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ジュニアアスリートの薬やサプリメント使用に対する保護者の捉え方は、ヘルスリテラシーによって異なる

国内のジュニアアスリートの保護者を対象とする横断研究の結果、子どもが処方薬や市販薬、サプリメントを服用したり、栄養ドリンクを摂取したりすることに対する考え方が、保護者のヘルスリテラシーによって異なることが明らかになった。日本大学薬学部薬学科の中島理恵氏らの研究であり、「BMC Public Health」に論文が掲載された。著者らは、保護者の考え方が子どものドーピングリスクを左右すると同時に、必要な薬の利用を回避してしまうリスクを左右する可能性もあり得るとしている。

ジュニア期のドーピングリスクは保護者の態度によって決まる?

国内の中学生の65.2%が、スポーツ関連のクラブ活動に参加していると報告されている。子どもがスポーツを行う目的はさまざまだが、保護者の子どもの将来に対する期待が関与していることも少なくない。保護者自身にスポーツの経験がある場合に、子どもに対してスポーツを勧めることが多いことも知られている。

ジュニア期の食事や疾患の予防・治療などの健康にかかわる行動は、保護者によって管理されていたり、保護者の考え方が反映されたりすることが少なくないと考えられる。例えば、保護者のヘルスリテラシーが子どもの肥満や口腔衛生状態と関連のあることが、先行研究によって示されている。

ただし、ジュニアアスリートの服薬やサプリメントまたは栄養ドリンクの摂取に対する保護者の考え方が、保護者のヘルスリテラシーと関連があるのか否かは明らかになっていない。薬のみならずサプリメントの利用でも意図しないドーピングのリスクが存在するため、ドーピング予防という観点からも、これらの関連を明らかにすることの意義は少なくない。

中島氏らは以上を背景として、国内ジュニアアスリートの保護者を対象とするWebアンケート調査による横断研究を実施した。

国内2千人のジュニアアスリートの保護者に対するWebアンケート

アンケート調査は、インターネット調査パネルの登録者の中から、国内に居住し小~高校生の子どものいる30~59歳の保護者(約20万人)を対象に、2021年3月8~9日に実施された。なお、利用した調査パネルは、日本の人口構成にあわせて、年齢、性別、居住地、婚姻状況などが調整されている。解析には先着の有効回答2,000人のデータを用いた。

アンケートの質問項目について

アンケートの主な質問項目は、回答者の特徴(年齢や性別、教育歴などを含む人口統計学的データと自身のスポーツ経験)と、子どもの特徴(人口統計学的データと行っているスポーツの種類、競技レベル)、および、保護者のヘルスリテラシー、子どもが薬やサプリメント等を服用・摂取することに対する考え方について。

ヘルスリテラシーの評価には、欧州で開発され国際的に利用されている指標(European Health Literacy Survey Questionnaire;HLS-EU)の簡易日本語版(16項目)を用いた。これは、「気になる病気の治療に関する情報を見つける」、「医師から言われたことを理解する」、「メディアから得た健康リスクの情報が信頼できるかどうかを判断する」などの16項目について、「とても簡単」、「やや簡単」、「やや難しい」、「とても難しい」、および「わからない/あてはまらない」から選択してもらい、0~50点の範囲にスコア化するもの。本研究では、25点以下をヘルスリテラシーが「低い」、26~33点を「問題がある」、33~42点を「適当」、43点以上を「高い」と判定した。

また、子どもが摂取(接種)する処方薬、市販薬、漢方薬、ワクチン、サプリメント、栄養ドリンクを、「全く摂取(接種)させたくない」、「あまり摂取(接種)させたくない」、「摂取(接種)させたい」、「積極的に摂取(接種)させたい」の4種類から選択してもらった。ヘルスリテラシー等との関連の解析に際しては、後二者を「摂取(接種)させたい」とコード化した。

ジュニアアスリートの薬剤・サプリ等の使用には保護者の考え方が反映されている

回答者と子どもの特徴

保護者の特徴

保護者は年齢が平均44.9±7.2歳、男性が48.5%で、99.1%に配偶者があり、自身のスポーツ経験については、何らかの競技会に出場経験がある人が61.8%を占めていた。出場経験がある人の競技レベルは、地域大会レベルが30.9%、県大会レベルが23.3%、全国大会レベルが7.7%だった。

