GLP-1ベースの肥満治療における栄養と生活習慣の推奨事項 修正デルファイ法による合意声明
グルカゴン様ペプチド1(GLP-1)をベースとする肥満症治療における、栄養および生活習慣関連の支持療法について、各国の医師、研究者、および栄養士で構成される、学際的なパネルにより52項目のコンセンサスステートメントが策定され、「Obesity Pillars」に掲載された。一部を紹介する。

イントロダクション
リラグルチド、セマグルチド、チルゼパチドといったGLP-1受容体またはGIP/GLP-1受容体作動薬は、肥満症の治療に革命的な変化をもたらしたと言える。ただ、用量依存性の消化器症状、栄養不良(とくに微量栄養素の不足)の懸念、長期継続の困難さなどの課題が明らかになっている。それらを指摘している報告は少なくないが、臨床での実践を導く直接的なエビデンスは依然として不足しており、コンセンサスに基づく推奨が必要とされている。
これを背景として、医師、臨床研究者、および栄養士ら15人で構成される国際的な学際的パネルが組織され、PubMed、Embase、Web of Science、Cochrane等の文献データベースを用いた文献検索による推奨の候補の抽出、および、修正デルファイ法による推奨ステートメントの作成が行われた。
ステートメントは、肥満における栄養上の考慮事項、身体活動と減量に関する考慮事項、減量を目的としたGLP-1ベースの治療(glucagon-like peptide 1 based therapies;GBT)を開始する前に考慮すべき事項など7領域にわたる。
デルファイ法でのステートメント作成の流れ
最初の投票ラウンドでは全パネリストが、85項目の声明に対して、1(まったく同意しない)から9(完全に同意する)の9段階評価で評価した。67%以上の同意(15人中10人が7点以上)とした場合にステートメントの候補として採用された。次に、匿名化された仮想会議により、ステートメントへの議論と修正の提案が行われ、そのフィードバックに基づいて議長が修正されたステートメントを作成し、2回目の投票を実施。
2回目の投票で67%以上の同意が得られたものをステートメントとして採択した。また、エビデンスベースではなく臨床経験に基づく推奨として、専門家の意見の多様性を反映するため、中程度の合意(60~67%未満の同意)を得られた意見も含めた。
2回の投票を経て、合計52項目について合意が得られた。
52項目のコンセンサスステートメント(一部のみ抜粋)
52項目のコンセンサスステートメントの一部は以下のとおり。なお、実用に際しては原典を確認のこと。
肥満における栄養上の考慮事項
- 栄養と生活習慣の推奨事項は、個人の価値観、好み、治療目標にあわせて個別化する必要があり、安全・効果的で栄養的に適切であり、文化的に受け入れられ、長期にわたって遵守できる実現可能な食事療法をサポートするものであるべき。[同意の強さが7以上の割合100%]
- 大半の患者はガイドラインで推奨されている食事パターンに従うよう努めるべき。[同93%]
- 栄養管理は、体重減少に加えて、慢性疾患リスクの軽減と生活の質の向上といった健康成果を達成するだけでなく、十分な栄養と水分補給を確保し、除脂肪筋肉量を維持し、悪影響を最小限に抑えることにも重点を置く必要がある。[同93%]
- エネルギー摂取量が非常に少ない場合には、確立された食事ガイドラインに従って、高タンパク質の経口栄養補助食品および/またはビタミンとミネラルの補給を推奨する必要がある。[同87%]
- 肥満者は微量栄養素欠乏症のリスクが高く、血液や尿の生化学検査を含むベースライン評価とフォローアップ評価が、食事摂取量、ビタミンおよびミネラルのサプリメントに関する推奨事項の確認に役立つ可能性がある。[同87%]
身体活動と減量に関する考慮事項
- 運動処方は、長期にわたる遵守を維持し、怪我を防ぐために、各患者のニーズ、好み、能力、肥満度、健康状態に合わせて個別化する必要がある。[同意の強さが7以上の割合100%]
- 1週間あたり150分以上の中強度から高強度の有酸素運動と筋力トレーニングに基づく個別の運動トレーニングプログラムは、健康的な減量をサポートする。[同93%]
- 高タンパク質摂取だけでは筋肉量は増加しない。減量中に除脂肪体重(骨量や筋肉量など)を維持するためには、中強度から高強度の筋力トレーニングを中心とした運動トレーニングプログラムが推奨される。[同80%]
- 患者が週に150分の監督下の運動を実行できない場合は、構造化された運動計画や1日あたり最低4,000~6,000歩など、医療従事者と患者の両者が合意した測定可能な共通の目標を設定した段階的なアプローチが推奨される。[同73%]
- 高齢、フレイル、または運動不足の患者、あるいはサルコペニアに該当する患者は、減量中に筋肉量が減少するリスクが高まる可能性がある。個々の患者に合わせた身体活動プログラムや栄養介入など、筋肉量を維持するための戦略を検討する必要がある。[同73%]
減量を目的としたGLP-1ベースの治療(GBT)を開始する前に考慮すべき事項
- 肥満を抱えて生きる患者を効果的に評価するには、偏見のない、中立的な環境が必要。[同意の強さが7以上の割合100%]
