スポーツ栄養WEB 栄養で元気になる!

SNDJ志保子塾2024 ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー
一般社団法人日本スポーツ栄養協会 SNDJ公式情報サイト
ニュース・トピックス

日常的に運動をしている閉経前の女性92人の骨密度と血中ビタミンD濃度を調査 順天堂大学

閉経前の中年女性では、サッカーまたはバレーボールを行っている人とスポーツをしていない人とで、血中ビタミンD濃度や骨密度が有意に異なるというデータが報告された。順天堂大学と日本サッカー協会の研究グループの研究結果であり、「BMC Sports Science, Medicine and Rehabilitation」に論文が掲載されるとともに、大学のサイトにニュースリリースが発表された。運動習慣なし群に比べて、サッカー群は大腿骨の骨密度と血中ビタミンD濃度が高く、バレーボール群は腰椎と大腿骨の骨密度が高いという。

日常的に運動をしている40代女性92人の骨密度と血中ビタミンD濃度を調査 順天堂大学

研究の概要:「骨」は中年期以降の女性の健康リスク

順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科の吉村雅文氏、大学院保健医療学研究科の宮森隆行氏らの研究グループ、および日本サッカー協会の田嶋幸三氏は、2021年に締結した産学包括連携協定の一環として共同研究プロジェクトを発足。そのプロジェクト研究の一部として、女性のライフステージに着目し、閉経前40歳代女性の屋内外における運動習慣と骨密度※1の現状を調べた。

※1 骨密度:骨を構成するカルシウムなどのミネラル成分の密度。加齢による減少率は女性のほうが大きい。

その結果、同年代で屋外スポーツであるサッカーを実施している群と屋内スポーツであるバレーボールを実施している群は、運動習慣がない対照群と比較して、骨密度が有意に高いこと、また、サッカーを実施している群は、骨形成に必要とされる血中ビタミンD※2濃度が最も高いことを明らかにした。

※2 ビタミンD:カルシウムの吸収促進、骨の成長促進、免疫機能の調整などに欠かせない脂溶性ビタミン。

女性ホルモンの一種であるエストロゲンは、骨代謝に重要な役割を果たすが、閉経後にその分泌量が急激に減少することが報告されている。本成果は、女性のライフステージにおける閉経前にサッカーおよびバレーボールを定期的に実施することが、骨密度を高められる可能性を示すものといえる。

研究の背景:日光曝露とスポーツは、中年期女性のビタミンDと骨密度に関連するか?

骨粗鬆症※3は、骨折のリスクが高まる疾患で、とくに女性は閉経によってかなりの骨量が失われるため、女性の骨粗鬆症の有病率は男性の約3倍とされている。骨粗鬆症を予防するためには、運動の実施、体内のビタミンD貯蔵量の維持が重要であると考えられる。

※3 骨粗鬆症:骨量が減って骨が弱くなり、骨折しやすくなる病気。日本には約1,000万人以上の患者がいる。

ビタミンDは、骨代謝に関わる重要なビタミンだが、食事からの摂取のみならず、日光を浴びると皮膚で生成されることが知られている。そのため、日光に浴びやすい屋外スポーツを実施している女性は、血中ビタミンD濃度が高く、さらに、閉経前に屋内外で定期的にスポーツを実施することは、骨密度を高めることができる可能性がある。

そこで本研究は、シニアスポーツとして近年競技人口が増加傾向にあるサッカーとバレーボールに着目し、これらのスポーツの実践者における血中ビタミンD濃度と骨密度の現状を調べることを目的とした。

研究の内容:ビタミンDは屋外スポーツ、骨密度は屋内外のスポーツで上昇する可能性

本研究では、閉経前の40歳代女性を対象に、屋外スポーツであるサッカーをしている人(サッカー群)、屋内スポーツであるバレーボールをしている人(バレーボール群)、日常的に運動を実施していない人(運動習慣なし)から研究参加者を募集した。全体の参加者は92名となり、サッカー群27名、バレーボール群40名、運動習慣なし群25名となった。腰椎と大腿骨頚部の骨密度、体内にあるビタミンD貯蔵量の指標とされている血中25-ハイドロキシビタミンD(25-OHD)濃度の測定を行い、サッカー群、バレーボール群、運動習慣なし群の3群間で比較した。

その結果、腰椎の骨密度は、バレーボール群が対照群よりも高く、大腿骨頚部の骨密度は、サッカー群とバレーボール群において、運動習慣なし群よりも高いことがわかった。さらに、骨形成に必要とされる血中25-OHD濃度は、サッカー群が最も高いことが明らかになった。

このように本研究では、閉経前40歳代の女性においては日常的に屋内外で運動をすることにより骨密度が高まり、骨の健康に重要な血中25-OHD濃度は屋外運動で高まる可能性がわかった。

図 閉経前中年女性サッカー選手とバレーボール選手における血中ビタミンDと骨密度の現状

閉経前中年女性サッカー選手とバレーボール選手における血中ビタミンDと骨密度の現状

(出典:順天堂大学)

体内のビタミンD貯蔵量が高いと骨密度も高くなりやすいとされていることから、閉経前にサッカーをはじめとする屋外スポーツの定期的な実施は、血中25-OHD濃度を高め、閉経後の骨量減少を抑制し、将来的には骨粗鬆症を予防できる可能性がある。

研究者らは、「近年、美容意識の高まりや外気温の上昇によって、運動を含めた屋外活動が避けられるようになり、日本人の多くはビタミンDが欠乏していると報告されている。しかし、日光を浴びることは、体内のビタミンDを増やすだけでなく、骨代謝を高めるなど、健康の維持・増進に効果的。40歳代以降の女性は、ぜひ、ウォーキングなどから定期的な屋外運動を始めてみては」と述べている。

出典

閉経前中年女性サッカー選手とバレーボール選手における骨密度と血中ビタミンD濃度の現状(順天堂大学)

文献情報

原題のタイトルは、「Vitamin D levels and bone mineral density of middle-aged premenopausal female football and volleyball players in Japan: a cross-sectional study」。〔BMC Sports Sci Med Rehabil. 2024 Jul 2;16(1):147〕
原文はこちら(Springer Nature)

この記事のURLとタイトルをコピーする
志保子塾2024後期「ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー」

関連記事

スポーツ栄養Web編集部
facebook
Twitter
LINE
ニュース・トピックス
SNDJクラブ会員登録
SNDJクラブ会員登録

スポーツ栄養の情報を得たい方、関心のある方はどなたでも無料でご登録いただけます。下記よりご登録ください!

SNDJメンバー登録
SNDJメンバー登録

公認スポーツ栄養士・管理栄養士・栄養士向けのスキルアップセミナーや交流会の開催、専門情報の共有、お仕事相談などを行います。下記よりご登録ください!

元気”いなり”プロジェクト
元気”いなり”プロジェクト
おすすめ記事
スポーツ栄養・栄養サポート関連書籍のデータベース
セミナー・イベント情報
このページのトップへ