対応してより精緻に調整するためには、数日または数週間前からの計画的介入が役立つ。

長期的な安全性

低FODMAP食に対する関心の高まりはあるものの、アスリートが長期的に行った場合の安全性に関する情報は少ない。現段階では、低FODMAP食の特性上、バランスが整っていない状態で長期間継続した場合、エネルギーおよび炭水化物の不足に関連する問題のリスクが高まると考えられ、その結果、トレーニング適応への負の影響、回復遅延、パフォーマンス低下が生じる可能性がある。

また、FODMAPは腸内細菌に資化され短鎖脂肪酸の産生等を介して健康にプラスの影響を及ぼし得るため、長期間にわたり制限した場合の安全面での懸念も指摘されている。ただし、この点についてアスリート集団での研究はほとんどなされておらず、この点でも今後の研究が必要とされる。

以上から、現時点では選択的な戦略が最適であると考えられ、試合前の短期間のみ低FODMAP食を実践することで、これらの負の側面を回避しながら消化器症状の抑制を図ることが適切と言える。

文献情報

原題のタイトルは、「The Role of FODMAPs in Sports Nutrition: A Narrative Review and Clinical Implications」。〔Nutrients. 2026 Jan 12;18(2):239〕
原文はこちら(MDPI)

この記事のURLとタイトルをコピーする
志保子塾2025後期「ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー」

関連記事

スポーツ栄養Web編集部
facebook
Twitter
LINE
ニュース・トピックス
SNDJクラブ会員登録
SNDJクラブ会員登録

スポーツ栄養の情報を得たい方、関心のある方はどなたでも無料でご登録いただけます。下記よりご登録ください!

SNDJメンバー登録
SNDJメンバー登録

公認スポーツ栄養士・管理栄養士・栄養士向けのスキルアップセミナーや交流会の開催、専門情報の共有、お仕事相談などを行います。下記よりご登録ください!

元気”いなり”プロジェクト
元気”いなり”プロジェクト
おすすめ記事
スポーツ栄養・栄養サポート関連書籍のデータベース
セミナー・イベント情報
このページのトップへ