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20年以上にわたって身体活動ガイドラインを遵守した高齢者の特徴とは? メタ解析

身体活動が健康の維持・向上につながることは、膨大な研究報告によって裏付けられている。ただし、評価対象期間が20年以上あり、かつ高齢者を対象とした研究となると、非常に少なくなる。それらの貴重な研究報告をシステマティックレビューにより抽出し、メタ解析を行った結果が報告された。体組成や筋力などに対する有用性が確認された一方、筋力トレーニングを推奨レベル以上に行っても心肺機能に対しては、上乗せの効果はみられないという。

20年以上にわたって身体活動ガイドラインの推奨を遵守した高齢者の特徴とは? メタ解析

健康のための運動は継続が大切。では、20年以上続けた場合の効果は?

健康のために身体活動が有用であることは言うまでもない。ただし、身体活動の健康への影響を検討した介入研究は、介入期間が数週間か数カ月であることが多く、観察研究であっても数年単位のことが多い。しかし、ヒトの寿命は世界の多くの国で年々延伸しており、人生の中のわずか数年間の身体活動と健康指標の関連ではなく、より長期間にわたって活動的な生活を続けた場合に、高齢期以降の健康関連指標に対してどのような影響が現れるのかを理解する必要性が高まっている。

このような背景のもと、今回紹介する論文の研究では、システマティックレビューにより、活動的な生活を20年以上続けてきた高齢者を対象とする研究を抽出して、有酸素パフォーマンスや筋力、体組成などが比較対照群と、どの程度の差が生じているか検討された。

文献検索について

システマティックレビューは、PRISMAガイドラインに準拠して行われた。20年以上にわたり推奨される身体活動を継続してきた65歳以上の高齢者を対象に、体組成などの指標が評価されており、全文を入手可能な英語で執筆された原著論文を検索。身体活動量の推奨は、米国医師会、米国スポーツ医学会の推奨する、1週間につき150分以上の中~高強度運動または75分以上の高強度運動と定義。なお、運動強度については、論文に記載がある場合は参考にしたが、解析のパラメーターには含めなかった。報告年は制限しなかった。

CINAHL、Embase、Medline、SPORTDiscus、Web of Scienceを用いて2022年3月20日に検索を実施。2,680報がヒットし、ハンドサーチにより31報を追加。重複削除、タイトルと要約によるスクリーニングで83報に絞り込み全文精査を行い、最終的に10件の研究の報告が適格基準を満たすものとして特定された。日本からの報告も1件含まれている。

抽出された研究の特徴

10件の研究の参加者は合計265人(男性229人、女性27人、性別不明9人)であり、10件すべて、20年以上の長期間にわたり有酸素運動(9件)、またはレジスタンス運動(7件)を行った高齢者群が設定されていた。2件の研究は20年以上(20~33年)の観察期間の前後のデータが示されていた。他の8件は、20年以上のトレーニングを行った状態で収集されたデータが示されていた。

有酸素運動の種類としては、ランニング、水泳、サイクリング、ウォーキング、クロスカントリースキー、陸上競技、オリエンテーリングなどが行われており、週平均2.8~10.0時間であって、ガイドラインの推奨(2.5時間/週)を上回っていた。レジスタンス運動としては、週に平均2~3回のセッションが行われており、これもガイドラインの推奨を満たしていた。

体組成やVO2maxに対する有意な影響が示される

体組成は、体脂肪率、BMI、皮下脂肪厚などで評価されていた。身体活動の推奨を20年以上遵守した高齢者は体脂肪率が12.1~22%、対照群は18~31%、BMIは同順に23~25.5 vs 26であり、ともに低値だった。ただし、除脂肪体重も51~60 vs 52~63.7kgと、わずかではあるが推奨遵守群の方が低値だった(後述のようにメタ解析では有意差なし)。

心肺機能は10件の研究で報告されていた。そのうち9件は、推奨遵守群のVO2maxのほうが高いことを報告していた。また、20年以上の観察期間の前後のデータからは、遵守群ではVO2maxの低下が-8.9~-13.4mL/kg/分であるのに対して、対照群は-23.0mL/kg/分であり、身体活動継続によって加齢に伴う心肺機能低下が抑制されていることが示された。

筋力については、筋力トレーニングを継続して行っていた高齢者は、膝伸展筋力が高いことが示されていた。ただし上肢の筋力に関しては結果に一貫性がみられなかった。

メタ解析の結果

体脂肪率に関して、評価指標の一致する4件の研究報告を対象とするメタ解析が行われた。4件ともに、身体活動の推奨を20年以上にわたり遵守した高齢者のほうが低値であると報告しており、平均差(mean differences;MD)は-5.41%(95%CI;-7.65~-3.17)だった。

VO2maxに関しては5件の研究報告を対象とするメタ解析が行われた。5件中1件のみ、群間差が非有意と報告し、他の4件はいずれも、身体活動の推奨を20年以上遵守した高齢者のほうが高値であるとしていた。平均差(MD)は11.364mL/kg/分(95%CI;5.63~17.09)だった。

除脂肪体重に関しては2件の研究報告を対象とするメタ解析が行われた。2件ともに群間差は非有意と報告しており、MDも-2.03kg(95%CI;-4.99~0.93)と非有意だった。

以上に基づき著者らは、「米国スポーツ医学会が推奨する毎週のトレーニング量を満たす身体活動を、長期間にわたって行ってきた高齢者では、心肺機能が高く維持され、死亡リスクや心代謝疾患のリスクが低下していることが示唆される」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Older Adult Aerobic Capacity, Muscular Strength, Fitness and Body Composition After 20+ Years of Exercise Training: A Systematic Review and Meta-Analysis」。〔Int J Exerc Sci. 2023 May 1;16(3):620-637〕
原文はこちら(Western Kentucky University)

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