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退部のピークは1年生の終盤、理由は怪我や競技レベルなど スポーツ強豪校の男子生徒が部活をやめた状況を調査

体重やBMIが低いことや、競技戦績がふるわないことなどが、高校の運動部からの早期離脱に関連していることが明らかになった。公益財団法人明治安田厚生事業団が日本体育大学と共同で実施した2年以上の追跡調査の結果であり、「Frontiers in Sports and Active Living, section Sport Psychology」に論文が掲載されるとともに、同事業団のサイトにプレスリリースが掲載された。

退部のピークは1年生の終盤、理由は怪我や競技レベルなど スポーツ強豪校の男子生徒が部活をやめた状況を調査

研究の概要

わが国では、子どもたちのスポーツ実践の場として学校の運動部が重要な役割を担っている。しかし、運動部に入部しても途中で辞めてしまう「早期離脱」、すなわち退部の問題が指摘されている。欧米諸国では早期離脱の要因の研究がなされているが、日本国内からの知見は十分でない。そこで研究グループでは、国内の男子高校生331名を対象に2年5カ月の追跡調査を実施し、運動部からの早期離脱の関連要因を検討した。

その結果、体重やBMIが低い、怪我や障害(スポーツ障害など)の経験がない、競技戦績が低い、またはない、競技継続期間が短いなどの特徴が、運動部からの早期離脱と関連することがわかった。研究者によると、競技レベルとつながりが強いと考えられる要因が多く挙げられたことが着目すべき点だという。また、わが国の運動部は特有の文化を有するために、早期離脱の関連要因も他国とは異なっている可能性があり、本知見は退部しやすい生徒の特徴が存在することを理解し、その予防策や退部後のサポートを講じることの重要性を示すものだとしている。

研究の背景:運動部退部の関連因子が国内でほとんど研究されていない

青年期のスポーツ参加は心身の健康や発達への好影響が期待されていて、わが国では学校の運動部が、スポーツの場として重要な役割を担っている。しかし、運動部をはじめとするスポーツ組織では途中で辞めてしまう「早期離脱」が生じることが指摘されており、欧米諸国では早期離脱の関連要因の検討が多く行われてきた。

一方、わが国の運動部活動は教育的活動として位置付けられていることや、学校生活を通じて一つの部に所属し続けることが望ましいという規範があるといった、特有の文化が根付いている。そのため、欧米諸国における先行研究の知見が、わが国の運動部活動には当てはまらない可能性がある。さらに、日本の運動部を対象とした早期離脱の追跡研究は、心理的側面に着目した1件のみしか見当たらない。

そこで本研究では、運動部からの早期離脱の関連要因を明らかにすることを目的として、国内の男子高校生を対象に2年5カ月の追跡調査を実施した。

研究内容と成果:部員の15%が早期離脱。その関連因子は…

本研究では、日本国内の私立男子高校に通う1年生全員のうち、運動部への所属者331名を対象に追跡研究を行った。ベースライン調査は2017年5月、追跡調査は2019年10月に実施。2年生の終わりまでの退部を「早期離脱」と定義した。

早期離脱の関連要因の候補項目は、先行研究を参考に、生物学的、個人内、個人間、組織的要因を設定した。これらの候補項目と早期離脱の関連性について、単変量ロジスティック回帰分析にて検討した。

追跡期間に早期離脱した生徒は41名(追跡情報に欠損がなかった者のうち15.0%)で、1年次で19名、2年次で22名が退部していた(図1)。

図1 早期離脱の状況 2年生の終わりまでの退部

早期離脱の状況 2年生の終わりまでの退部

(出典:明治安田厚生事業団)

関連要因の分析から、体重やBMIの値が低い、怪我や障害(スポーツ障害など)の経験がない、競技戦績が低い/ない、競技継続期間が短いといった特徴が早期離脱と関連するという結果が明らかになった(図2)。

図2 早期離脱の関連要因

早期離脱の関連要因

(出典:明治安田厚生事業団)

競技レベルとつながりが強いと考えられる要因が多く挙げられたことが着目すべき点と言え、競技レベルが低いことで、活動の継続意欲が揺らぐ経験をしやすい可能性が考えられる。このことを踏まえると、さまざまな競技レベルの生徒が参加する運動部活動では、部員同士の比較ではなく、部員一人ひとりの技能の発揮や向上を重視する雰囲気を作っていくことが早期離脱予防の観点から重要と考えられる。

筆頭著者のコメント

論文の筆頭著者である同事業団の神藤隆志氏は、プレスリリースの中で以下のように述べている。

「本研究では、男子高校生における運動部の早期離脱の関連要因を明らかにした。しかし、本研究の対象校はスポーツ強豪校であったため、他の学校や運動部においても本知見が当てはまるかという点について、今後の検討が必要。現在、地域連携や地域移行をはじめとする運動部活動改革が進められている。これに伴い、従来の『学校生活を通じて一つの運動部での活動を最後までやり遂げるのが望ましい』というような規範も変化していくことが予想され、退部や引退の捉え方も変わっていく可能性がある。これらの改革に伴う運動部活動の変化をみながら、青年期のスポーツ参加を後押しする知見の蓄積と発信に取り組んでいきたい」。

プレスリリース

男子高校生の学校運動部退部に関連する要因とは?―2年5ヵ月の追跡調査に基づく国内初の知見―(明治安田厚生事業団)

文献情報

原題のタイトルは、「 Correlates of Early Attrition from School Sports Clubs in Male Senior High School Students: A 2.4-year Follow-up Study」。〔Front Sports Act Living. 2023 Aug 16:5:1203113〕
原文はこちら(Frontiers Media)

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