日本スポーツ協会「サプリメント利用・活用コンセンサス」
1.アスリート、指導者、一般それぞれに向けたサプリ活用リーフレット、解説書、報告書を公開
公益財団法人日本スポーツ協会(Japan Sport Association;JSPO)はこのほど、「サプリメント利用・活用コンセンサス2024」を策定し、サイト内に掲載した。同協会のスポーツ医・科学委員会が令和2~5年度の事業として進めていた、「サプリメント利用・活用コンセンサスの作成」研究に基づくもので、その報告書と解説書、および解説書のエッセンスをA4用紙1枚に集約した簡易版のPDFが公開されている。それらの内容の一部を紹介する。なお、このコンセンサス策定のために実施されたアンケート調査の結果については、別の記事としてまとめた。
- アスリート、指導者、一般それぞれに向けたサプリ活用リーフレット、解説書、報告書を公開
- サプリメントの定義とは? 約3千人のサプリ利用者アンケート結果とともに解説
サプリメントとは何か?
身体活動量が多くなれば必要なエネルギーや栄養素も増加するが、食事からの摂取のみでは必要量を満たすことができない状況に陥ることがある。そのような時には、サプリメントを利用して栄養素を補充することが選択肢の一つとして考えられる。しかし、人々の「サプリメント」の認識は多様であり、その定義を明確にすることは困難。とはいえ、「サプリメントとは何か」という質問の答が不明確なままでは適切な利用に支障がある。例えば、食事・栄養の知識が不足している、あるいは誤った情報に基づきサプリメントを利用することにより、体調不良や栄養素の過剰症を引き起こす可能性があり、またアスリートの場合にはアンチ・ドーピングの観点からも注意が必要になる場合がある。
そこで、JSPOスポーツ医・科学委員会「スポーツ現場におけるサプリメントの利用状況と活用コンセンサス」プロジェクト研究班(班長:鈴木志保子〈神奈川県立保健福祉大学〉)は、サプリメント利用の実態を把握するとともにその利用がアスリートにとって適切であるかを評価するための研究を行い、その成果に基づくサプリメントの利用・活用に関するコンセンサスを作成した。そのコンセンサスでは、サプリメントを以下のように定義づけている。
「サプリメントとは、栄養素・栄養成分を直接摂取できる製品(栄養素補助サプリメントとパフォーマンスサプリメント)と、栄養素・栄養成分を強化・添加した食品(スポーツフード)である」。前者のうち、栄養素補助サプリメントは、食事から栄養素を必要量摂取できないときに栄養素を補うためのサプリメントであり、パフォーマンスサプリメントは、パフォーマンス向上のために特定の効果が期待されるサプリメントが該当する。
また、この定義には該当しないものの、サプリメントと同様の扱いが必要な製品・食品として、「植物エキス、生薬、乳酸菌、麹などは、栄養素・栄養成分ではないことから、サプリメントではないが、アンチ・ドーピングの観点から注意を必要とする製品・食品である」としている。
サプリメントの利用に注意が必要な理由
サプリメントの利用に注意が必要な理由として、アスリートのドーピングリスクもさることながら、一般生活者でも注意すべきことがある。その点について解説書では、以下のようなわかりやすい説明がなされている。
「私たちが食べている食べ物(一般食品)は、栄養素や栄養成分の集合体です。身体は、集合体を栄養素や栄養成分になるまで時間をかけて消化をして、消化された状況に応じて少しずつ吸収するメカニズムを持っています。サプリメントは、栄養素や栄養成分が消化しなくても吸収することができる、あるいは、消化しやすい状態であることから、摂取量やタイミングを間違えてしまうと、食べ物ではありえないような大量の栄養素や栄養成分が短時間に小腸に到達し、吸収を調整することができず必要以上の吸収となり、健康に問題を引き起こす可能性が出てきます。このように、身体は、食べ物を前提とした消化・吸収の機能であって、サプリメントに対応した機能を持ち合わせていません。サプリメントの利用には、注意が必要であり、安易に利用すべきでない理由を理解いただけると思います」。
エッセンスをまとめたPDFは、アスリート版、指導者版、みなさん版の3種類
解説書のエッセンスをA4用紙1枚(オモテとウラ)にまとめたPDFは、アスリート版、指導者版、みなさん版(一般生活者対象)の3種類用意されている。オモテ面はいずれも上述のサプリメントの定義とサプリメントの分類の表であり、ウラ面はそれぞれの対象に向けたアドバイス。
アドバイスの内容は、「サプリメント利用のポイント」と、「利用のための学び」で構成され、いずれも箇条書きで要点を掲げたうえで、簡潔な解説が加えられている。
例えば、アスリート向けの利用のポイントは、
- サプリメントを“お守り”のように利用しない、
- 食事の現状を把握してからサプリメントの活用を、
- パフォーマンスサプリメントの利用には手順を踏もう、
- 栄養・食事・サプリメントの知識は進化し続けている、
- サプリメントの利用には公認スポーツ栄養士・管理栄養士・栄養士の力を借りて
という5項目。
また、サプリメントをアンチ・ドーピングの観点から分類し、以下のように表形式でまとめられている(表1)。なお、コンセンサス、および解説書や報告書は、いずれも自由にダウンロード可能だ。
表1 アンチ・ドーピングの観点から分類した製品・食品
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サプリメント利用・活用コンセンサス(公益財団法人日本スポーツ協会)
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