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ビタミンDサプリでアスリートの筋力を高められるか? これまでの研究報告のメタ解析

ビタミンD補給によるアスリートへの筋力への影響を検討したこれまでの研究のデータを統合して解析した結果が報告された。全体的な傾向として有意な変化は認められないが、大腿四頭筋の収縮力に関しては有意な効果が観察されたという。中国の研究の報告。

ビタミンDサプリでアスリートの筋力を高められる? これまでの研究報告のメタ解析

アスリートはビタミンDサプリを摂るべきなのか?

これまでにビタミンDの不足が骨代謝や筋力の低下に関連していることが明らかにされていて、骨粗鬆症の治療にも用いられているが、筋力の向上という点でビタミンD補給にメリットがあるのかという点は明らかになっていない。一方でアスリートにはビタミン不足が少なくないとする報告があり、これには非アスリートに比べて代謝が高い可能性、屋内競技では紫外線曝露が不十分になること、栄養素としてのビタミンDの摂取不足などが要因として考えられる。

アスリートがビタミンDをサプリメントなどとして補給することの意義についても既に複数の研究が行われてきており、さらにそれらの報告を対象とするメタ解析も2019年に報告されている。そのメタ解析では、サプリ摂取により血清25(OH)Dレベルは有意に上昇するものの、筋力に有意差は生じないと結論していた。ただし、そのメタ解析以降もアスリート対象のビタミンD介入に関する研究は続けられてきている。このことはとりもなおさず、スポーツ領域においてこのテーマへの関心が高いことを意味している。

これを背景として本論文の著者らは、2019年以降に報告された最新のデータも解析対象に含め、かつ評価パラメーターも再検討したうえで改めて、PRISMA(システマティックレビューとメタ解析のための優先報告事項)に準拠したメタ解析を行った。

新たな報告も含めたレビューで10件の研究を抽出

文献検索には、PubMed、SPORTDiscus、コクランライブラリーなどを用いて、2023年9月27日までに収載された論文を検索対象とした。包括基準は、10~45歳のアスリートを対象にビタミンD3の経口投与による介入を行い、血清25(OH)Dと筋力に与える影響を対プラセボで検討した無作為化比較試験(randomized controlled trial;RCT)。除外基準は、非アスリートでの研究、パラアスリート対象の研究、無作為化されていない研究、筋力を評価していない研究、ビタミンD2を用いた研究、血清25(OH)Dに影響を及ぼし得るビタミンD3以外の介入を行った研究、研究の質の評価のための情報が記されていない報告など。言語に制約は設けなかった。

一次検索で1,929報がヒットし、重複削除後の1,491報を2名の研究者が独立してタイトルと要約に基づくスクリーニングを実施し39報に絞り込み、これを全文精査の対象とした。採否の意見の不一致は討議により解決した。最終的に、10件の研究報告が適格と判断された。

なお、ビタミンD3投与量は国際単位(IU)で統一し(100IUは2.5μg)、25(OH)Dレベルは‘ng/mL’で統一した(1ng/mLは2.5nmol/L)。

メタ解析の対象とした研究の特徴

10件の研究は、英国で4件、ポーランドで3件、イスラエル、ニュージーランド、韓国で各1件が行われており、9件は紫外線曝露の少ない冬季に、他の1件は秋季に行われていた。研究参加者は合計354人で、介入中の脱落により解析対象者の合計は318人(ビタミンD3群166人、プラセボ群152人)だった。参加者の平均年齢は、水泳選手対象研究の14歳から柔道選手対象の29歳の範囲だった。

介入期間は1~12週間で、ビタミンD3投与量は最小が2,000IU/日×8日、最大が15万IUボーラス投与(1回のみ)するという8日間の研究だった。筋力の評価は、ベンチプレスでの最大挙上重量(1-RM-BP〈one repetition maximum bench press〉)、大腿四頭筋の収縮時最大筋力、握力、カウンタームーブメントジャンプ(CMJ)という4指標で行った。

大腿四頭筋の収縮力のみ介入により有意差

結果について、先に血清25(OH)Dレベルの影響のメタ解析の結果をみると、ビタミンD3が用いられていた群では介入後に有意に増加していた(平均差〈MD〉14.76〈95%CI;8.74~20.77〉、p<0.0001)。感度分析として、介入中に研究参加者の15%以上が脱落していた4件の研究を除外した解析でも結果は有意だった。

次に、筋力に関する四つのパラメーターへの影響をみてみよう。

筋力のアウトカム

1-RM-BP

ベンチプレスでの最大挙上重量(1-RM-BP)への影響を検討した研究は4件だった。結果は4件ともに介入効果が非有意であり、メタ解析の結果も同様だった(MD-0.15〈95%CI;-0.57~0.26〉)。

大腿四頭筋収縮時筋力

大腿四頭筋の収縮時最大筋力への影響を検討した研究は2件だった。結果は2件ともに介入効果が非有意だった。しかし、これらのデータを統合したメタ解析の結果は有意となり、この点ではビタミンD3介入の効果が認められた(MD0.57〈0.04~1.11〉)。

握力

握力への影響を検討した研究は7件だった。結果は7件ともに介入効果が非有意であり、メタ解析の結果も同様だった(MD0.21〈-0.09~0.50〉)。

垂直跳び(CMJ)

垂直跳びへの影響を検討した研究は2件だった。結果は2件ともに介入効果が非有意であり、メタ解析の結果も同様だった(MD0.21〈-0.23~0.64〉)。

すべてのデータを統合したメタ解析の結果は、MD0.18(-0.02~0.37)であり、非有意だった。

この結果を著者らは、「アスリートが筋力強化を目的にビタミンDサプリを摂取することの潜在的なメリットが見いだされた。ただし、既に十分な血清25(OH)Dレベルに到達している場合に、全身的な筋力の大幅な向上につながるというエビデンスは得られなかった」と総括している。

文献情報

原題のタイトルは、「Effects of vitamin D3 supplementation on strength of lower and upper extremities in athletes: an updated systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials」。〔Front Nutr. 2024 May 27:11:1381301〕
原文はこちら(Frontiers Media)

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