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アスリートのスマホ依存リスクに「食生活の乱れ」が関連 トルコのハンドボール選手を調査

アスリートのスマートフォン(スマホ)依存症の実態と、リスク因子を検討した研究結果が報告された。トルコのハンドボール選手を対象とした調査から、4人に1人以上がスマホ依存症と考えられ、女性、習慣的飲酒などとともに、食行動に何らかの問題がある場合や、自分自身のボディーイメージの評価が低いことが、スマホ依存症のリスク因子であることが示唆されている。

アスリートのスマホ依存症のリスクに「食生活の乱れ」が関連 トルコのハンドボール選手を調査

アスリートはスマホ依存症ハイリスクなのか?

スマートフォン依存症は、スマホを使用したいという欲求を抑えることができない状態であり、気分のイラつきや攻撃性、社会的引きこもりなどと関連があり、生活へ悪影響が生じることもある。精神疾患として医学的に定義されているわけではないが、その有病率の上昇を報告した複数の研究が存在する。

スマホ依存症の病態生理メカニズムとして、ドパミンやセロトニンといった神経伝達物質の関与を示唆する報告がある。ドパミンやセロトニンの動態には食事や運動も関与しており、またアスリートは摂食障害リスクが高いことも知られている。またアスリートは常に、競技成績の維持・向上と、そのために必要な理想的な体格の維持というストレスに曝されている。

これらから、アスリートはスマホ依存症のリスクが高い可能性が考えられる。今回紹介する論文の著者らは、このような仮説の下で、アスリートのスマホ依存症の実態の把握と、関連性のあるライフスタイル因子の特定を試みた。

アスリートのスマホ依存症の実態とリスク因子を調査

この研究は、トルコ西部のエーゲ海沿岸にあるイズミルという地区のハンドボール連盟に登録されている全選手212人を対象に行われた。この選手群には、プロリーグで活躍する選手やそれに準ずるユースリーグの選手も含まれていた。

スマホ依存症の判定方法

スマホ依存症の判定には、既報研究に基づき10項目の質問で構成された「Smartphone addiction Scale-Short Form(SA-SF)」を用いた。これは、「スマホの使用時間が長すぎる」、「日常生活に支障をきたしているにもかかわらず、スマホを使い続ける」、「スマホがないときの焦り、イライラ」、「スマホによる首や手首の痛み」、「スマホのせいで予定していたことが終わらない」などに対する同意レベルを1~6点のリッカートスコアで判定し、合計点は10~60点の範囲となる。カットオフ値は女性33点、男性31点。

リスク因子の評価方法

スマホ依存症と関連する可能性のある因子として、社会人口学的要因(年齢、性別、教育歴、収入、BMI、喫煙・飲酒習慣など)のほかに、食行動について、意図的な食事制限、脱抑制、空腹感を「three-factor eating questionnaire(TFEQ)」で評価した。また、自分自身のボディーイメージに対する満足度も調査した。

27.7%がスマホ依存症

調査は当初、対面で行う予定だったが、新型コロナウイルス感染症パンデミックが発生したため、オンラインも併用された。最終的に212人中202人(95.3%)がインタビューに応じた。

解析対象の全員(100%)がスマホユーザーであり、62.8%が女性、84.1%が23歳以下だった。また17.8%は喫煙者、32.3%は飲酒の習慣があった。

女性、高収入、習慣的飲酒とともに、TFEQ高値、ボデーイメージの不満がリスクに関連

スマホ依存症の定義に該当したアスリートは、27.7%だった。社会人口学的要因の中では、年齢(23歳以下/超)、教育歴(大学未満/大学卒以上)、BMI、喫煙習慣は、スマホ依存症の有病率との有意な関連が認められなかった。その一方、女性、高収入、習慣的な飲酒はスマホ依存症群に多かった。反対に、スポーツやトレーニングを習慣的に続けている群は、スマホ依存症が少なかった。ただし本調査において、対象の大半(94.6%)がスポーツやトレーニングを習慣的に続けていた。

食行動の乱れを表すTFEQスコアは、スマホ依存症群のほうが高値であり(p=0.017)、また自分のボディーイメージの不満もスマホ依存症群のほうが高かった(p=0.025)。

食行動の乱れでスマホ依存症のオッズ比が2倍以上

次に、前記の解析で統計的に有意だった因子を抽出し回帰分析を施行。その結果、スポーツやトレーニングを習慣的に続けているか否かのみ有意性が消失し、その他の因子は以下のように、スマホ依存症のオッズ比の有意な上昇が示された。

女性はOR2.49(95%CI;1.17~5.31)、習慣的飲酒OR2.01(1.01~4.06)、TFEQスコア高値OR2.17(1.04~4.58)、高収入OR2.65(1.15~6.10)、ボディーイメージへの不満OR2.66(1.07~6.64)。

著者らは、「本研究は、アスリートであってもスマホ依存症などの行動依存症が発生するリスクがあることを指摘するという点で、意義のあるものと言える。スマホ依存症の有病率は27.7%で、そのリスクは、女性、高所得、習慣的飲酒、否定的なボディーイメージ、問題のある摂食行動と関連していた」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Smartphone Addiction and Related Factors among Athletes」。〔Behav Sci (Basel). 2024 Apr 18;14(4):341〕
原文はこちら(MDPI)

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