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自転車ロード選手のBMIが年々低下 過去30年間のグランツールとモニュメント上位5人を分析

自転車ロードレースで世界的に活躍しているトップアスリートのBMIが、経年的に低下しているとするデータが報告された。著者らは、アスリートの健康を促進するための教育プログラムや規制措置を検討する必要性が示唆されるとしている。

自転車ロード選手のBMIが年々低下 過去30年間のグランツールとモニュメント上位5人を分析

グランツールとモニュメントのトップ5選手のBMIを過去30年間にわたり調査

自転車競技は体重の多寡が成績に影響を及ぼすことから、減量を行っている選手が少なくない。男性自転車選手の46%が体重を減らさなければならないというストレスを感じているとする報告や、一般人口に比較して摂食障害のリスクがやや高いとする報告もある。それにもかかわらず、体重が軽いほうが有利との認識の広がりとともに、より近年になるほど軽量化が進んでいる可能性が考えられる。これを背景として今回紹介する論文の著者らは、自転車ロードレースのグランツールとモニュメントの参加選手のBMIの経年的な変化を分析するという研究を行った。

BMIをアスリートの健康リスクマーカーとして用いることには議論があるが、なんらかの研究に参加し体組成が評価されている場合を除いて、競技参加者全員の体組成が評価されることはない。一方でBMIについては主催組織などから参加選手の身長と体重のデータが公表されていることが多いため、そのデータから割り出すことができる。筋肉量を評価できないという限界点があるものの、BMIが低いことは身体的・精神的な健康リスクの高さと関連のあることについては多くのエビデンスがあり、アスリートの健康にとっても潜在的なリスクとなり得ることが示唆されている。

過去30年間でトップ5選手のBMIが有意に低下

この研究で分析対象としたグランツールとモニュメントのうち、前者はフランス、イタリア、スペインの3カ国で3週間にわたり、連日レースが行われ、走行距離は約3,500km、累積標高差は各ステージで40~60kmにも及ぶ。総合順位は累積レースタイムで決まる。後者はイタリア、ベルギー、フランスで計5日間にわたり、それぞれ順位により優勝者が決定する。コースには一部舗装路のほかに石畳、急勾配の登りなど、多様な地形が含まれている。

研究では、これらのレース参加選手のデータを掲載しているサイト(ProCyclingStats)を利用し、1994~2023年のトップ5に入った選手の体重と身長のデータを基に、各選手のBMIを算出した。グランツールについては、この30年間に1回以上、トップ5に入った選手の441時点のデータを分析対象とした。モニュメントについては同様の基準で727時点のデータを分析対象とした。

グランツール参加選手での分析

グランツールで30年間にトップ5に入った選手441人のBMIは、平均20.54±1.12(範囲17.92~24.49)だった。なお、初めてトップ5入りした時の年齢は27.37±3.27歳だった(同20~41)。

BMIは、30年間にわたり有意に低下していた(r=-0.38〈95%CI;-0.46~-0.30〉、p<0.001)。10年ごとに区切ってBMIの平均を算出すると、1994~2003年は21.08±1.01、2004~13年は20.53±0.91、2014~23年は20.10±1.02だった。

各選手が初めてトップ5入りしたレースのデータ(n=155)に絞り込んで分析した場合も同様に、BMIは30年間にわたり有意に低下していた(r=-0.50〈-0.50~-0.24〉、p<0.001)。10年ごとに区切ってBMIの平均を算出すると、1994~2003年は221.0±1.02、2004~13年は20.52±1.06、2014~23年は19.92±1.03だった。

モニュメント参加選手での分析

モニュメントで30年間にトップ5に入った選手727人のBMIは、平均21.46±1.43(範囲17.90~26.75)であり、グランツール参加選手の平均よりもやや高値だった。初めてトップ5入りした時の年齢は27.54±3.29歳だった(同21~38)。

BMIは、30年間にわたり有意に低下していたが(r=-0.11〈-0.18~-0.04〉、p=0.002)、低下速度はグランツール参加選手で観察された速度より緩やかだった。10年ごとに区切ってBMIの平均を算出すると、1994~2003年の21.79±1.32に比較し2014~23年の21.43±1.45は有意に低値だったが(p=0.013)、2004~13年は21.68±1.49であり、前後の10年間との差は有意水準未満だった。

各選手が初めてトップ5入りしたレースのデータ(n=254)に絞り込んで分析した場合も同様に、BMIは30年間にわたり有意に低下していた(r=-0.2〈-0.35~-0.13〉、p<0.001)。10年ごとに区切ってBMIの平均を算出すると、1994~2003年は21.82±1.14、2004~13年は21.61±1.59、2014~23歳は20.96±1.41であり、最後の10年間はその前の20年間より有意に低値だった。

スポーツパフォーマンスと健康の潜在的リスク

著者らは、BMIでは脂肪量や筋肉量を評価できないという限界点があるとしながらも、「自転車ロードレースのトップアスリートのBMIは統計的有意に低下してきていて、とくにモニュメントよりグランツールで顕著である。グランツールではBMIが低いことが上位入賞にとってより有利になってきている可能性がある」としている。モニュメントではその変化が相対的に緩やかであることの理由については、「標高差の大きいグランツールに比較してそれが少ないモニュメントでは、軽量であることよりも絶対的なパワーが高いことが有利な場面が多いからではないか」という。

論文ではこれらの考察に加えて、「明らかになったデータは、自転車競技における潜在的に不健康なパターンに対処するために、スポーツ関係者や規制当局が、より多くの注意を払う必要があることを強調するものと言えるのではないか。BMIが低いことは、とくに山岳地帯でのレースでは競争上の優位性につながる可能性があるものの、精神的および身体的健康への影響について、注意深くモニタリングしなければならない。さらなる研究が必要とされるものの、将来的には規制措置が検討される可能性もある」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Body Mass Index Trends for the Top Five Finishers in Men’s Grand Tour and Monument Cycling Events from 1994–2023: Implications for Athletes and Sporting Stakeholders」。〔Sports (Basel). 2024 Jun 26;12(7):178〕
原文はこちら(MDPI)

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