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カフェインガムでバスケのシュート精度が向上する可能性 対プラセボ二重盲検交差試験

カフェイン入りチューインガムを噛むことで、バスケットボールのシュート精度を含む、複数のパフォーマンス指標が有意に改善するとする研究結果が報告された。カフェイン入り飲料を飲んだ場合よりも効果発現が速く、消化器症状を抑制できるというメリットを期待できるという。台湾の研究者によるプラセボ対照二重盲検クロスオーバー試験の結果。

8週間のβ-アラニン摂取で、男子バスケ選手の炎症反応が低下し最大無酸素パワーが増大

カフェインをガムの咀嚼で摂取した場合のバスケの影響を検証

カフェインが認知機能や集中力および筋肉を一時的に向上させたり、疲労感を軽減したりすることに関しては、多くのエビデンスがある。その一方で、カフェインを飲食物として摂取した場合、吸収され血中濃度が最大化するのに60分程度を要し、また消化器症状が現れやすいという点が解決すべき点として残されている。

それに対してカフェイン入りガムを噛んだ場合、カフェインは口腔粘膜から速やかに吸収され、消化器症状も現れにくいと考えられる。先行研究では、カフェイン入りガムの咀嚼後、5分で85%のカフェインが吸収され、10分後にはほぼすべての吸収が終わり、15分後に最高血中濃度に達すると報告されている。

バスケットボールは身体的負荷が大きく、かつ洗練された技術スキルが要求されるスポーツで、エルゴジェニックエイドとしてのカフェインのメリットが既に確認されているが、ガムの咀嚼の有効性は十分に検討されておらず、とくに低用量での検討が少ない。これを背景として、今回紹介する論文の著者らは、3mg/kgという比較的低用量のカフェイン入りガムを咀嚼することによる、バスケットボール特有のスキル、およびその他のパフォーマンス指標に対する影響を検討した。

台湾男子バスケのトップ選手15人のクロスオーバー試験

研究参加者は、台湾のトップ8位以内のチームで6年以上の競技歴がある男性バスケ選手15人(20.9±1.0歳、トレーニング歴8.2±0.3年)。カフェインアレルギーのある選手、直近3カ月以内に怪我を負った選手などは除外されている。

研究デザインはプラセボ対照二重盲検クロスオーバー法で、15人中8人には先にカフェイン条件、7人にはプラセボ条件を試行し、7日間のウォッシュアウト期間をおいて割り付けを入れ替えて試行した。

研究前に3日間の食事記録から、平均カフェイン摂取量は74.0±24.2mgと推計された。研究開始2週間前からカフェインを含む飲食物は控えるように指示し、試験当日は8時と12時に標準化された食事を提供して、15時から試験を開始した。

カフェイン条件では3mg/kgのカフェインを含むガム、プラセボ条件ではカフェインを全く含んでいないガムを10分間咀嚼。なお、いずれのガムもペパーミントで風味付けされ、味や外観からは区別ができないように調整されていた。試験後の調査で、カフェイン条件においてカフェインガムを噛んだと正しく認識できていた選手は57%、プラセボ条件でプラセボだったと正しく認識できていた選手は42%であったことがわかった。

10分間の咀嚼後にガムを吐き出し、5分間安静ののちパフォーマンステストを実施。ガムを噛み始めてからテスト開始までの時間は15分であり、これは先行研究で報告されているカフェインガム咀嚼から最高血中濃度到達までの時間を基に設定された。また、すべてのテストは45分以内に終了可能なように設計された。

フリースローの精度やスプリントタイムなどに有意差

パフォーマンステストは、フリースロー10回を3セット、カウンタームーブメントジャンプ(CMJ)、T字アジリティテスト、20mセグメントスプリントテスト、無酸素性スプリントテストなどとした。

フリースローの精度は、プラセボ条件が73.0±9.16%、カフェイン条件が79.0±4.31%であり、カフェイン条件のほうが有意に高かった(p=0.012、効果量〈d〉=0.94)。

20mセグメントスプリントテストでは、0~10m(p=0.045、d=0.94)、10~20m(p=0.019、d=0.70)、および0~20m(p<0.001、d=1.8)のいずれも、カフェイン条件のタイムが短かった。

無酸素性スプリントテスト(running anaerobic sprint test;RAST.30秒の休憩を挟み35mスプリントを6回)の結果は、ピークパワーには有意差がなかったものの(p=0.328)、最小パワーはカフェイン条件のほうが高値であり(1,234.44±75.7 vs 1,153.90±35.9W、p=0.008、d=1.35)、体重換算した場合も有意差が認められた(p=0.011、d=0.53)。また、疲労指数にも有意差があり、カフェイン条件では疲労によるパワーの低下が少ないことが示された(3.60±1.6 vs 5.21±1.6%、p=0.009、d=1.00)。

CMJ(p=0.147)や敏捷性の指標であるT字アジリティテスト(p=0.571)については、条件間に有意差がなかった。

高度なトレーニングを行っているバスケ選手でも低用量のカフェインガムが有用

著者は本研究の強調すべき点として、対象がトレーニングを行っているハイレベルのバスケ選手であり、かつ3mg/kgという低用量であっても、カフェインガムの咀嚼によって複数のパフォーマンス指標が有意に向上したことにあるとしている。また論文の結論には、「チューインガムとしてカフェインを摂取した場合、吸収速度と生物学的利用能が上昇する可能性がある」とも述べられている。

一方で血中カフェイン濃度を測定していないこと、カフェインガム咀嚼とパフォーマンス向上の関連のメカニズムが検討できていないことなどは本研究の限界点であり、今後の課題だとしている。

文献情報

原題のタイトルは、「Caffeinated Chewing Gum Improves Basketball Shooting Accuracy and Physical Performance Indicators of Trained Basketball Players: A Double-Blind Crossover Trial」。〔Nutrients. 2024 Apr 24;16(9):1256〕
原文はこちら(MDPI)

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