日本人が食に望むのは「価格が安いこと」「国産であること」 農水省「食生活・ライフスタイル調査」
農林水産省は6月28日、「令和5年度 食生活・ライフスタイル調査」の結果を公表した。多くの国民が「同じような商品であればできるだけ価格が安いこと」や「できるだけ日本産の商品であること」を望んでいることなどが報告されている。
調査の目的と方法
農林水産省では、食と環境を支える農業・農村への国民の理解を醸成する目的で、食と農のつながりの深化に着目した国民運動「食から日本を考える。ニッポンフードシフト」を展開していて、その一環として、消費者の日常の消費行動や、食や農に対する意識、普段の食事の実態等を把握するために、本調査を行っている。
調査は定量調査と写真調査の二つのパートに大別され、定量調査は全国の15~74歳、4,000人(性別、年代、居住地域は人口構成比にマッチさせて回収)を対象として、消費者がどのように情報を入手し、どのような意識で食品を購入しているかなどを調査。写真調査は全国の15~74歳、30名を対象として、1週間の食事の写真を撮影し、食事時間やメニューの傾向を把握し、また食料自給率などを推計している。
ここでは定量調査のうち、栄養指導などの場面に関連のある、「日常の情報入手経路と消費行動」の結果を中心に紹介する。
過去の農林水産省「食生活・ライフスタイル調査」
食品購入のポイントは低価格と国産、主食は朝がパン・夜はご飯がトップ 農水省「食生活・ライフスタイル調査」
日常の情報入手経路と消費行動
普段のニュースや新しい話題の情報入手経路
図1 普段のニュースや新しい話題の情報入手経路
普段の情報入手経路は、インターネット関連以外の従来型メディアでは「テレビ」が6割強と突出して高く、次いで「家族や友人との会話」、「新聞」でともに3割前後であった。インターネット関連では「ニュースサイトなど」が6割強と高く、「テレビ」と同程度の割合であった。ただし、本調査の対象者がWebモニターであることに留意が必要。その他では「YouTubeなどの動画投稿サイト」と「SNS」が3割前後と2番目であった。
年代別では、男女とも「テレビ」、「新聞」は高い年代ほど高く、若年層と高齢層の差が大きかった。
これらの傾向に、2021年度から大きな変化はみられない。
普段の買物で重視すること
図2 普段の買物で重視すること
普段の買物では「同じような商品であればできるだけ価格が安いこと」を重視する割合が最も高く、「できるだけ日本産の商品であること」は2番目であった。
年代別では、「同じような商品であればできるだけ価格が安いこと」は、65~74歳の男性が5割で最も高かった。「できるだけ日本産の商品であること」も、男女とも65~74歳で最も高く、最も低い15~24歳との差が大きかった。女性は「同じような商品であればできるだけ価格が安いこと」は年代別に差はなかった。
これらの傾向に、2021年度から大きな変化はみられない。
食に関して重視していること
図3 食に関して重視していること
食に関して重視することは、「同じような商品であればできるだけ価格が安いこと」が「できるだけ日本産の商品であること」をやや上回り最も多かった。前項の普段の買物で重視する点と比較した場合に大きな違いはないが、「できるだけ日本産の商品であること」は、本項の「食」に関する意識のほうがやや高かった。これは、2021年度から同様の傾向にある。
年代別では、普段の買物で重視することと同様の傾向がみられ、「同じような商品であればできるだけ価格が安いこと」は、65~74歳の男性が5割で最も高く、「できるだけ日本産の商品であること」も男女とも65~74歳で最も高く、最も低い15~24歳との差が大きかった。
普段の食材や食品・飲料の買物場所
図4 普段の食材や食品・飲料の買物場所
普段の食材や食品・飲料は「食品スーパー」での購入が約8割で最も高く、その他では「大型スーパー」、「ドラッグストア」、「コンビニ」の順で、それぞれ3~4割前後であった。インターネットでの購入は「Amazon、楽天、Yahooなどの大手専門サイト」を中心に合計で2割であった。2021年度と比較して大きな差はみられないものの、「食品スーパー」、「大型スーパー」は減少傾向がみられる。
年代別では、「食品スーパー」と「大型スーパー」は男女とも65~74歳が約9割で最も高く、「コンビニ」は15~24歳の女性が4割強となっている。居住エリア別では、「北海道エリア」は「大型スーパー」が5割で他のエリアよりも高かった。
「生鮮品」と「加工食品」に対する国産意識
図5 「生鮮品」と「加工食品」に対する国産意識
「米、野菜、精肉、鮮魚などの生鮮品はできるだけ国産品を選ぶ」は、「非常にあてはまる」が約3割、「まああてはまる」は3割強であり、合わせて6割であった。「生鮮品以外の加工品」については「生鮮品」よりもやや下回るが、「非常にあてはまる」は2割、「まああてはまる」は3割強であり、合わせて約5割であった。これらの数値は、2021年度からやや減少傾向がみられる。
年代別では、生鮮品、加工品ともに国産意識は、男女とも高齢層で最も高かった。
食料の備蓄状況
図6 食料の備蓄状況
食料の備蓄状況は、全体で「何かしらの備蓄を行っている」は6割であった。備蓄しているものは、「飲料水」が最も高く、次いで「カップ麺、即席めん、乾麺」、「お米(精米、無洗米、パックご飯など)」、「缶詰」、「レトルト食品」であった。これらの傾向に、2021年度から大きな変化はみられない。
年代別では、「飲料水」、「カップ麺、即席めん、乾麺」、「お米(精米、無洗米、パックご飯など)」、「缶詰」を備蓄している割合は、男女とも65~74歳の高齢層で最も高かった。
ローリングストックの認知・実施状況
図7 ローリングストックの認知・実施状況
普段の食品を少し多めに買い置きしておき、賞味期限を考えて古いものから消費し、消費した分を買い足すことで、常に一定量の食品が家庭に備蓄されている状態を保つという「ローリングストック」の認知・実施状況は、「考え方を知っており、実践している」は23.4%、「考え方を知らなかったが、このようなことは実践している」は13.6%であり、合わせて37.0%であった。
それに対して、「考え方を知らないし、実践もしていない」(14.6%)、「よくわからない」(24.1%)の合計は38.7%と4割を占めている。これらの傾向に、2021年度から大きな変化はみられないが、「よくわからない」がわずかに増加した。
年代別では、「考え方を知っており、実践している」の割合は、男性では25~64歳の間で大きな差はなかった。女性は25~34歳では1割であるが、65~74歳では約4割と高く、年代の差が大きかった。
関連情報
農林水産省「食生活・ライフスタイル調査~令和5年度~」の結果公表について