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英国ハイレベル水泳選手のサプリ利用状況 代表レベルの選手は平均8種類以上を利用

英国のトップクラスのスイミングクラブに所属している選手を対象に、サプリメントの利用状況を調査した結果が報告された。対象の98%と、ほぼ全員がサプリを利用していて、代表レベルの選手はより多種類のサプリを摂取していることなどが明らかにされている。

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水泳選手のサプリ摂取の特徴と傾向

アスリートのサプリの使用は一般的に、年齢と競技レベルに応じて増える傾向のあることが知られている。ただ、どのようなサプリが好まれるか、どの程度の量を摂取しているかという傾向は、それぞれの競技や国の文化、歴史的背景の影響も受けて差が生じているいると考えられる。

オリンピックレベルの選手に限ると、水泳選手はサプリ利用率が高いことが報告されている。1996年のアトランタ五輪の時点で水泳選手のサプリ利用率は56%とされていたものが、2000年のシドニー大会では69%に増加。その後、世界水泳選手権などで実施された調査では、97~99%という数値も示されている。

このようなハイレベルアスリートでのサプリ利用拡大と軌を一にして、アスリート全体でサプリの利用が増えており、さらにサプリに関する不正確な情報が主としてインターネットを介して拡散されやすい状況が生まれた。ハイレベルのアスリートの中にも、有資格のスポーツ栄養士ではなく、それらのネット情報に基づきサプリを摂取している選手も少なくないという指摘もみられる。

不正確な情報に基づくサプリ摂取では、意図しないドーピング規則違反を犯してしまうリスクや、より効果的なサプリがあるにもかかわらずそれを摂取せずにいる、または全く有効とは考えられないサプリを摂取しているといったことが生じる。アスリートのサプリ使用の実態を把握し、その実態に即した指導介入によって、サプリの安全性と有効性をより高めることができると考えられる。

地域レベルから国際レベルの水泳選手に面接調査

この研究は、英国内のトップレベルのスイミングクラブに所属する44人の選手を対象に実施された。選手は年齢・競技レベルにより三つのカテゴリーに分類された。

一つ目のカテゴリーは、11~14歳の育成段階にあたる20人で全員が地域レベルの大会に参加しており、10人は同一年齢の英国内トップ10に入っていた(以下、「育成群」)。二つ目のカテゴリーは13~17歳の若年層13人で、国内大会への出場を争うレベルで活動している群(以下、「若年群」)。三つ目は16歳以上で国内大会には毎回出場している11人で、国内メダリストや国際大会の出場経験もある選手が複数含まれている(以下、「代表群」)。

調査における主な質問は以下の5項目。1.どのようなサプリを摂取するか、2.なぜそれらを摂取するのか、3.サプリに関する情報源、4.摂取頻度、5.購入方法。なお、調査手法は、この種の研究で多用されるオンラインアンケートではなく、面接調査により行われた。著者によると、面接調査のメリットとして、回答が不明確な場合にその場で確認し明確な回答を得られる、思春期前という低年齢の選手からも正確な回答を得やすい、摂取しているサプリの種類や量を正確に把握できるという点が挙げられるとのことだ。

ほぼ全員が何らかのサプリを利用

44人のうち、サプリを1種類も摂取していなかったのは1人のみで、利用率は98%だった。

代表レベルの水泳選手は平均8種類以上のサプリを利用

摂取しているサプリの種類は全体平均が5.2±2.9種類だった。これを前記の三つのカテゴリーで比較すると、代表群は8.1±3.4と最多であり、育成群の3.9±1.7や若年群の4.8±2.0との間に有意差が存在した。育成群と若年群の比較では有意差がなかった。また、性別で比較すると、男性は5.9±2.7で女性の4.6±2.9より利用しているサプリの種類が多かった。

サプリのタイプを先行研究(DOI: 10.1123/ijsnem.2017-0429)に基づき以下の3タイプに分類すると、1.エネルギー源となり得るサプリ(ブドウ糖/マルトデキストリン、プロテイン、スポーツ・ドリンク・バー・ジェルなど)が最も多く2.5±1.0種類摂取されており、次いで、2.微量栄養素や健康に資する可能性のあるサプリ(ビタミン、ミネラル、ショウガなど)が1.8±1.6で、3.スポーツパフォーマンスにかかわるエルゴジェニックサプリ(カフェイン、クレアチン、β-アラニン、重炭酸ナトリウム、ビート果汁など)は0.8±1.4だった。

摂取の目的がわからずに摂取している選手が2割弱

サプリ摂取の理由は選手カテゴリーによる大きな差はみられず、「パフォーマンス」(34±7%)と「回復」(19±7%)が最大の動機となっていた。性別で比較すると、「筋肉増大」を挙げた割合が男子選手で多く、女子選手では「パフォーマンス」の割合が高いという差がみられた。

なお、全体の18±5%のアスリートは、「なぜそのサプリを利用しているのかわからない」と回答した。

育成段階でのサプリ利用に関するスポーツ栄養士の関与は0%

サプリに関する情報源は、全体では42%が親・保護者が最も多く、続いてスポーツ栄養士が33%、水泳のコーチが6%であり、そのほかに医師、水泳以外のコーチ、メディア、自分自身の調査などの回答があった。

選手カテゴリー別にみた場合、代表群ではスポーツ栄養士が51%と過半数を占め、親・保護者が16%、水泳コーチが12%だった。それに対して育成群でのスポーツ栄養士との回答は0%であり、親・保護者の74%とメディアの8%で大半を占めていた。若年群はそれら両者の中間で、スポーツ栄養士が50%、親・保護者が40%だった。

サプリの購入経路については、代表群ではオンラインや専門店で購入する割合が多く、また、スポーツ栄養士を介して購入している選手もみられた。対して育成群の大半の選手は食料品店で購入していた。

文献情報

原題のタイトルは、「Nutritional Supplement Use in a UK High-Performance Swimming Club」。〔Nutrients. 2023 Jul 26;15(15):3306〕
原文はこちら(MDPI)

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