運動離れが深刻化? 運動実施率は7割未満、オンラインでのスポーツ観戦は増加も現地観戦は減少 スポーツライフに関する調査
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック収束後にも、日本国民の運動・スポーツ実施率はパンデミック前の水準に回復していないことを示唆する調査結果が発表された。笹川スポーツ財団が行っている「スポーツライフに関する調査」の結果であり、調査レポートとそのプレスリリースが発行された。年1回以上の運動・スポーツ実施率が2006年以来の6割台に減少したことなども示されている。
1992年から継続している「スポーツライフに関する調査」
笹川スポーツ財団は、1992年から隔年で「スポーツライフに関する調査(スポーツライフ・データ)」を実施している。全国の18歳以上を調査対象に、頻度・時間・運動強度からみた同財団独自の指標である「運動・スポーツ実施レベル」をはじめ、運動・スポーツ実施率やスポーツ観戦率、スポーツクラブ加入率、好きなスポーツ選手の推移など、国内のスポーツライフの現状を明らかにしてきた。
今般、最新の調査結果をまとめた「スポーツライフ・データ 2024」(調査期間:2024年6~7月)を、3月28日に刊行した。本調査は、COVID-19の感染法上の位置づけが5類移行後では初めての調査。
調査概要
- 内容:運動・スポーツ実施状況、運動・スポーツ施設、スポーツクラブ・同好会・チーム、スポーツ観戦、スポーツボランティア、日常生活における身体活動、生活習慣・健康ほか。
- 対象:全国の市区町村に居住する満18歳以上の男女3,000人(男性1,498人、女性1,502人)。
- 調査地:300地点(大都市90地点、人口10万人以上の市122地点、人口10万人未満の市64地点、町村24地点)。
- 時期:2024年6月7日~7月7日。
主な調査結果
「する」スポーツ
運動・スポーツ実施率の年次推移
年1回以上の運動・スポーツ実施率をみると、1992年調査では50.9%と半数をわずかに超える程度であったが、2000年には70.7%に上昇した。その後、2006年までは60~70%台の間を行き来し、2008年以降は70%台での横ばい状態が続いていた。2024年調査では69.8%であり、前回の2022年調査から3.1ポイント減少して2006年以来の6割台となった。
図1 運動・スポーツ実施率の年次推移
アクティブ・スポーツ人口:週2回以上、1回30分以上、運動強度「ややきつい」以上の実施者。
運動・スポーツ実施レベルの年次推移
運動・スポーツ実施レベルは、「実施頻度」「実施時間」「運動強度」をもとに、運動・スポーツ実施状況を量的・質的観点から捉える、同財団独自の指標。
図2 運動・スポーツ実施レベルの設定
運動・スポーツ実施レベルの年次推移をみると、「レベル4」(アクティブ・スポーツ人口)は、1994年調査の7.6%から漸次増加し、2012年では20.0%に達した。2018年は20.7%、2020年の22.1%で過去最高を示したが、2024年は18.3%であった。
運動強度・時間に関係なく、週2回以上運動・スポーツを行う「レベル2」は9.4%と、1994年調査以降6~10%の間を推移しており、コロナ禍前の2018年9.5%から横ばいである。
過去1年間にまったく運動・スポーツを実施しなかった「レベル0」は、1994年は50.1%と全体の半数を占めていたが、2022年は4分の1程度まで減少した。しかし2024年は30.2%に増え、2006年以来の3割超えとなった。
図3 運動・スポーツ実施レベルの年次推移(全体)
「みる」スポーツ
直接スポーツ観戦率
過去1年間にスタジアムや体育館等で直接スポーツを観戦した者の割合の年次推移を示した。2024年は26.2%であり、コロナ禍前の水準には戻り切っていないが、2022年19.3%から6.9ポイント増加した。
図4 直接スポーツ観戦率の年次推移
インターネット観戦率
2024年調査のインターネットスポーツ観戦率は全体の24.2%で、コロナ禍前の2018年11.5%から12.7ポイント、2022年の21.6%からは2.6ポイント増加した。
図5 インターネットによるスポーツ観戦率の年次推移
「ささえる」スポーツ
2024年調査におけるスポーツボランティア実施率は5.4%で、2022年の4.2%から1.2ポイント増加した。コロナ禍前の2018年は6.7%であった。
図6 スポーツボランティア実施率の年次推移
「する・みる・ささえる」スポーツ
「する」「みる」「ささえる」の各スポーツ参画を組み合わせた構成比を示した。前回の2022年と比較すると、「する・みる・ささえる」スポーツ参画は2.5%で0.4ポイント増加とほぼ横ばいであった。いずれにも関わらない非参画は36.5%と0.9ポイントの増加にとどまるが、コロナ禍前の2018年からは5.2ポイント増加している。
「する」は35.2%で8.0ポイント減少、「みる」は7.7%で2.4ポイント増加、「ささえる」は0.3%で前回と変わらなかった。
図7 「する」「みる」「ささえる」スポーツ参画の構成比の推移
日常生活における身体活動量
本調査では、国際比較が可能である質問票として世界保健機関(WHO)が開発し、信頼性・妥当性が確認された「世界標準化身体活動質問票(GPAQ)」の質問項目を2020年から採用している。
GPAQでは「仕事」「移動」「余暇」「座位」の4領域に回答し、運動・スポーツを含めた日常生活における身体活動量を把握する。身体活動の強度は安静時を1メッツとし、2024年の全体の総身体活動量は30.6メッツ・時/週であり、2022年から約4メッツ減少していた。
身体活動量を「仕事」「移動」「余暇」の領域ごとにみると、構成比の内訳は仕事56.6%、移動22.9%、余暇20.5%で、2022年より仕事の割合が3.6ポイント減少し、移動の割合が4.3ポイント増加した。
図8 身体活動量および各領域の構成比の年次推移(全体)
プレスリリース
運動・スポーツ実施率、コロナ禍前の水準には戻らず。国民の3割が過去1年間にまったく運動・スポーツをしていない結果に。(笹川スポーツ財団)