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タンパク質の摂取タイミングと筋力などへの影響を調査 トレーニング「直前・直後」と「3時間前・後」を比較

高用量のタンパク質を、摂取タイミングを重視してトレーニングにあわせて摂取した場合と、そうでない場合とで、筋力などへの影響に差が生じるかを検討した研究結果が報告された。どちらのケースでも筋力や生化学マーカーは有意に変化し、その変化幅に群間差はみられなかったという。著者らは、「従来提唱されていた筋タンパク質同化ウインドウは、それほど狭くないのではないか」と述べている。

タンパク質の摂取タイミングと筋力などへの影響を調査 トレーニング「直前・直後」と「3時間前・後」を比較

トレーニングとタンパク質摂取のタイミングは同化に影響するか

筋肥大を期待するためのタンパク質摂取量は1日1.6g/kg程度であり、それ以上を摂取しても上乗せ効果は少ないと報告されている。この上限値前後の量を4~5回に分けて、できるだけ24時間内で均等になるように摂取することが最適とする報告もある。このような、タンパク質の摂取タイミングの偏りを少なくするという手法に関しては、一定のコンセンサスが得られている。それに対して、トレーニングのタイミグにあわせて摂取したほうが、筋タンパク質合成(muscle protein synthesis;MPS)の刺激という点で優れているのかという点については、その効果を肯定する研究もあれば否定する研究もある。

このトピックに関してこれまでにシステマティックレビューとメタ解析の報告が2報あり、それらのいずれも特定タイミングのタンパク質摂取は筋肥大に有益な効果を示さないと結論づけている。ただし、それらのメタ解析において解析対象とされた研究の多くは、このトピックの結論を得ることを主目的としたものでないために、解釈上の限界が存在している。

以上を背景として、今回取り上げる論文の著者らは無作為化比較試験により、タンパク質をトレーニングのタイミングにあわせて摂取すべきなのか否かを検討した。

筋力トレーニングを行っている男性40人を2群に分けて8週間介入

この研究の参加者は、ふだんレジスタンストレーニングを行っている男性40人(年齢24±4歳)。適格条件として、過去1年以上にわたりレジスタンストレーニングを週3回以上行っていること、過去1年間にステロイドやサプリメントを摂取していないこと、喫煙者または習慣的飲酒者でないこと、筋骨格系の疾患などがないこと、睡眠時間が7~8時間以上であること、および日常のタンパク質摂取量が2g/kg/日未満であること。

介入方法について

試験デザインは無作為化並行群間比較試験で、1群はトレーニングの直前と直後に(以下、即時群)、他の1群はトレーニングの3時間前と3時間後(以下、3H群)、それぞれ2.0g/kgのタンパク質を摂取するというもの。骨格筋量(skeletal muscle mass;SMM)に群間差が生じないように考慮したうえで無作為化し、各群20人に割り付けた。介入期間は8週間で、評価項目は、体組成、筋力、生化学マーカーなどの変化。

摂取するタンパク質のうち25gはホエイプロテイン飲料50gとして摂取し、その他は食品から摂取。介入期間中は毎週、栄養士が面接し、筋タンパク質合成(MPS)最大化のためのアドバイスが提供された。介入中に24時間の食事記録による調査が6回実施され(連続しない平日4日と休日2日)、両群ともに2g/kg/日のタンパク質が安定して摂取されていた。

体組成・生化学マーカー・筋力パフォーマンスのいずれの変化も、群間差は非有意

介入中に9人(3H群4人、即時群5人)が脱落し、解析は31人で行われた。ベースラインデータは下肢筋力持久力のみ有意差があり3H群で低値だったが下肢筋力には有意差がなく、またその他の指標(年齢や体組成〈BMI、体脂肪率、SMM〉、筋力〈チェストプレスでの筋力・持久力、垂直跳び、懸垂〉、生化学マーカー〈腎機能、肝機能、血清脂質〉)に有意差はなかった。

栄養素摂取量に関しては、ベースライン時の相対炭水化物摂取量のみ、3H群で低値という有意差があったが、タンパク質と脂質および摂取エネルギーの絶対量・相対量には有差がなく、介入期間中の変化も非有意だった。また、介入中にトレーニング量は変化がなく、両群同等だった。

では、各評価指標の変化をみていこう。

体組成

骨格筋量(SMM)は3H群が1.07kg(95%CI;0.45~1.69)、即時群が1.18kg(0.53~1.82)、それぞれ有意に増加し、群間差は非有意だった。体重、BMI、体脂肪率の変化は有意水準未満であり、群間差も非有意だった。

生化学マーカー

肝機能マーカーと血清脂質は有意な変化がなく、群間差も非有意だった。腎機能マーカーのうち尿素窒素は両群ともに有意に上昇し、高タンパク食が実施されていたことを表していた。クレアチニンに関しては両群ともに有意な上昇は観察されなかった。また、これらの指標の変化に、群間差は認められなかった。

筋肉のパフォーマンス

下肢筋力、チェストプレス筋力、懸垂については両群ともに有意な介入効果が認められた。ただし、垂直跳び、下肢筋持久力、チェストプレス持久力については介入効果が有意でなかった。そして、群間差はすべて非有意だった。

トレーニングを行っている人の同化ウインドウは、それほど狭くない可能性

これら一連の結果に基づき著者は、「タンパク質の摂取はそのタイミングに関係なく、筋力トレーニングを行っている男性のSMMと筋力パフォーマンスを向上させる。従来、MPS刺激は運動直後に高まるとする『同化ウインドウ』の存在が想定されていたが、近年、そのウインドウはそれほど狭いものでないとする考え方が台頭してきている。本研究の結果は、少なくともトレーニングを習慣的に行っている人においては、そのような考え方を支持するエビデンスとなり得る」と総括している。

また、「よって、1日の総タンパク質摂取量が、運動による筋肉の増大を促進する主な要因であると考えられる」と述べるとともに、「今後の研究では、タンパク質摂取タイミングの差異の影響を、さまざまな集団で検討する必要がある」と提案している。

文献情報

原題のタイトルは、「Timing matters? The effects of two different timing of high protein diets on body composition, muscular performance, and biochemical markers in resistance-trained males」。〔Front Nutr. 2024 May 23:11:1397090〕
原文はこちら(Frontiers Media)

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