子どもの人数は1人が47.1%、2人が41.3%、3人が10.3%、4人以上が1.5%だった。なお、本調査では、子どもが複数いる場合、最も競技レベルが高い子どもについて回答してもらっている。

子どもの特徴

子どもは平均12.7±3.3歳、男子が63.4%で、行っているスポーツは、サッカー22.0%、野球11.1%、テニス9.5%、バスケットボール9.5%、バレーボール6.3%、卓球4.8%、陸上4.7%、水泳4.7%など。競技レベルは、競技会出場経験なしが31.0%、地域大会レベルが43.5%、県大会レベルが20.4%、全国大会レベルが5.2%だった。

保護者のヘルスリテラシーは本人の競技レベルと有意に関連

保護者のヘルスリテラシーは平均25.4±10.2点であり、49.1%が「低い」、27.9%が「問題がある」、17.3%が「適当」、5.8%が「高い」と判定された。

性別で比較すると、男性(24.7±10.4)より女性(26.1±10.0)のほうが有意に高く(p=0.003)、教育歴の長さ(p=0.028)や、自身の過去の競技レベルの高さ(p=0.002)とも、ヘルスリテラシーの高さと関連が認められた。

自身の年齢、および、子どもの人数・性別・競技レベルとのヘルスリテラシーとの関連は非有意だった。

子どもの競技レベルも保護者の考え方と有意に関連

次に、子どもが服用・摂取(接種)する処方薬、市販薬、漢方薬、ワクチン、サプリメント、栄養ドリンクを受け取りたいとする考え方を従属変数、回答者(保護者)と子どもの特徴(前述の因子)を独立変数とした二項ロジスティック回帰分析を施行。その結果、保護者のヘルスリテラシーや子どもの競技レベルが、薬やサプリメント等に対する考え方と有意な関連のあることが明らかになった。

具体的には、保護者のヘルスリテラシーが高い場合、子どもの処方薬(OR1.025〈95%CI;1.016~1.035〉)、市販薬(OR1.012〈1.003~1.021〉)、処方漢方薬(OR1.021〈1.021~1.030〉)、市販漢方薬(OR1.012〈1.003~1.021〉)、ワクチン(OR1.025〈1.016~1.035〉)の摂取(接種)について、より積極的な考え方をもっていた。反対に栄養ドリンクの摂取については、より控えめに捉えていた(OR0.990〈0.980~1.000〉)。

一方、子どもの競技レベルが高い保護者の場合、子どもの処方薬(OR0.886〈0.791~0.992〉)の服用をより消極的に考えていた。反対にサプリメント(OR1.492〈1.330~1.673〉)や栄養ドリンク(OR1.480〈1.307~1.676〉)を子どもが摂取することについては前向きに捉えていた。この点について著者らは、子どもの競技レベルが高いほど、保護者はドーピングリスクを強く意識し、かつパフォーマンス向上につながる可能性のあるツールを積極的に探そうとするのではないか、との考察を述べている。

医療提供者による保護者へのアドバイスが重要

論文の結論は、「ジュニアアスリートの保護者のヘルスリテラシーの高さは、子どもが薬やワクチンにアクセスすることに積極的な意向をもっているが、栄養ドリンクの利用に対しては消極的だった。一方、競技レベルの高い子どもの保護者は、子どもが薬にアクセスすることには慎重である一方、サプリメントや栄養ドリンクの摂取については前向きに捉えていた」と総括されている。

なお、ドーピングは薬のみでなく、サプリメントの利用でも発生するリスクもゼロではないため、「医療提供者には、ジュニアアスリートの保護者に対して、意図せぬドーピングの危険性について認識を高めるための指導介入が求められる」と付け加えられている。またその反対に、ドーピングリスクを避けるという目的を優先して、子どもが薬を必要とする状態にあるにもかかわらず、保護者が治療薬の使用を制限するようなことのないよう、適切なアドバイスも求められるという。

文献情報

原題のタイトルは、「Is health literacy of adolescent athletes’ parents whose children belonged to sports clubs related to their children’s intention to receive medications, vaccines, supplements, and energy drinks? A cross-sectional study」。〔BMC Public Health. 2024 Jan 22;24(1):257〕
原文はこちら(Springer Nature)

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