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ウコンの成分「クルクミン」がアスリートの運動誘発性筋肉損傷を軽減する? 系統的レビュー

クルクミンによる運動誘発性筋損傷の軽減効果に関するシステマティックレビューの結果が報告された。その効果はさまざまな因子に左右されるが、摂取タイミングは運動後が良い可能性があることなどが述べられている。

ウコンの成分「クルクミン」がアスリートの運動誘発性筋肉損傷を軽減する? 系統的レビュー

日常的にトレーニングを行っている人を対象とした研究のシステマティックレビュー

運動誘発性筋損傷(experiencing exercise-induced muscle damage;EIMD)による疼痛は、典型的には運動後27~72時間に発症し、通常5~7日以内に消失する。運動強度や関与する筋肉群などによってEIMDによる疼痛の強さは異なる。

クルクミンはウコンから抽出される黄橙色の結晶で、抗酸化作用や抗炎症作用を有しており、動物実験ではEIMD抑制効果が確認されており、ヒト対象の研究でも同様の効果が示唆されている。既にヒト対象研究のレビューも報告されているが、日常的に身体トレーニングを行っていない対象での研究が含まれていたり、あるいはクルクミンの摂取方法に関する検討が行われていないなどの点で、スポーツによるEIMDの抑制を目的にクルクミン摂取を適用する上で、いくつかの疑問が残されていた。

これを背景に今回取り上げる論文の著者らは、日常的に一定程度の身体トレーニングを行っている人を対象に行われた研究に焦点を当てた検討を行った。

文献検索について

文献検索は2023年3月にSCOPUS、Medline(PubMed)、Web of Science など複数のデータベースを用いて行われ、「クルクミン」および「運動誘発性筋肉損傷(EIMD)」を含む英語論文を検索した。報告された時期は問わなかった。

包括条件は、習慣的(少なくとも週3回以上)スポーツを行っている健康な18歳以上の成人を対象とし、運動前・運動中・運動後のいずれかにクルクミンを摂取することによるEIMDに対する有効性を、クルクミンを摂取しない場合を対照として検討した無作為化比較試験(randomized controlled trial;RCT)。クルクミンとほかの化合物を併用した研究、クルクミン摂取のプロトコルが明記されていない論文、対照を設定していない研究、疾患有病者での検討は除外した。

重複削除後の468件を2名の研究者が独立してタイトルと要約に基づくスクリーニングを実施。意見の不一致が生じた場合は3人目の研究者が採否を判断した。40件の論文が全文精査の対象となり、最終的に11件を解析対象として特定した。なお、本研究ではメタ解析はされていない。

有効性が示されるとともに解釈に際しての留意点も浮き彫りに

抽出した11件の報告に基づき、本論文は、酸化ストレス、遅発性筋肉痛(delayed-onset muscle soreness;DOMS)、炎症マーカー、運動誘発性ストレス全般、摂取タイミングと摂取量などの視点で、クルクミンの有効性が検討されている。ここではそれらの中の一部を紹介する。

酸化ストレスへの影響

10人の男性を対象とするRCTの結果が2014年に日本から報告されており、運動前のクルクミン(90mg)摂取、運動後の摂取、およびプラセボ摂取が比較されている。65%VO2maxでの運動負荷後の活性酸素種(reactive oxygen species;ROS)レベルは、プラセボ条件では上昇していたが、クルクミンを摂取した場合には有意な上昇がなく、また抗酸化代謝物のレベルは運動前に摂取した場合よりも運動後に摂取した場合のほうが高かったという。

遅発性筋障害(DOMS)

活動的な男性ボランティア19人が4日間にわたり1日2回200mgのクルクミンまたはプラセボを摂取するという検討では、クルクミン摂取によりMRIで評価した大腿後部の損傷の所見が少なかったことが示され、統計学的には非有意ながら疼痛レベルが低かったと報告されている。また、炎症マーカーであるインターロイキン-8(IL-8)レベルの抑制も観察されたとのことだ。

摂取タイミング

日本からの報告では、エキセントリック運動後の筋肉損傷マーカーに対するクルクミン摂取のタイミングの影響が検討されていた。運動負荷前に摂取した場合、血清クレアチンキナーゼ(creatine kinase;CK)活性に有意差はなく、一方で運動後に摂取した場合はCK活性の低下や筋肉痛の軽減が認められたとされている。

解釈上の留意点と今後の研究の方向性

以上を含めてクルクミン摂取によるEIMD抑制効果を示唆する研究報告が少なくないが、著者らはリミテーションとしていくつかのポイントを指摘している。

一つ目のポイントとして、大半の研究のサンプルサイズが小さく、また運動負荷に用いられた方法が限られていて、スポーツの競技で発生するEIMDにもこれらの結果を適用できるとは限らないとしている。

ポイントの二つ目として、用いられていたクルクミンの不均一性が指摘されている。著者によると、クルクミンは酸性の条件下では比較的安定しているが、アルカリ性の条件下では極めて不安定であり、安定性を保つにはカプセル化されている必要があるという。よって、用いられていた製品が異なる研究同士の比較検討が困難になるとのことだ。

また、スポーツ領域のほかのトピックに関する多くの研究と同様に、女性を対象とする研究が少ないこと、および、クルクミンがEIMDを抑制するメカニズムが明確でないことなどが、今後の研究課題として挙げられている。

文献情報

原題のタイトルは、「Evaluation of curcumin intake in reducing exercise-induced muscle damage in athletes: a systematic review」。〔J Int Soc Sports Nutr. 2024 Dec;21(1):2434217〕
原文はこちら(Informa UK)

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