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極寒での過酷なトレーニングで体組成や代謝はどう変化するのか フィンランド軍の男性兵士68人を調査

過酷なトレーニングで知られる兵士が冬季に屋外でサバイバルトレーニングを行った際に、体組成や代謝にどのような変化が生じ、その回復にどの程度の期間を要するのかを検討した結果が昨年報告されている。著者によると、長期間の激しいトレーニングによる代謝の変化は、スポーツ領域では研究されているが、軍事訓練でのデータは限られているという。フィンランド発の報告。

極寒での過酷なトレーニング環境で体組成や代謝はどう変化するのか フィンランド軍の男性兵士68人を調査

北極圏の冬季での屋外サバイバル訓練中に研究

軍事サバイバルトレーニングでは通常、兵士は数日間、不十分なエネルギー摂取と多大なエネルギー消費に曝される。エネルギー不足が数日間続くと、脂肪分解とタンパク質の分解が起こり糖新生は上方制御され、ホルモン調節の乱れが生じるが、軍事訓練に伴うそれらの変化は十分検討されていない。

この研究には、68人の男性兵士が参加し、北欧の国、フィンランド北部の北極圏で晩冬に実施された。小隊単位で26人と42人の2群に分け、前者は10日間のトレーニング期間の途中に回復期を設定。一方、後者は回復期なしで連続的にトレーニングする群とした。後者の人数を多く割り当てた理由は、後者では脱落が多発すると予測されたため。

回復期のある群(REC〈recovery〉群)は全員男性、連続トレーニング群(EXC〈exercise〉群)には女性が3名参加していたが、解析からは除外し男性のみを対象とした。REC群は19.7±1.2歳、BMI23.9±2.7、EXC群は19.6±0.8歳、BMI23.1±2.8だった。

10日間にわたるトレーニングを完了したのはREC群20名、EXC群25名であり、脱落者の脱落理由は主に筋骨格系のトラブルと上気道感染症だった。

トレーニングのスケジュールと内容

トレーニング期間は10日間で、最初の3日間はサバイバルの準備期であり駐屯地で行われ、食事は食堂で提供され施設内で就寝することができた。4日目からは屋外サバイバルトレーニングに移行し、EXC群は連続6日間、屋外で過ごした。一方、REC群は4~5日目は屋外でのトレーニングを行い、6~7日目は駐屯地に戻り回復にあて、8日目以降に再び屋外トレーニングを行った。

屋外の気温は最低-10.5°Cから最高5.4°Cの範囲で変化し、1日の平均気温は-4.7°Cから-0.3°Cの範囲だった。屋外では23~32kgの装備を背負い、スキーで移動。1日の移動距離は3.9~25.8kmの範囲で、平均19.3±1.7km/日だった。

トレーニング中の食事と睡眠

屋外トレーニング期間中の食事については、最初の2日用として、プロテインバー(226kcal)、クラッカー8枚(306kcal)などからなる、1食あたり平均661kcal、炭水化物88g、タンパク質27g、脂肪21gの野戦食が配られ、合計1,847kcalだった。2日後に、再度これらの野戦食が配食された。

これらの野戦食のみで不足する分は、自然環境から取得する必要があった。具体的にはトナカイの肉、サケ、ヒゲゴケ(bryoria fuscescens)を採取し手を加えて口にした。水分補給は自由だったが、雪を溶かして飲む必要があった。睡眠は屋外に設置した待避所でとった。

前述のようにREC群ではトレーニング中に2日間の回復期が設定された。回復期には駐屯地に戻り、施設内で過ごすことができ、通常の食事に加えスナック(キャンディー、飲み物、クッキー、アイスクリーム)が与えられた。また、シャワーやサウナを利用でき、睡眠は施設内でとることが可能で、ボールゲームやストレッチが行われ、さらに心理療法のセッションが設けられていた。

自己報告による睡眠時間は、屋外では1日に0.5~4時間、施設内では7~8時間だった。

評価項目と評価法

体組成の評価や採血はベースライン時点(1日目の朝)と6日目、8日目、および最終日(10日目)の朝に行った。血液検査では、食欲関連ホルモンのレプチンやグレリン、筋損傷のマーカーとしてクレアチニン、代謝関連で血糖値、遊離脂肪酸、および電解質のナトリウム、カリウムなどを測定した。

野戦食以外に摂取したものも含めて、5日目と7日目には食事日誌を記録することとし、それを基に摂取エネルギー・栄養素量を算出した。消費エネルギー量は心拍変動を基に推測した。

生理機能の回復は2日で足りるが、体重や体組成の回復はより長期間必要

食事日誌に基づくと、両群ともに屋外トレーニング中の5日目の摂取エネルギー量は、EXC群が447±245kcal、REC群は357±338kcalであり、消費エネルギー量は同順に4,4072±1,850kcal、4,978±1,540kcalと推算された。エネルギー出納は、-4,323±1,515kcal、-4,635±1,742kcalと計算された。これらの値に有意差はなかった。

REC群のみ駐屯地に戻り回復期に入った7日目の摂取エネルギー量は、EXC群が1,294±743kcal、REC群は3,003± 882kcalであり有意差が観察された(p<0.001)。消費エネルギー量は同順に5,521±1,204kcal、3,517±887kcalと推算された。エネルギー出納は、-4,222±1,815kcal、-608±1,107kcalであり有意差が観察された(p<0.001)。

体重・体組成の変化

10日間での体重の変化は、EXC群は-3.9±1.7%、REC群は-3.0±2.1%、体脂肪率は同順に-37.0±9.6%、-20.1±11.4%。EXC群の体重は6日目まで減少し、かつ、その後もベースラインより低値で推移していた。REC群は6日目まで減少し、回復期後の8日は増加、ただしその後の屋外トレーニングにより再び減少した。8日目の体重には群間に有意差がみられた(p=0.004)

なお、本研究では骨格筋障害のマーカーとしてクレアチニンを用いているが、その値に有意差はみられなかった。

食欲関連ホルモンの変化

食欲抑制作用のあるレプチンは、両群ともにトレーニング開始後、有意に低下。ただしREC群では途中の回復期後の8日目に上昇し、8日目の値は有意な群間差が観察された。一方、食欲刺激作用のあるグレリンは、EXC群で6日目以降に有意に増加したが、REC群は安定していた。このほか、血糖値、遊離脂肪酸などに、研究期間中の一部のステージで群間差がみられた。

論文では本研究で示された主要なポイントを、
(1)冬季サバイバルトレーニングは重度のエネルギー不足を引き起こし、体重と体脂肪率、レプチン、血糖値、カリウムが低下、および、遊離脂肪酸とBUNが上昇した、
(2)サバイバルトレーニング中の2日間の回復期に、一部の変化(体重、レプチン、遊離脂肪酸、BUN)が一時的にベースラインレベルに戻ったが、体重、体脂肪率、レプチンの回復は十分でなかった
――という2点にまとめている。

結論は、「冬季サバイバル軍事トレーニングに参加する兵士の身体生理機能の正常化という点では、途中で2日間の回復期間を設けるだけで十分と思われる」と総括されている。

文献情報

原題のタイトルは、「Changes in Body Composition, Energy Metabolites and Electrolytes During Winter Survival Training in Male Soldiers」。〔Front Physiol. 2022 Feb 16:13:797268〕
原文はこちら(Frontiers Media)

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