スポーツ栄養WEB 栄養で元気になる!

SNDJ志保子塾2024 ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー
一般社団法人日本スポーツ栄養協会 SNDJ公式情報サイト
ニュース・トピックス

スポーツ栄養の知識レベルをNCAA所属選手で調査 種目や競技レベルに関係なく知識不足

NCAA所属の学生アスリートのスポーツ栄養の知識を、デビジョン間で比較した結果が報告された。最も競技レベルの高いディビジョンIの選手が、意外なことに知識レベルが最も低く、他の2群との間に有意差が認められたという。ただし著者らは、ディビジョンにかかわらず全体的に知識の不十分さが明らかになったとしている。

スポーツ栄養の知識レベルをNCAA所属選手で調査 種目や競技レベルに関係なく知識不足

学生アスリートのスポーツ栄養の知識レベルをマインドフルネスとの関連を含めて検討

全米大学体育協会(National Collegiate Athletic Association;NCAA)の中で最も競技レベルの高いディビジョンI(D I)の学生アスリートを対象とする研究報告は少なくない。スポーツ栄養についてもD Iの学生にはさまざまなリソースが提供されている。反対に、D IIやD IIIの学生には、所属人数はD Iより多いにもかかわらずリソースが少なく、スポーツ栄養に関する調査や指導も十分でないと考えられる。ただ、これまでのところ、スポーツ栄養の知識レベルがディビジョン間で異なるのかどうかという視点での研究はあまり行われていない。

今回紹介する研究は、D I、D II、D III所属選手のスポーツ栄養の知識を同じテストを用いて同時期に評価し比較している。また、最近、栄養に関する知識を向上させようとするとき、マインドフルネスが重要であることが指摘されている。栄養に関するマインドフルネスとは、食べるプロセスを重視する姿勢といった意味であり、例えば味はもちろん、香りや食感などの認識を指す。しかしこの食事に関するマインドフルネスが、学生アスリートのスポーツ栄養の知識とどのような関係があるのかはまだほとんど研究されていない。本研究ではその点もあわせて検討されている。

NCAA所属123人のアスリートのスポーツ栄養の知識をディビジョン別に比較

この研究では、オンラインツールを用いて各大学のコーチスタッフを経由し学生に回答を呼びかけた。190人が質問票への回答を開始し、回答を終了したのは123人だった。

質問項目は、一般的な栄養とスポーツ栄養の知識を評価するための質問票の簡易版(Abridged Nutrition for Sport Knowledge Questionnaire;A-NSKQ)、摂取必要量の認識等の認識に関する質問票、マインドフルネス質問票などで構成されていた。

これらのうち、A-NSKQは35項目からなり、妥当性と再現性が先行研究で検証済み。正答率が49%以下は知識が不足、50~65%は標準的、66~75%は良好、76%以上は優秀と判定される。

摂取必要量の認識等に関する質問票は、「体重を維持するために必要な摂取エネルギー量はどのくらいと思うか?」、「実際に摂取している量は何kcalだと思うか?」などの質問で構成されている。身体活動量が低、中、高という3段階に応じて、エネルギー量は40、50、60kcal/kg/日を基準とし、炭水化物摂取量は4、6、8g/kg/日、タンパク質摂取量は1.4、1.6、1.8g/kg/日として、脂質摂取量は15、25、30%エネルギーを基準とし乖離を評価する。

マインドフルネス質問票は、28項目の質問に対する0~4のリッカートスコアで回答を得て評価するもの。質問には、「好きなものを食べていても、満腹感を感じたらそれ以上は食べない」、「食べる前に食べ物の色や香りを楽しむ」、「落ち込んでいる時、気晴らしのために食事を摂ることがある」といった項目が含まれている。

解析対象アスリートの特徴

回答を終了した123人の内訳は以下のとおり。D Iが45人(うち男子14人)、D IIが47人(同14人)、D IIIが31人(同18人)。計16種類の競技に参加しており、陸上(29人)とサッカー(22人)が多かった。

