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暖かくなったらアナフィラキシーに注意! とくに食物性アナフィラキシーに深刻な影響 東京科学大学

気温が高いほどアナフィラキシーによる入院リスクが増加し、とくに日平均気温が30.7°C以上では50%近くハイリスクとなり、また食物性アナフィラキシーのリスクへの影響が顕著であることが報告された。東京科学大学の研究チームの研究によるもので、「Allergy」に論文が掲載されるとともに、プレスリリースが発行された。著者らは、「暑い日には、アレルギーのある食品の摂取などに注意を払うなどの予防策が重要」と述べている。

暖かくなったらアナフィラキシーに注意! とくに食物性アナフィラキシーに深刻な影響 東京科学大学

研究の概要:暑い日には医療関連でない、食物性などのアナフィラキシーが増加する

東京科学大学の研究チームは、2011~22年の全国規模の入院データを解析し、気温が高いとアナフィラキシーによる入院リスクが増加することを明らかにした。さらに、この関連は、医療処置や治療に関連しない食物性などのアナフィラキシーのタイプで、とくに顕著であることも判明した。また、極めて高い日平均気温(研究期間中の99パーセンタイルに該当する30.7°C)にさらされた場合、入院リスクが49%増加することがわかった。

これらの結果は、気候変動が人間の健康に悪影響を及ぼす可能性を示す新たな証拠であり、公衆衛生の観点から気候変動対策を急ぐ必要性を強調している。

背景:気温とアナフィラキシーリスクとの関連を詳細に検討

アナフィラキシーは、急性発症を特徴とする重篤な全身性アレルギー反応。主な誘因として、食物や昆虫刺傷が挙げられるが、医薬品や造影剤なども誘因となることが知られている。アナフィラキシーは、命にかかわる場合もあるため、そのリスク因子を解明することが重要。

これまでの研究では、アナフィラキシーが暖かい季節に多く発生することが報告されていた。しかし、気温とアナフィラキシーの関連性を詳細に検討するためには、日々の患者の入院データと気象データを連結して検討する必要があった。

そこで本研究では、全国規模の日ごとの入院データと気象庁の気象データを活用し、気温とアナフィラキシーによる入院リスクとの関連を明らかにすることを目的として研究を実施した。

研究成果:医原性でないアナフィラキシーによる入院が増加する

研究期間中の2011~22年のアナフィラキシーによる入院患者数は5万5,298人にのぼった。1日の平均気温が高くなると、アナフィラキシーによる入院リスクが上昇することが確認された(図1)。とくに、99パーセンタイルに該当する極めて高い日平均気温(30.7°C)にさらされた場合、入院リスクが49%増加することが明らかになった(95%信頼区間19〜85%)。

図1 5日間のラグ効果※を考慮した日平均気温とアナフィラキシーによる入院リスクの関連

5日間のラグ効果を考慮した日平均気温とアナフィラキシーによる入院リスクの関連

実線は日平均気温における相対リスクを表し、灰色の領域は95%信頼区間を示す。最もリスクが低い日平均気温(つまりminimum morbidity temperature;MMT)である11.3°Cを基準として推定を行った。
ラグ効果:気温が健康に及ぼす影響は、曝露時点から一定期間続くことが知られており、その遷延性を「ラグ効果」と呼ぶ。
(出典:東京科学大学)

さらに、アナフィラキシーのタイプ別に解析を行った結果、高気温への曝露と入院リスクの関連性は、医療処置や治療に関連するタイプのアナフィラキシーでは認められなかった(図2)。一方で、医療処置や治療とは無関係な食物性などのアナフィラキシーのタイプでは、この関連性がとくに顕著であることがわかった(図3)。

図2 5日間のラグ効果を考慮した日平均気温と医療処置や治療と関連したタイプのアナフィラキシーによる入院リスクの関連

5日間のラグ効果を考慮した日平均気温と医療処置や治療と関連したタイプのアナフィラキシーによる入院リスクの関連

(出典:東京科学大学)

図3 5日間のラグ効果を考慮した日平均気温と医療処置や治療関連ではない食物性などのアナフィラキシーによる入院リスクの関連

5日間のラグ効果を考慮した日平均気温と医療処置や治療関連ではない食物性などのアナフィラキシーによる入院リスクの関連

(出典:東京科学大学)

社会的インパクト:暑い季節のアナフィラキシー予防策の周知

本研究により、高気温への曝露がアナフィラキシーのリスクを高める可能性が明らかになった。とくに、医療処置や治療に関連しない食物性などの原因によるアナフィラキシーにおいて、このリスクが顕著であることがわかった。

一方で、医療処置や治療に関連したタイプのアナフィラキシーでは、高気温との関連は認められなかった。これは、医療処置や治療が通常、気温が管理された医療施設内で行われるため、高気温の影響を受けにくいことが要因である可能性がある。

本研究結果に基づき、暑い日には以下のような予防策を講じることが重要だと考えられる。

  • 虫刺されや花粉への適切な対策を行う
  • アレルギーのある食品や、普段食べ慣れていない食品の摂取に注意を払う

また、この研究は、気候変動が人間の健康に悪影響を及ぼす可能性を示す、さらなる証拠となった。公衆衛生の観点からも、気候変動対策を急ぐ必要性を強調するものと言える。

今後の展開:気温による食行動の変化などがリスク因子か?

高気温とアナフィラキシーによる入院リスクの関連メカニズムの一つとして、熱への曝露が以下のような要因を介して、間接的にリスクを高める可能性が考えられる。

  • 暑い日の食パターンの変化
  • 昆虫刺傷や花粉曝露の増加

また、気温の上昇により屋外活動が増えることで、環境アレルゲンや昆虫刺傷の機会が増加し、アナフィラキシーのリスクがさらに高まる可能性がある。さらに別の可能性として、高気温への曝露が呼吸器系や消化器系の症状を増幅し、アナフィラキシーの重症化につながることも示唆される。

今後の研究では、これらのメカニズムをさらに詳細に解明することが必要。また、気候変動による気温上昇が健康に与える影響を包括的に理解することで、効果的な予防策や公衆衛生対策の構築が期待される。

出典

暑さでアナフィラキシーの入院リスクが増加(東京科学大学)

文献情報

原題のタイトルは、「Association Between Heat Exposure and Anaphylaxis in Japan: A Time-Stratified Case-Crossover Study」。〔Allergy. 2025 Feb 1〕
原文はこちら(John Wiley & Sons)

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