アスリートの摂食障害のリスク 成人・未成年、競技種別、ボティイメージなどで異なる結果
アスリートの摂食障害のリスクを、年齢や競技カテゴリー、トレーニング歴、競技レベル、ボディイメージと関連づけて検討した研究結果が発表された。19歳以上のアスリートでは、摂食障害リスクと関連のある因子は特定されなかったが、18歳以下では、競技カテゴリーやボディイメージがリスクと有意に関連していたという。ポーランドからの報告。
未成年の摂食障害のリスクは成人とは異なる可能性
アスリートの摂食障害リスクの高さは多くの研究で明らかになっており、一般的には女性、審美的スポーツでその有病率が高いと報告されている。今回紹介する論文の結果も全体としてはそのエビデンスをより強固にするものの一つではあるが、特徴として、年齢で層別化したうえでリスクと関連を検討していること、および、審議系でない体重がパフォーマンスに影響し得るスポーツでリスクが高いことが示されたことなどが挙げられる。著者らによると、幼少期からスポーツを行っているアスリートの場合は、摂食にかかわる問題の多くが幼少期に始まり、十代には成人期にみられない発達のプロセスを経ることから、摂食障害の実態調査も成人と分けて調べる必要があるとのことだ。
研究参加者の特徴と競技カテゴリー分類
この研究の対象は、ポーランド国内の40のスポーツ団体に連絡をとり、研究協力を依頼し、了解を得られたクラブに在籍するアスリート。競技レベルは、32.2%が国内レベル、67.8%が国際レベルだった。
行っている競技は、既報研究に基づき以下の3群に分類した。審美的競技(アーティスティックスイミング、体操、ダンスなど)が23.1%。体重や持久力が重視されるが審美的要素のない球技以外の競技(陸上、水泳、空手、テコンドーなど)が21.9%、および、その他の球技(サッカー、バレーボール、バスケットボール、ラグビーなど)。
また、この研究では、18歳以下の82人と19歳以上の159人に二分して検討している。ここでは前者を未成年アスリート、後者を成人アスリートとする。各群のおもな特徴は以下のとおり。未成年アスリート、成人アスリートの順に、年齢15.7±1.58、23.2±3.10歳、身長164.8±13.04、169.9±7.83cm、体重54.0±14.14、61.8±8.81kg、トレーニング歴5.8±2.31、10.5±4.67年。
摂食障害リスクとボディイメージの評価法
摂食障害のリスクは、摂食態度調査(Eating Attitudes Test;EAT-26)を用いて評価し、リスクありと判定するカットオフ値は26点中20点とした。
ボディイメージは既報研究に基づき、6項目の質問で評価した。6項目の質問とは、「自分の外見に満足している」や「自分の体に心地よさを感じている」などであり、それぞれ「まったく同意しない(0点)」~「完全に同意(4点)」の5段階のリッカートスコアで回答を得て、24点満点で判定。
未成年アスリートでは競技カテゴリーとボディイメージが摂食障害リスクに関連
EAT-26による評価の結果、全体の9.5%が摂食障害のリスクを示し、年齢層別では未成年アスリートは14.6%、成人アスリートは6.9%だった。
未成年アスリートをEAT-26のスコアが20点未満/以上で、摂食障害のリスクあり/なしに二分すると、リスクあり群は、BMI(Zスコアに基づく過体重の割合がリスクなし群、あり群の順に4±3 vs 33±4%、p=0.006)、行っている競技(同順に、審美的競技は44±3 vs 18±1%、体重や持久力が重視されるが審美的要素のない球技以外の競技は4±3 vs 59±7%、p<0.001)、およびボディイメージの評価(17.4±4.40 vs 11.4±6.42点、p=0.0032)という有意差があった。競技レベルとトレーニング歴には、有意差はなかった。
成人アスリートは、摂食障害のリスクあり/なしで比較した場合に、有意な群間差の認められた項目はなかった。よって、これ以降は未成年アスリートについて、さらなる解析を進めた。
未成年アスリートの評価項目同士の関連の有無
未成年アスリートの摂食障害のリスクの程度(EAT-26のスコア)と、他の評価項目との関連をみると、競技カテゴリー(p<0.00001)、およびボディイメージ(p=0.0032)との間で有意な関連が認められ、競技レベルやトレーニング歴との関連は非有意だった。
また、競技カテゴリーとボディイメージ(p=0.014)、競技カテゴリーとトレーニング歴(p=0.001)、競技レベルとトレーニング歴(p=0.0421)との間にも有意な関連があった。
未成年アスリートの摂食障害リスクに関連のある因子
次に、単変量ロジスティック回帰分析にて、未成年アスリートの摂食障害リスク(EAT-26が20点以上)と関連のある因子を検討。その結果、以下のように、ボディイメージ、および競技カテゴリーの2項目が、有意な関連因子として抽出された。
ボディイメージについては負の関連があり、OR0.80(95%CI;0.70~0.92)で、ボディイメージが高いほど摂食障害のリスクが低かった。また、競技カテゴリーが審美的スポーツである場合、OR0.16(0.04~0.67)で、摂食障害のリスクが低かった。
反対に競技カテゴリーが、体重や持久力が重視されるが審美的要素のない球技以外の競技の場合、OR11.50(3.58~37.09)であり、摂食障害のリスクが高かった。球技はOR0.55(0.19~1.58)で、関連が非有意だった。
軽量のほうが有利という信念や、思春期特有の感性が影響か
これらの結果を基に著者らは、「コーチやアスリートは、ボディイメージが低いアスリートは摂食障害のリスクが高い可能性のある点に注意する必要がある」と述べている。なお、体重や持久力が重視されるが審美的要素のない球技以外の競技で摂食障害のリスクが有意に高いという結果について、「それらの競技のアスリートは、体重が軽いことがパフォーマンス上、有利になるとの信念を抱いていることがあり、体重別階級のある競技に参加している割合も高い。また、競技中に露出度の高いウエアを着用する機会が多いことも、ボディイメージの評価に敏感な思春期では、摂食行動に影響が生じやすくなる一因ではないか」と考察している。
文献情報
原題のタイトルは、「Eating disorder risk in adolescent and adult female athletes: the role of body satisfaction, sport type, BMI, level of competition, and training background」。〔BMC Sports Sci Med Rehabil. 2023 Jul 25;15(1):91〕
原文はこちら(Springer Nature)