チーズを習慣的に食べている高齢者は認知機能・身体機能ともに健康な可能性 日本人1,504人を調査
チーズの摂取が認知機能の高さと関連しているとする研究結果が報告された。地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター、桜美林大学、株式会社明治の共同研究グループによる、地域在住高齢者を対象とした疫学研究の結果であり、「Nutrients」に論文が掲載されるとともに、各機関のサイトにプレスリリースが掲載された。歩行速度が速いことや、ふくらはぎ周囲径が大きいことも、認知機能の高さと関連する重要な因子であるという。
研究の目的:地域在住日本人高齢者対象研究によるエビデンス
乳製品と認知機能の関連性を示す論文は国内外で数多く報告されている。しかし、研究の対象者、地域、測定方法に違いがあり、一貫した結果は得られていない。本研究では、特定の地域に在住する日本人高齢者を対象に調査を行うことで、チーズ摂取と認知機能の関わりを明らかにすることを目的とした。
研究の方法:MMSE23点以下に独立して関連する因子を抽出
研究の対象は、東京都板橋区在住の65歳以上の日本人高齢者男女。対面でのアンケートや機能的能力測定を行い、食品摂取や日頃の生活習慣、身体状態と認知機能の関係を評価する横断研究を実施した。
チーズ摂取と認知機能に関して欠損のないデータが取得できた1,504名について、MMSE※1スコアが23点以下を認知機能低下(lower cognitive function;LCF)として分類し、解析を進めた。ロジスティック回帰分析※2の手法を用いて、LCFと関連する因子を分析した。分析に際しては、チーズの摂取状況、年齢、身体機能、体格要因、既往歴、血圧、歯の残存本数、血液変数、尿失禁の頻度、牛乳の摂取頻度、食事多様性スコアの影響を統計的に調整した。
結果:チーズ摂取習慣のある高齢者は心身ともに健康的な可能性
- チーズ摂取者(週に1回以上チーズを摂取する人)は、チーズ非摂取者と比較して通常歩行速度が速く、歯の残存本数が多く、血中の善玉コレステロール(HDLコレステロール)が高い値を示した。
- チーズ摂取者はチーズ非摂取者より牛乳を摂取している人の割合が高く、尿失禁の頻度は低く、さらに認知機能を評価する指標であるMMSEのスコアが高い値を示した。
- チーズ摂取と認知機能に関して欠損のないデータが取得できた1,504名についてMMSEスコアが23点以下を認知機能低下(LCF)として分類したとき、LCFに該当する人は調査対象者全体の4.6%程度(69名)を占め、この集団はMMSEスコアが23点よりも高い高齢者の集団と比較してふくらはぎの周囲径が小さく、通常の歩行速度が遅く、貧血の頻度が高いことがわかった。
- ロジスティック回帰分析の結果、LCFと関連する因子として、チーズの摂取状況、年齢、通常歩行速度、ふくらはぎの周囲径が重要であることが示された(図)。
図 認知機能低下と各種因子が示す関連性
本研究の結果から、特定の地域在住の日本人高齢者において、チーズの摂取は認知機能の低さと逆相関を示すことが明らかになった。研究グループでは、「超高齢社会となった日本において、チーズ摂取による認知機能の維持の可能性を研究することで、健康寿命の延伸に寄与していきたい」としている。
プレスリリース
文献情報
原題のタイトルは、「Inverse Association between Cheese Consumption and Lower Cognitive Function in Japanese Community-Dwelling Older Adults Based on a Cross-Sectional Study」。〔Nutrients. 2023 Jul 18;15(14):3181〕
原文はこちら(MDPI)