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低GI食・高GI食・低炭水化物/高脂肪食をアスリートで比較し、基質代謝・グリコーゲン・パフォーマンスの変化を調査

男性アスリートを対象に、自由行動下で低GI食、高GI食、低炭水化物/高脂肪食という三つの食事バターンにした場合に、持久力パフォーマンスやエネルギー基質、グリコーゲン貯蔵にどのような影響が現れるのかを、無作為化比較試験で検討した研究結果を紹介する。オーストリアで行われた、介入期間10週間の無作為化非盲検比較対照試験の報告。

3種類の食事パターンで、アスリートの基質代謝、グリコーゲン、パフォーマンスはどう変わる?

脂質摂取を増やすのと低GI食とで、脂質の利用はどう異なる?

持久系スポーツのパフォーマンスにとって炭水化物が重要であると、長年認識されてきている。ただし、筋肉や肝臓のグリコーゲンが蓄えているエネルギー量は1,500~2,000kcal程度に限られているため、競技時間が長時間に及ぶ場合、後半でスタミナ切れが生じる。その対策の一つとして近年、エネルギー基質としての脂質の利用を増やすという試みが行われている。

例えば低炭水化物/高脂肪食(low carbohydrate high fat;LCHF)によって、脂質の酸化が増大することが知られている。しかし、それによって確かに脂質の利用は増えるものの、VO2maxへの効果はわずか、または全くみられないという報告がある。さらに、LCHFにすることでグリコーゲン貯蔵が減少し、糖質が必要とされる高強度負荷がかかるシーンでのパフォーマンスが低下してしまう可能性も考えられる。

一方、脂質の摂取量は変えずに、炭水化物をグリセミックインデックス(GI)値の低いものとするという戦略は、インスリンレベルの抑制を介して脂質利用の低下を防ぎ、パフォーマンスに好ましい影響を与える可能性を示唆する研究報告がある。また、低GI食(LOW-GI)は、LCHFよりも忍容性が高くて継続しやすいという実際的な長所もある。

これらの知見を背景として、今回取り上げる研究では、LCHF、LOW-GI、および高GI食(HIGT-GI)という3種類の食事パターンが、アスリートのエネルギー基質やパフォーマンスに及ぼす影響の差異の検討が行われた。

食事パターンを3群に分け、自由行動下で10週間の介入

研究参加者は、ウィーン大学、ウィーン医科大学でのチラシ配布、ソーシャルメディアなどを通じて募集された18~40歳の男性で、トレーニングを週に2~3回以上行っている持久系アスリート。除外基準は、プロレベルのアスリート、慢性疾患罹患者、結果に影響を及ぼし得るサプリメント等の利用者など。121人がスクリーニングされ、87人が参加登録された。

3群の割り付けと介入中のコンプライアンス評価、トレーニングについて

参加者は無作為に29人ずつ、以下の3群に群分けされた。

低GI食(LOW-GI)群

摂取エネルギー量の50〜60%を炭水化物とし、その65%以上をGI値50未満の低GI食品とする

高GI食(HIGT-GI)群

摂取エネルギー量の50〜60%を炭水化物とし、その65%以上をGI値70超の高GI食品とする

低炭水化物/高脂肪食(LCHF)群

摂取エネルギー量の65%以上を脂質とし、炭水化物は50g/日を上限とする

この研究は自由行動下で行われ、食事も参加者が自由に摂取可能であり、上記の栄養バランスに従う限り、摂取制限は不要だった。参加者はベースライン時点で24時間思い出し法と食物摂取頻度調査票(food frequency questionnaire;FFQ)により、日常の栄養素摂取量が把握された。介入期間は10週間で、介入中は毎週、平日と休日の各1日、割り当てられた栄養素バランスに準拠していることを各自で確認した。また介入期間中に計20回の24時間思い出し法による調査を行い、管理栄養士が栄養素バランスのコンプライアンスを評価した。

一方、持久力トレーニングについては個人の乳酸閾値に基づいて負荷レベルを個別化した後、全群同じ条件(週5回のうち3回は定常状態、2回はインターバルトレーニングで、指定された心拍数ゾーンを維持)で10週間継続した。

なお、ベースライン時点において、年齢、BMI、摂取エネルギー量、主要栄養素バランス、トレーニング頻度、VO2peak(55±8mL/分/kg)に有意差はみられなかった。

低GI食は高強度パフォーマンスを損なわずに基質代謝に影響を与え得る

介入中に指示したトレーニング時間の達成率が75%に満たなかった参加者などを除外し、解析対象は各群20~24人となった。介入中の栄養評価の結果、摂取エネルギー量や栄養素バランスに、ベースラインからの有意な変化が認められた。

  • 摂取エネルギー量は、LOW-GI群で有意に減少した(-394±491kcal、p<0.001)。
  • 他の2群は有意な変化はなかった。
  • 炭水化物摂取量(%エネルギー)は、LOW-GI群は有意な変化がなく(50.2±5.5→50.5±5.4%、p=0.839)、HIGT-GI群は有意に上昇(50.2±5.9→53.5±5.6%、p=0.005)、LCHF群は有意に低下した(45.4±10.4→10.6±3.7%、p<0.001)。
  • GI値はLOW-GI群は有意に低下(62±10→41±3)、HIGT-GI群は有意に上昇(57±8→64±3)した(ともにp<0.001)。
  • BMIと体脂肪率は全群ともに有意に低下していた。

介入中のトレーニング時間については、全群ほぼ同等であり有意差がなかった。

代謝への影響

トレッドミルを用いた漸増運動負荷テストの結果、脂質酸化の上昇曲線下面積(AUC)は、LCHF群では有意に増加(1.3±2.4g/分×km/時、p<0.001)し、LOW-GI群は有意な変化がなく、HIGH-GI群は有意に減少(-1.7±1.5g/分×km/時、p<0.001)。

乳酸値のAUCは、LOW-GI群(-0.4±0.5mmol/L×km/時)とLCHF群(-0.8±0.7mmol/L×km/時)は有意に減少し(ともにp<0.001)、HIGH-GI群は有意な変化がなかった。

持久力パフォーマンスへの影響

ランニングの最大速度は、LOW-GI群(4.3±0.4→4.5±0.3m/秒、p<0.001)とHIGH-GI群(4.4±0.5→4.6±0.4m/秒、p<0.05)は有意に上昇し、LCHF群は有意な変化がなかった。

疲労困憊に至るまでの時間は、LOW-GI群では有意に延長し(1,598±199→1,698±179秒、p=0.005)、他の2群は有意な変化がなかった。

5kmタイムトライアルの記録は、全群で有意に向上した(LOW-GI群はp<0.001、他の2群はp<0.05)。

筋グリコーゲンレベルへの影響

筋グリコーゲン含有量は、HIGH-GI群で有意に増加し(97.3±18.5→144.5±39.8mmol/L、p=0.027)、他の2群は有意な変化がなかった。

これらの結果に基づき論文の結論には、「低GI食は、高強度でのパフォーマンスを損なうことなく、基質代謝に影響を与えるようであり、低炭水化物/高脂肪食または高GI食の代替となり得ることが示唆される」と記されている。

文献情報

原題のタイトルは、「Effects of a 10-Week Exercise and Nutritional Intervention with Variable Dietary Carbohydrates and Glycaemic Indices on Substrate Metabolism, Glycogen Storage, and Endurance Performance in Men: A Randomized Controlled Trial」。〔Sports Med Open. 2024 Apr 10;10(1):36〕
原文はこちら(Springer Nature)

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