全員が18歳以上で平均年齢は男子が21.0±1.4歳、女子は20.6±1.2歳であり、計20人は過去に栄養学を受講した経験を有していた。

知識スコアが総じて低く、ディビジョンIの学生が最も低い

スポーツ栄養の知識レベル(A-NSKQの正答率)

スポーツ栄養の知識レベルを表すA-NSKQの正答率は、全体平均で45.5±3.5%だった。これは「不足」と判定されるレベル。性別にみると、男子は48.6±13.6%で、女子の43.6±13.2%より有意に高値だった(p=0.044)。

ディビジョン別にみると、D Iは38.8±14.1%であり、これはD IIの47.7±11.4%に比較し有意に低く(p=0.002)、D IIIの51.7±11.8%との比較でも有意に低値だった(p<0.001)。D IIIは50%を超えていて「標準的」と判定されるレベルだが、D IIとの比較では有意差がなかった。

団体競技と個人競技で比較した場合、前者が43.4±12.9%、後者が48.6±14.2%であり、個人競技のアスリートのほうが高値だった(p=0.040)。また、過去に栄養学を受講していた選手は51.0±14.7%で「標準的」と判定されるレベルであり、受講経験のない選手(44.3±13.0%)との比較で有意差が認められた(p=0.038)。

摂取必要量の認識

全アスリートのエネルギー必要量は、女子3,210±463kcal/日、男子4,328±775kcal/日と計算された。それに対して回答の平均は同順2,112±575kcal/日、3,283±538kcal/日であり、学生アスリートの認識している必要量は有意に少なかった(p<0.001)。さらに、実際に摂取している量は、2,034±746kcal/日、3,109±773kcal/日であって、より低値だった。

主要栄養素別にみると、炭水化物に関しては男子・女子ともに、必要と計算された量よりも少ない量を必要だと認識していた。タンパク質に関しては、女子は必要と計算された量と必要だと認識している量に有意差がなかったが、男子は認識している量のほうが有意に少なかった。脂質に関しては、女子は必要と計算された量よりも必要だと認識している量のほうが有意に多く、男子は必要と計算された量と必要だと認識している量に有意差がなかった。

マインドフルネスな食習慣

マインドフルネス食習慣のスコアによる検討から、女子学生アスリートは男子学生アスリートよりも、マインドフルであることが示された。この結果は、女子学生アスリートに対してはマインドフルネスの手法を用いた介入によって、食習慣により大きな影響を及ぼし得ることを示唆している。

以上の結果から著者らは、「NCAAに所属するアスリートは所属カテゴリーにかかわらずスポーツ栄養の知識が不足しており、とくにディビジョンIアスリートの知識レベルが低い。また、全カテゴリーの学生アスリートが、エネルギー必要量と主要栄養素の必要量を過小評価している。学生アスリートに対する栄養教育をルーティーンとして実施することが推奨される」と結論づけている。

文献情報

原題のタイトルは、「Differences in perceived energy and macronutrient requirements across divisions in NCAA athletes」。〔J Int Soc Sports Nutr. 2024 Dec;21(1):2365307〕
原文はこちら(Informa UK)

この記事のURLとタイトルをコピーする
志保子塾2024後期「ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー」

関連記事

スポーツ栄養Web編集部
facebook
Twitter
LINE
ニュース・トピックス
SNDJクラブ会員登録
SNDJクラブ会員登録

スポーツ栄養の情報を得たい方、関心のある方はどなたでも無料でご登録いただけます。下記よりご登録ください!

SNDJメンバー登録
SNDJメンバー登録

公認スポーツ栄養士・管理栄養士・栄養士向けのスキルアップセミナーや交流会の開催、専門情報の共有、お仕事相談などを行います。下記よりご登録ください!

元気”いなり”プロジェクト
元気”いなり”プロジェクト
おすすめ記事
スポーツ栄養・栄養サポート関連書籍のデータベース
セミナー・イベント情報
このページのトップへ