野菜や果物の摂取量が多い人はフレイルのリスクが低い 米国国民健康栄養調査4万人の解析
米国国民健康栄養調査の大規模データを解析した研究から、野菜や果物の摂取量の多い人にはフレイルが少ないという関連のあることが報告された。ただし、果物のうち果汁(フルーツジュース)の摂取量は、中年期以降の場合この関連が非有意であり、一方、野菜に関しては緑黄色野菜でとくに関連が強く認められ、男性でも有意だという。中国の研究者の報告。
野菜や果物の総摂取量、および種類別の摂取量とフレイルとの関連を検討
フレイルのメカニズムは複雑だが、低栄養も重要なリスク因子とされている。フレイルの予防や改善では、身体的フレイルのリスクと深い関連のある筋肉量の増強のため、タンパク質が重視されるが、野菜や果物に豊富なビタミンやポリフェノールが、フレイルリスク抑制に働くことを示唆する報告もある。今回紹介する論文の研究は、米国の国民健康栄養調査(National Health and Nutrition Examination Survey;NHANES)の大規模なデータを用いて、野菜や果物の摂取量、および、それぞれのタイプ(果物であれば果汁か否か、野菜であれば、トマト、イモ、両黄色野菜の別など)ごとの摂取量とフレイルとの関連を、性別や年齢を考慮して詳細に解析をしている。
米国国民健康栄養調査4万人のデータを横断的に解析
解析に用いたデータは、2005~2020年の米国国民健康栄養調査(NHANES)の参加者8万5,750人のうち、18歳未満と野菜・果物の摂取量に関するデータが欠落している人を除いた3万9,717人(平均46.72歳、男性47.85%)。
フレイルの有無の評価には、身体機能や認知機能、疾患罹患状況、臨床検査値などをカウントするフレイルインデックスを利用。フレイルインデックスは0~1点の範囲で評価され、0.21を超えた場合にフレイルと判定する。
食事摂取状況は、連続していない2回の24時間思い出し法により把握し、野菜・果物の摂取量の三分位で3群に分類した。
フレイルリスクとの関連の解析に際しては、以下の4つのモデルで検討した。一つ目は交絡因子を調整しない「粗モデル」、二つ目は年齢と性別、人種/民族を調整する「モデル1」、三つ目はモデル1の調整因子にBMI、喫煙・飲酒・運動習慣、摂取エネルギー量、カフェイン摂取量、教育歴、婚姻状況、所得を追加した「モデル2」、四つ目はモデル2の調整因子に高血圧・脂質異常症・糖尿病・冠動脈疾患・脳卒中を追加した「モデル3」。
緑黄色野菜の摂取量は、男性でもフレイルの少なさと有意な関連
本研究におけるフレイル該当者率は23.63%だった。フレイル該当者は高齢で女性に多く、教育歴が短く、所得が低いなどの有意差が認められた。
野菜の摂取量とフレイルとの関連
まず、野菜の摂取量については、緑黄色野菜(dark green vegetable)、トマトおよびトマト製品、トマト以外の赤やオレンジ色の野菜、ジャガイモ、ジャガイモ以外のでんぷん質の野菜、その他の野菜について、それぞれの摂取量、総野菜摂取量、および豆類の摂取量とフレイルとの関連が解析されている。
粗モデルおよびモデル1では、上記のすべてのカテゴリーが、摂取量が多いほどフレイルが少ないという有意な関連が示された。モデル2では、ジャガイモ、豆類の摂取量は、フレイルとの関連が非有意となった。モデル3では、トマト以外の赤やオレンジ色の野菜の摂取量も非有意となった。
モデル3で有意だったのは、緑黄色野菜(傾向性p<0.001)、トマトおよびトマト製品(傾向性p=0.018)、ジャガイモ以外のでんぷん質の野菜(傾向性p=0.005)、その他の野菜(傾向性p=0.003)、および総野菜摂取量(傾向性p=0.017)だった。なお、モデル3において総野菜摂取量の第3三分位群(野菜摂取量の多い上位3分の1)の人のフレイル該当オッズ比(OR)は0.80(95%CI;0.66~0.96)と有意に低かった。第2三分位群はOR0.94(0.78~1.12)と非有意だった。
果物の摂取量とフレイルとの関連
果物の摂取量については、柑橘/メロン/ベリー類、その他の果物、未加工の果物、フルーツジュースについて、それぞれの摂取量、および総果物摂取とフレイルとの関連が解析されている。
粗モデルおよびモデル1では、上記のすべてのカテゴリーが、摂取量が多いほどフレイルが少ないという有意な関連が示された。モデル2では、フルーツジュースの摂取量とフレイルとの関連が非有意となった。モデル3で、フレイルとの関連が新たに非有意となったカテゴリーはなかった。つまり、フルーツジュースを除くその他のカテゴリーは、モデル3でも摂取量が多いほどフレイルが少ないという有意な関連が認められた(柑橘/メロン/ベリー類、その他の果物、未加工の果物はいずれも傾向性p<0.001)。
モデル3において総果物摂取量とフレイルの関連の傾向性p値は0.026であり、第3三分位群はOR0.77(0.62~0.96)とフレイル該当者が有意に少なく、第2三分位群もOR0.81(0.68~0.97)と有意に少なかった。
野菜・果物の摂取によるフレイルに対する保護効果は、中年期に高い可能性
年齢層別の解析では中年層において、野菜・果物のカテゴリー別にみた摂取量とフレイルの少なさとの有意な関連が多く認められた。例えば、モデル3において総野菜摂取量がフレイルの少なさと有意に関連していたのは41~60歳のみであり(OR0.74〈0.62~0.89〉)、総果物摂取量がフレイルの少なさと有意に関連していたのも41~60歳のみだった(OR0.74〈0.60~0.90〉)。
性別に解析した場合、女性は多くのカテゴリーの摂取量と有意な関連が認められたが、男性ではほとんどのカテゴリーとの関連が非有意となり、唯一、緑黄色野菜の摂取量のみがフレイルの少なさと有意な関連が示された(OR0.73〈0.59~0.90〉)。
これらの結果に基づき著者らは、「ほとんどの種類の果物、および、緑黄色野菜、トマトやトマト製品を毎日摂取すると、とくに60歳未満の人や女性のフレイルリスクの軽減につながる可能性がある」と結論づけている。
文献情報
原題のタイトルは、「Daily consumption of specific categories of fruit and vegetables negatively correlated with frailty: findings from the US National Health and Nutrition Examination Survey」。〔Nutr Res Pract. 2024 Dec;18(6):829-844〕
原文はこちら(Korean Nutrition Society)