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日本の大学柔道選手の怪我や病気の罹患率とその関連因子が明らかに

日本人大学柔道選手の怪我の発生率や疾患罹患率、およびそれらの関連因子が報告された。慶應義塾大学医学部スポーツ医学総合センターの木之田章氏、佐藤和毅氏らが行った調査の結果であり、「Journal of Functional Morphology and Kinesiology」に論文が掲載された。怪我の発生の関連因子としてトレーナーのサポート、疾患罹患の関連因子としてBMI30以上が該当することなどが明らかにされている。

日本の大学柔道選手の怪我や病気の罹患率とその関連因子が明らかに

UNIVAS所属の柔道選手564人を対象に、過去1年間での怪我と病気の状況を調査

スポーツに怪我は付き物のような存在で、柔道も例外でないばかりか、投げ技、関節技などのため、怪我のリスクが高い可能性がある。また、体重別階級があるため、急速な減量が行われることがある点も、怪我や疾患のリスク上昇につながると考えられる。ところが、柔道選手の怪我や疾患のリスクについては他の競技に比べると知見が十分でなく、現状では指導者の経験に依拠したリスク評価の下でトレーニングが行われている。以上を背景として木之田氏らは、大学柔道選手の怪我と病気の実態を把握する調査を行った。

この調査は、2022年6~10月に大学スポーツ協会(UNIVAS)に所属している大学柔道選手を対象にwebアンケートとして実施された。回答者数は564人で、主な特徴は、年齢19.8±1.2歳、男子66.7%、BMI27.0±5.1、競技歴12.2±3.7年であり、トレーニング頻度は5.7±0.9日/週で、競技レベルは地域レベルが44.0%、全国レベルが53.4%、世界レベルが2.6%だった。

なお、本調査における怪我の定義は、「スポーツ中に発生した組織の損傷または正常な身体機能の障害」とした。

過去1年間の怪我の発生状況と関連因子

過去1年間の怪我の発生は、344人(61%)から計581件報告された。

重症度は、ごく軽症(トレーニングからの離脱なし)が13.3%、軽症(離脱期間1日~1週間)19.8%、中等症(同1週間~1カ月)38.9%、重症(1カ月~半年)21.3%、最重症(半年以上)6.7%。受傷部位は下肢が52.0%と最多で、上肢33.6%、胴部10.5%、頭部4.0%だった。

過去1年間に怪我をした選手としなかった選手を比較すると、学年の分布(受傷歴のない選手は低学年に多い。p<0.001)のほかに、トレーナーのサポートの有無に有意差が認められた。具体的には、トレーナーのサポートを受けていた選手の受傷率は68.5%、サポートを受けていない選手は57.9%であり、前者のほうが高かった(p=0.023)。性別やBMI、競技レベル、トレーニング頻度などは有意差がなかった。

怪我の発生の関連因子

怪我の発生に関連のある因子をロジスティック回帰分析で検討すると、トレーナーのサポートを受けていることが、唯一の正の有意な関連因子として抽出され(OR1.656)、競技歴の長さは唯一の負の関連因子(保護的因子)として抽出された(OR0.913)。性別や学年、BMI、競技レベル、トレーニング頻度などとの関連は非有意だった。

なお、一見意外に感じられる、トレーナーのサポートが怪我の発生に関連しているという結果について著者らは、サポートがあることによって、軽度の怪我であっても正確に認識され報告されたことの影響が考えられると考察している。

過去1年間の疾患の罹患状況と関連因子

過去1年間の疾患の罹患は、49人(8.7%)から計49件報告され、そのうち15件は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)であり、そのほかには消化器系の問題が13件、熱中症5件などが含まれていた。重症度は、ごく軽症(怪我による離脱期間と同様に判定)が4.1%、軽症20.4%、中等症51.0%、重症16.3%、最重症8.2%だった。

過去1年間に疾患に罹患をした選手としなかった選手を比較すると、BMIカテゴリーの分布(p=0.009)と競技レベル(p=0.038)に有意差が認められた。具体的には、低体重~普通体重(BMI25未満)の群における罹患ありの割合は6.1%、過体重群(同25以上30未満)は7.7%、肥満群(同30以上)は15.4%であり、地域レベルは8.9%、全国レベルは7.6%、世界レベルは26.7%だった。

性別や学年、トレーニング頻度、トレーナーのサポートの有無などは有意差がなかった。

疾患罹患の関連因子

疾患の罹患に関連のある因子をロジスティック回帰分析で検討すると、肥満(OR3.134)とトレーニング頻度(週5日以下に対して6日以上でOR5.073)が、有意な正の関連因子として抽出された。一方、競技歴の長さは唯一の負の関連因子として抽出された(OR0.899)。性別や学年、競技レベル、トレーナーのサポートの有無などとの関連は非有意だった。

なお、トレーニング頻度の高さが疾患の罹患に関連しているという結果について著者らは、オーバートレーニングによる免疫能低下の影響が考えられると考察している。

論文では、これらの結果の総括として、「われわれの調査結果は、柔道に伴う怪我や疾患に関する理解を深め、あらゆる競技レベルの柔道家にとってより安全なスポーツ環境の創生のためのデータとして活用できる」と結論づけられ、また、「経験の浅い選手は怪我のリスクが高く、BMIカテゴリーで肥満に該当する選手は疾患罹患リスクが高い可能性があるため、それぞれの予防対策を強化する必要があるだろう」と付け加えている。

文献情報

原題のタイトルは、「1-Year Prevalence and Factors Related to Injuries and Illnesses in Japanese Judo Collegiate Athletes」。〔J Funct Morphol Kinesiol. 2024 Aug 28;9(3):148〕
原文はこちら(MDPI)

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