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子ども食堂を利用している親子の皮膚カロテノイドレベルや野菜摂取量は関連ある?

子ども食堂を利用している親子の野菜摂取量は、交絡因子調整後にも有意な正相関が認められるのに対して、皮膚カロテノイドレベルの相関については、親のBMIや喫煙習慣を調整することで非有意となるという研究結果が報告された。昭和女子大学大学院生活機構研究科生活科学研究専攻の黒谷佳代氏らの研究によるもので、「Frontiers in Nutrition」に論文が掲載された。著者らは、同一家庭内の親子の食生活は似ているものの、親のライフスタイル次第で野菜摂取による健康上のメリットが打ち消されてしまう可能性を示唆しているのではないかと述べている。

子ども食堂を利用している親子の皮膚カロテノイドレベルや野菜摂取量は関連ある?

日本の親子の野菜摂取量やカロテノイドレベルの相関を調べた初の研究

幼少期の食行動は保護者(親)の食習慣の影響を強く受け、かつ成人期以降に引き継がれやすいことが知られている。健康の維持・増進に重要な野菜の摂取量が、親子で相関することも報告されている。ただしそれらの知見は主に海外で行われた研究結果であり、日本発の報告は少ない。

また、野菜摂取による健康上のメリットの多くは、抗酸化作用を有するカロテノイドによるものと考えられるが、従来、体内のカロテノイドレベルの評価には採血検査が必要で、手間とコストが課題となっていた。しかし最近、反射分光法を用いて体内のカロテノイドレベルを皮膚で非侵襲的に測定する技術が確立された。

一方、食品の摂取量を左右する潜在的な要因の一つとして、社会経済的地位の影響も無視できず、生活困窮世帯では野菜摂取量が少ないことが「国民健康・栄養調査」などから明らかにされている。このような社会的不利な状況に伴う子どもの栄養不良に対して国内では近年、地域ごとに「子ども食堂」の活動が広がり、課題解決の一助となりつつある。

これらを背景として黒谷氏らは、子ども食堂を利用している子どもとその保護者の野菜摂取量の実態を調査するとともに、皮膚カロテノイドレベルを評価して、それらが親子間で関連しているのか否かを、生活習慣などの交絡因子を考慮しながら検討した。

都内の子ども食堂を利用している子どもとその親を対象に調査

検討対象は、都内の2カ所の子ども食堂の利用者で、子どもが58人(年齢範囲6~15歳、女児53.4%)、その保護者39人(平均年齢41.4±5.2歳、母親が89.7%)。調査期間は新型コロナウイルス感染症パンデミック前の2019年11~12月だった。

自記式アンケートで把握した保護者の主な特徴は、BMIが22.1±3.2、現喫煙者15.8%で、過半数(55.3%)はサプリメント非利用者だった。また経済状態は、恵まれているが36.8%、ふつうが44.7%、困難が18.4%だった。

野菜摂取量は、「食事バランスガイド」に基づいて70gを1つ(1皿)とし、その例をイラストにて示したうえで、1日の平均的な摂取量の回答を得た。その結果、子どもの野菜摂取量は約7割(69.0%)が1~2つであり、他は3~4つが19.0%、ほぼ食べないが12.1%であった。保護者は約半数が3~4つ、46.1%が1~2つ、ほぼ食べないと5つ以上が各2.6%だった。主食、主催、副菜がそろっている食事を1日2回以上摂取している割合は、子どもが77.6%、保護者は41.0%だった。

保護者の喫煙やBMIを調整すると、親子のカロテノイドレベルの相関が消失する

皮膚カロテノイドレベルは、0~1,200au(任意単位)の間で評価され、子どもは366.8±74.0au、保護者は315.0±101.4auであった。

子どもと保護者の性別、保護者のサプリメント摂取、経済状態、および調査地点(通っている子ども食堂の違い)の影響を調整後(モデル1)、子どもと保護者の野菜摂取量との間に有意な正の相関が認められた(r=0.30、p=0.02)。調整因子に保護者の喫煙を追加した場合(モデル2)や、さらに保護者のBMIを調整した場合(モデル3)においても、相関係数は変わらず有意だった(いずれのモデルもr=0.30、p=0.02)。

それに対して皮膚カロテノイドレベルは、モデル1では正相関がみられたものの(r=0.38、p=0.02)、モデル2では有意性が消失し(r=0.30、p=0.07)、モデル3ではさらに関連性が減弱した(r=0.25、p=0.14)。

感度分析として、父親を除外し母親のみのデータとの相関を検討した場合も、ほぼ同様の結果が示された。

給食は生活困窮世帯の子どもの健康維持に寄与している可能性

著者らは本研究を「子どもと保護者の皮膚カロテノイドレベルの相関を検討した初の研究」と位置づけている。
結論として、「子どもと保護者の皮膚カロテノイドレベルには正の相関がみられたが、喫煙・BMIを調整した後、有意性が消失した。一方、野菜摂取量は喫煙・BMIを調整後にも、引き続き有意な正相関が認められた。このことは、子どもと保護者の食習慣は類似しているものの、保護者の喫煙や肥満などの生活習慣関連因子が皮膚カロテノイドレベルに影響を与える可能性のあることを示唆している」と述べている。

なお、本研究で把握された皮膚カロテノイドレベルは、保護者は低値であり子どもは高値だった。この点について、低所得世帯では野菜摂取量が少ないことが報告されていることから、子ども食堂の利用者を対象とした本研究における保護者の皮膚カロテノイドレベルが低いことの一部は社会経済状況によって説明され、子どもの皮膚カロテノイドレベルが高いことの一部は学校給食が寄与している可能性があるとの考察が加えられている。

文献情報

原題のタイトルは、「Parent-child skin carotenoid level and vegetable intake relationships in users of children’s cafeterias in Japan」。〔Front Nutr. 2024 Aug 14:11:1388233〕
原文はこちら(Frontiers Media)

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