- 治療期間を通して、患者の価値観、好み、治療の目標、反応に応じて個別的なアプローチを適用し、患者の食事に関する経験が変化することに備える必要がある。[同100%]
- 体重増加の一因となるか減量を妨げる可能性のある修正可能な要因(精神疾患/うつ病、コルチコステロイド、抗うつ薬、抗精神病薬、β遮断薬、インスリンなどの薬剤、ホルモン異常など)を特定し、対処する[同80%]
- 筋肉量減少のリスクが高い患者(例えばサルコペニア肥満の患者)では、機能検査(例えば握力、椅子立ち上がりテスト)を用いて筋力を評価する。可能であれば、体組成評価の専門施設を紹介する。[同87%]
- GBTを開始する前に、体重減少と生活習慣の改善を促すため、低カロリーまたは超低カロリーの食事(840kcal/日未満)の処方が検討されることもある。一般的には、1,000~1,200kcal/日の段階的な摂取カロリー現象アプローチが推奨されている。[同73%]
減量段階における考慮事項
- 患者に食事のタイミングと頻度に注意するよう伝える。[同意の強さが7以上の割合93%]
- 空腹感や食べ物への欲求が軽減されると、食生活の変更がより容易になる。[同87%]
- 栄養的に完全な低エネルギー配合製品は、一時的な減量のために「完全な食事代替品」(すべての食事を置き換える)として、または「部分的な食事代替品」(1日1~2食を置き換える)として使用可能。[同87%]
- GBTの用量調節段階では、十分な水分補給、過度の体重減少、吐き気、嘔吐、下痢などの消化器症状をモニタリングすることが重要。[同87%]
- GBTの減量期間中は、1日につき実際の体重1kgあたり1.2~1.5g、または1日あたり1,600kcalの25~30%に相当する量のタンパク質摂取が推奨される。[同87%]
- 推奨される食習慣として、意識的に食べることと、「心地よい満腹感」を感じたら食事を終えることが含まれる。[同80%]
- 一般的には、個人の推定カロリー必要量より500kcal/日減らし、最低摂取量を1,000~1,200kcal/日とする段階的な減量アプローチが推奨されている。[同80%]
- 食物繊維摂取量は、女性では1日あたり25g以上、男性では1日あたり30g以上、糖尿病患者では1日あたり35g以上が推奨される。[同73%]
体重減少維持期における考慮事項
- 肥満関連のサルコペニアのリスクがある患者には、不十分なタンパク質摂取を予防または是正し、食物摂取量の大幅な減少による急激な体重減少に伴う筋肉損失を最小限に抑えるために、適切で高品質のタンパク質摂取が推奨される。[同意の強さが7以上の割合93%]
- GBTによる減量維持期間中、タンパク質摂取量は1日につき実体重1kgあたり0.8g以上必要。[同93%]
- GBT使用者は胆石を発症するリスクがあるかもしれない。そのため、脂溶性ビタミンの吸収を助け、胆嚢の排出を促進するために、1日1,200~1,500kcalの食事では25~60g、1日1,500~1,800kcalの食事では35~70gの健康的な脂質摂取が推奨される。食品としては、オリーブオイル、ナッツ類、種子類、脂肪分の多い魚など。[同67%]
- 腎機能が保たれている65歳以上の高齢者は、筋肉量を維持しサルコペニアを避けるために、65歳未満の人よりも多くのタンパク質を摂取する必要がある場合がある。[同67%]
減量のためのGBTに伴う一般的な副作用の管理と軽減
- 患者が吐き気や嘔吐を経験した場合、医療従事者は症状をモニタリングし、GBTの投与量を調整し、これらの症状を軽減または消失させるための個別的な食事療法を試みるべき。適切な水分補給を優先する必要がある。[同意の強さが7以上の割合100%]
- 便秘症状は過体重/肥満の人に多く見られ、GBTの他の消化器系副作用よりも長く続くことが報告されている。一般的な推奨事項としては、十分な量の食物繊維を摂取し、水または無糖の飲料の摂取量を増やすことが挙げられる。食事から十分な食物繊維を摂取できない場合は、食物繊維サプリメントを検討する。食物繊維摂取量は、個々の患者の反応と忍容性に基づいて調整する必要がある。[同87%]
GBTを中止する必要がある場合の考慮事項
- 可能であれば、管理栄養士に相談し、多領域にわたるチームのサポートを受けて集中的な行動療法を実施する。[同意の強さが7以上の割合100%]
- GBTを中断する必要がある場合、食事療法はGBT開始時に推奨された食事療法と一貫性を保つ必要がある。体重のリバウンドを最小限に抑えるため、治療後の綿密なフォローアップと生活習慣への継続的な介入が推奨される。[同87%]
文献情報
原題のタイトルは、「Nutritional and lifestyle supportive care recommendations for management of obesity with GLP-1 - based therapies: An expert consensus statement using a modified Delphi approach」。〔Obes Pillars. 2025 Nov 11:17:100228〕
原文はこちら(Elsevier)







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