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大豆タンパク質サプリの有用性を検証 アスリートや活動的な人を対象とする研究の系統的レビュー

大豆タンパク質サプリメントによる代謝や筋力、パフォーマンスなどへの影響を、システマティックレビューにより検討した結果が報告された。レビューの対象を、アスリートや身体活動が活発な個人に対して行われた無作為化比較試験の報告に絞り込んである点が特徴の報告。

大豆タンパク質サプリの有用性を検証 アスリートや活動的な人を対象とする研究の系統的レビュー

植物性タンパク質への関心の高まり

近年、タンパク質の供給源として、動物性食品から植物性食品に関心が移る傾向が生じている。その背景には、地球環境や社会の持続可能性、倫理的配慮、血清脂質への影響といった健康上のメリットなどが挙げられる。ただ、アミノ酸スコアで評価した場合、植物性タンパク質は一般的に動物性タンパク質に劣るものが多い。また、消化吸収率という点でも、動物性タンパク質が90%以上とされるのに対して、植物性タンパク質は75~80%とのデータがある。

そんな中、大豆タンパク質に関しては植物性であるにもかかわらずアミノ酸スコアが高く、消化吸収率も95%と報告されている。このような特徴に着目し、大豆タンパク質の可能性が多くの研究で検討され、システマティックレビューやメタ解析も既に行われている。ただし本論文のイントロダクションに述べられているところによると、それらの研究の多くは、対象をアスリートに限定したものではないとのことだ。これを背景として本論文の著者らは、アスリートや身体活動が活発な個人を対象に行われた研究に絞り込み、システマティックレビューを実施した。

文献検索の手順について

文献検索は、2022年9月16日に、PubMed、Embase、Web of Scienceという三つのデータベースを用いて、PRISMAに即して行われた。また、Google ScholarとEBSCOを用いたハンドサーチも行った。包括基準は、健康で活動的な生活スタイルの人を対象として、大豆タンパク質による介入を行い、筋肉量や筋力、内分泌代謝マーカーなどを評価した無作為化比較試験であり、査読システムのあるジャーナルに英語で公開されている文献。除外基準は、非臨床試験(基礎実験)、対象が非活動的な(少なくとも1日1時間、週3日以上の運動を行っていない)個人や疾患有病者の試験、および40歳以上(40歳を超えると、筋骨格系・代謝内分泌系の変化、身体活動に対する反応の変化が生じるため)、全文が公開されていない論文、レビュー、論説など、および英語以外で執筆されている論文。

一次検索で843報がヒットし、重複除外後186報を2人の研究者が独立してタイトルと要約に基づきスクリーニングを実施。必要に応じて3人目の研究者が加わり採否を検討。38報について全文精査が行われ、最終的に19件の研究の報告を適格と判断した。なお、研究デザインのばらつきが大きいとの理由で、メタ解析は行われていない。

抗酸化能などの点で動物性タンパク質より優れている可能性

特定された論文のうち、9件は大豆タンバク質の筋肉への影響を検討していた。そのほかには、内分泌系への影響、スポーツパフォーマンスへの影響、抗酸化能への影響を、それぞれ6件の研究が検討していた(一部は複数のテーマについて検討)。

論文では冒頭に「キーポイント」として結果を概括している。ここでは、そのキーポイントを示したうえで、スポーツパフォーマンスに関する各論の一部を紹介する。

システマティックレビューのキーポイント

  • 大豆タンパク質は、動物由来のタンパク質には含まれていない可能性のある栄養素(イソフラボンなど)が豊富な、持続可能な植物由来のタンパク質である。しかし、大豆タンパク質の必須アミノ酸含有量は、ホエイプロテインなどの動物由来のタンパク質よりも低い。したがって、大豆タンパク質摂取の有効性を総合的、かつ批判的に評価する必要がある。
  • 大豆タンパク質サプリメントは、少なくとも若年集団において1.6g/kg/日以上を摂取した場合に、筋肉量と筋力の増大という点でホエイプロテインの効果的な代替品となる可能性がある。ただし、これは限られた数の研究に基づく知見である。
  • 大豆タンパク質サプリは、酸化ストレスを抑制するという点において、ホエイプロテインサプリメントと比較し、有望な抗酸化効果を示している。
  • 大豆タンパク質サプリのアナボリック(同化)ホルモンに対する影響は明らかではなく、さらなる研究が必要とされる。
  • 大豆タンパク質サプリは、運動パフォーマンス、とくに筋肉のダメージが大きい激しい運動に関連するパフォーマンスを向上させ得る。

スポーツパフォーマンスへの影響

大豆タンパク質摂取のスポーツパフォーマンスへの影響については、6件の研究報告が包括基準を満たしていた。大豆タンパク質サプリ摂取量は、10~53.3g/日の範囲に分布しており、介入期間は1~6週間、または単回のボーラス投与だった。

1件の研究では、分離された乳清タンパク質(whey protein isolate;WPI)、およびプラセボ(マルトデキストリン)との比較が行われており、1.5g/kg/日、10日間の摂取で、両群ともに対照群(プラセボ群)に比し、30mスプリント、カウンタームーブメントジャンプなどのパフォーマンス指標が優れていたと報告されている。

高度なトレーニングを行っているボクサーとロードサイクリストを対象とした研究では、大豆タンパク質サプリを4週間摂取すると、筋肉のダメージと筋力の低下が抑制されることが示されていた。ジュニア柔道家を対象とした研究でも、有酸素パフォーマンスの向上(VO2の上昇)が報告されている。

結論としては、「大豆タンパク質サプリを従来のプロテインサプリの代わりとして、アスリートや活動的な個人に推奨することは可能である。大豆タンパク質サプリは、他のタンパク質源と比較して、除脂肪体重を増加させ、酸化ストレスを軽減する可能性がある」とまとめられている。

文献情報

原題のタイトルは、「Effect of Soy Protein Supplementation on Muscle Adaptations, Metabolic and Antioxidant Status, Hormonal Response, and Exercise Performance of Active Individuals and Athletes: A Systematic Review of Randomised Controlled Trials」。〔Sports Med. 2023 Aug 21〕
原文はこちら(Springer Nature)

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