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未就学児の過体重や肥満リスクに対する食事の質、座位行動、歩数の相乗効果 欧州6カ国の研究

未就学児の過体重や肥満のリスクに対する食事の質や座位行動、歩数の相乗的な影響を、横断的および縦断的に検討した結果が、欧州6カ国の子どもたちを対象とする研究から報告された。食事の質が高くても、座位行動が多く歩数が少ない幼児は、約1年経過後に、過体重や肥満となっているリスクが高いことなどが明らかにされている。

未就学児の過体重や肥満リスクに対する食事の質、座位行動、歩数の相乗効果 欧州6カ国の研究

小児肥満は成人肥満のリスク

過体重や肥満は世界的に増加しており、今後も増加が見込まれている。これは成人だけでなく、子どもたちの間にも同様の傾向があり、欧州では未就学児の7.9%、学齢期では3人に1人が過体重/肥満に該当するという。小児期の肥満は成人期に引き継がれやすいことから、小児肥満を解消または予防することが、成人後の肥満や肥満に伴う生活習慣関連疾患の抑止につながる。肥満に結びつく食生活や身体活動の少なさといった習慣は小児期に確立されてしまい、成人後には修正が困難になることも、早期介入が重要とされる理由。

肥満は多因子疾患であり、遺伝的背景、個人の習慣、社会環境などによってリスクが異なる。これらのリスク因子について、成人では多くの研究がなされており、小児についても学齢期では比較的多くの知見が蓄積されてきている。それに対して未就学児の食事の質や身体活動量と肥満リスクとの関連については、まだ不明点が少なくない。今回紹介する研究では、「ToyBox-study(おもちゃ箱研究)」と名付けられた、未就学児の肥満予防のためのクラスター無作為化比較試験のデータを用いて、リスク因子が検討された。

6カ国の未就学児700人を横断的・縦断的に解析

ToyBox研究は、ベルギー、ブルガリア、ドイツ、ギリシャ、ポーランド、スペインという6カ国で実施された縦断研究。今回報告された研究では、ToyBox参加者のうち、解析に必要なデータに欠落のない718人の未就学児が対象とされた。

過体重や肥満の判定には、既報研究を基に年齢と性別ごとに設定されているBMIのカットオフ値を用いて判定した。過体重/肥満との関連が評価された因子は、食事の質、身体活動量、スクリーンタイムの三つ。

これらのうち食事の質は、精度検証済みの37項目からなる半定量的な食物摂取頻度調査票(food frequency questionnaire;FFQ)に基づきスコア化した指標(diet quality index;DQI)で評価。身体活動量は、活動量計を身に着けて週末の2日間を含む連続6日間生活してもらい、歩数をカウントし評価した。スクリーンタイムは保護者へのアンケートによって把握した。

ベースライン時データ、および1年後の追跡調査時のデータそれぞれの横断的な解析とともに、それら両者のデータを用いた縦断的な解析を行った。

ベースライン時と追跡調査時の特徴と変化

ベースライン時の特徴

ベースライン時点の年齢は4.74±0.4歳で男児が51.4%、1日の歩数は91.4%が1万1,500歩未満、スクリーンタイムは70.6%が1時間以上、食事の質(DQIスコア)は75.8%が35点以下だった。BMIカテゴリーは、普通体重が85.2%、過体重が11.6%、肥満が2.5%だった。

なお、各指標のカットオフ値は、歩数(1万1,500歩以上)については既報研究、スクリーンタイム(1時間未満)については世界保健機関(World Health Organization;WHO)の推奨、DQIスコアについては第3四分位(上位25%が該当)に基づき設定されている。

追跡調査時の特徴

追跡調査は約1年後に実施され、年齢は5.71±0.3歳となっていた。1日の歩数が1万1,500歩未満の割合は95.0%に増え(p=0.004)、スクリーンタイムが1時間以上の割合も72.3%に増えていた(p=0.037)。DQIスコアが35点以下の割合は77.2%であり、わずかに増加していたものの有意ではなかった(p=0.480)。

BMIカテゴリーは、普通体重が85.7%、過体重が10.1%、肥満が3.6%であり、分布に有意差が生じていた(p<0.001)。

過体重/肥満リスクの横断的解析

ベースラインデータの解析

ベースライン時点で、すべての指標(歩数、スクリーンタイム、食事の質〈DQIスコア〉の三つ)が良好と判断された群(5.4%)を基準として、その他の群の過体重/肥満のリスクを検討。

その結果、三つの指標すべてが不良だった群(47.4%)はOR2.03(95%CI;1.034~3.616)であり、有意なオッズ比上昇が認められた。反対に、歩数のみが推奨を満たしていた群(3.6%)はOR0.401(0.134~0.898)、スクリーンタイムのみが推奨を満たしていなかった群(3.1%)はOR0.946(0.345~0.989)であり、オッズ比が有意に低かった。ただし両者ともに該当者数が少なく信頼区間の幅が大きかった。

追跡調査データの解析

次に、追跡調査時点で、三つの指標すべてが良好と判断された群(3.5%)を基準として、その他の群の過体重/肥満のリスクを検討。その結果、三つの指標すべてが不良だった群(50.7%)はOR1.062(1.010~2.221)、DQIスコアのみ推奨を満たす群(16.4%)はOR2.483(1.085~2.186)、スクリーンタイムのみ推奨を満たす群(17.1%)はOR1.496(1.211~3.323)であり、有意なオッズ比上昇が認められた。

有意なオッズ比低下が観察された群はなかった。

過体重/肥満リスクの縦断的解析

続いて、ベースライン時と追跡調査時ともに三つの指標すべてが良好と判断された群(4.6%)を基準として、その他の群の追跡調査時点での過体重/肥満のリスクを検討。

その結果、両方の時点で三つの指標すべてが不良だった群(54.2%)はOR1.766(1.104~2.562)、DQIスコアのみ推奨を満たす群(16.0%)はOR2.515(1.171~3.021)であり、有意なオッズ比上昇が認められた。反対に、両方の時点で歩数のみが推奨を満たしていた群(4.9%)はOR0.767(0.017~0.956)であり、オッズ比が有意に低かった。ただし、該当者数が少なく信頼区間の幅が比較的大きかった。

著者らは、「未就学児の過体重/肥満リスクを抑制するには、家族が子どもの座位行動を減らして身体活動量を増やすように働きかけることが重要だ」と結論づけるとともに、「欧州の未就学児では、身体活動量が少なく食事の質が低い子どもの割合が非常に高いことも」示されたと述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Longitudinal associations between diet quality, sedentary behaviours and physical activity and risk of overweight and obesity in preschool children: The ToyBox-study」。〔Pediatr Obes. 2023 Oct;18(10):e13068〕
原文はこちら(John Wiley & Sons)

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