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若者の運動頻度は健康度とは正相関するが、抑うつ状態との関連はU字型 全国の12〜21歳を調査

国内の思春期から若年期成人を対象とした全国調査から、スポーツの参加頻度が高いほど、主観的健康観が高い一方、抑うつ症状との関連はU字型であり、スポーツ頻度が中程度であるときにうつリスクが最低となる可能性が示された。千葉大学大学院国際学術研究院の山口智志氏らの研究であり、「Cureus」に論文が掲載された。

若者の運動頻度は健康度とは正相関するが、抑うつ状態との関連はU字型 全国の12〜21歳を調査

若年日本人を対象とする全国調査のデータ解析

思春期の健康状態は成人後の健康に引き継がれやすく、この点は身体的健康だけでなくメンタルヘルスについても同様の傾向のあることが報告されている。その一方でスポーツへの参加が身体的な健康にプラスの作用を与え、精神的な健康のサポート効果を示唆するデータも少なくない。ただしそれらの知見の多くは海外発の研究か、国内の限られた範囲(地域や学校、病院ベース)での研究であって、日本全体での傾向は明らかにされていない。これを背景として山口氏らは、全国規模で実施されている笹川スポーツ財団の「子ども・青少年のスポーツライフ調査」のデータを用いて、スポーツ参加頻度と主観的な身体的健康観や抑うつ状態との関連を解析した。

子ども・青少年のスポーツライフ調査は同財団が2年ごとに実施している全国調査で、今回の研究では2021年調査のデータが解析された。この調査は、日本全国の市区町村を地理的面積と当該年齢(12~21歳)の人口規模に基づいて225のブロックに分け、各ブロックの人口に応じてサンプル数を決定。無作為に抽出した3,000人の参加者の自宅を調査員が訪問し、紙ベースのアンケート用紙を配布して回答協力を依頼した。調査期間は2021年6~7月で、匿名で回答を得た。

調査項目と評価法について

主な調査項目は、健康状態に関する自己評価、抑うつ症状の程度、スポーツの参加頻度、および、社会統計学的因子(年齢、性別、兄弟の数、世帯収入)と、朝食摂取状況、睡眠時間、スクリーンタイムなど。健康状態やスポーツの参加頻度の評価法は以下のとおり。

健康に対する自己評価は、「自分の健康状態をどう思うか?」という質問で把握。「とても健康」、「健康」、「あまり健康ではない」、「健康でない」の四者択一で回答を得た。抑うつ症状は患者健康度調査票(Patient Health Questionnaire;PHQ-8)で評価。PHQ-8には8項目の抑うつ症状に関連する質問があり、各質問に対して「全くない(0点)」~「ほぼ毎日(3点)」で回答してもらい、スコアが高いほど抑うつ症状が強いと判断する。本研究では10点以上を抑うつ状態と判定した。

スポーツの参加頻度は、過去1年間に行ったスポーツ活動を質問し、週7回以上(年364回以上)を「高頻度」、週7回未満3回以上(年156~363回)を「中頻度」、週3回未満0回超(年1~155回)を「低頻度」、週0回(年0回)を「不参加」として4群に分類した。なお、学校のクラブ活動等でのスポーツは参加としてカウントする一方、体育授業や運動会などはカウントせずに回答してもらった。

回答者の8割は自己評価が「健康」で、抑うつ状態と判定されたのは1割

1,663人から回答が寄せられ(回答率55%)、回答内容が不十分なものを除外し、1,658人を解析対象とした。

解析対象者の主な特徴は、年齢が中央値17歳(四分位範囲〈IQR〉14~19)、性別は男女各50%ずつであり、スポーツ参加頻度は高頻度が26%、中頻度29%、低頻度25%、不参加19%、1年間のスポーツ参加時間は中央値260分(IQR90~396)。朝食摂取頻度は、週6日以上が73%、6日未満が27%、睡眠時間は中央値7時間(IQR6.5~8)、スクリーンタイムは同5時間(4~6)。

そのほかに把握した指標として、世帯収入は500万円以上が55%、未満27%、不明18%、兄弟の有無は「あり」が83%、「なし」が17%など。

健康に対する自己評価は、「とても健康」が17%、「健康」が62%、「あまり健康ではない」は19%、「健康でない」は2%。以後の解析に際しては、前二者(79%)を「健康」、後二者(21%)を「不健康」として分類した。

PHQ-8は中央値2点(IQR0~6)であり、10点以上で抑うつ状態と判定されたのは10%だった。

スポーツ頻度との関連は、健康の自己評価と抑うつ状態とで異なるという結果

健康に対する自己評価およびPHQ-8に基づく抑うつ状態のそれぞれを目的変数、評価したすべての因子を説明変数とする多変量解析を行い、独立した関連のある因子を検討した。

スポーツ参加頻度の高さが「不健康」と独立した負の関連

まず、健康に対する自己評価の関連のある因子をみると、スポーツ参加頻度が高い場合に、自己評価が「不健康」であるオッズ比が有意に低いという結果が得られた。具体的には、スポーツ参加頻度が「不参加」の群を基準として「高頻度」の群は、「不健康」のオッズ比(OR)が0.45(95%CI;0.30~0.66)、参加頻度が「中頻度」ではOR0.46(同0.32~0.67)であり、いずれも独立した有意な負の関連因子であることが示された。なお、スポーツ参加頻度が「低頻度」の群はOR0.75ながら95%信頼区間が0.53~1.06であり非有意だった。

朝食摂取頻度の高さやスクリーンタイムが短いことも独立した関連因子

スポーツ参加頻度のほかに、朝食を週6日以上摂取していることも、自己評価が「不健康」であるオッズ比の低さと有意に関連していた(OR0.43〈0.33~0.57〉)。また、スクリーンタイムが1日2時間未満であることも、独立した有意な負の関連因子だった(OR0.54〈0.37~0.77〉)。

年齢や性別、睡眠時間、世帯収入、兄弟の有無は健康観の自己評価と有意な関連がなかった。

スポーツ参加頻度は抑うつ状態であることとU字型の関連

次に、抑うつ状態と関連する因子を検討。スポーツ参加頻度については、上記の健康度の自己評価との関連とは異なり、参加頻度が「中頻度」の場合でのみ、「不健康」であるオッズ比が有意に低いという結果が得られた。つまり、スポーツ参加頻度と抑うつ状態であることとの関連は、U字型の関連が示された。

具体的には、スポーツ参加頻度が「不参加」の群を基準として、参加頻度が「高頻度」の群は「不健康」のオッズ比(OR)が0.89(0.56~1.41)で非有意、参加頻度が「中頻度」ではOR0.52(0.31~0.87)で有意に低値、「低頻度」ではOR0.91(0.56~1.48)で非有意だった。

性別や朝食摂取頻度、スクリーンタイムも独立した関連因子

一方、上記の健康度の自己評価との関連と同様に、朝食を週6日以上摂取していること(OR0.52〈0.36~0.74〉)やスクリーンタイムが1日2時間未満であること(OR0.42〈0.25~0.71〉)は、抑うつ状態の独立した有意な負の関連因子だった。また、年齢や睡眠時間、世帯収入、兄弟の有無は抑うつ状態であることとの有意な関連がなかった。

他方、健康度の自己評価については関連の有意性が認められていなかった性別が、抑うつ状態との関連については有意な結果となり、男性は女性に比べてオッズ比が低かった(OR0.55〈0.39~0.78〉)。

メンタルヘルスへの影響を考慮し適切なスポーツ参加頻度の推奨が必要か

著者らは、本研究の限界点として、横断的解析であり因果関係の推測は制限されること、アンケート回答率が55%と高いとは言えず未回答者の特徴が不明なこと、アンケート実施期間が新型コロナウイルス感染症パンデミックという特異的な状況で行われた研究であること、および残余交絡の可能性を上げている。

そのうえで、「スポーツの参加頻度が高いことは身体的健康にプラスに働くものの、メンタルヘルスに対しては中程度の頻度が重要である可能性が考えられる」として、「課外活動等に関するガイドラインでは、適度な休息日を設けること設けることが推奨されており、これに準じて過度なスポーツ活動を避ける必要があるのではないか」と述べている。また、長すぎるスクリーンタイムを避けることや朝食を欠かさないことの重要性も強調している。

文献情報

原題のタイトルは、「Differential Associations of Sports Participation With Self-Rated Health and Depressive Symptoms Among Japanese Adolescents」。〔Cureus. 2023 Aug 19;15(8):e43776〕
原文はこちら(Cureus)

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