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パラアスリートの食事の質の評価結果 個人競技と団体競技での差などが明らかに

ブラジルのパラアスリートの食事の質を、同国で利用されている2種類の評価スケールを用いて相違を検討した結果が報告された。同時に、行っている競技、栄養サポートを受けているか否かなどで対比させた検討も行われており、それらの違いによってパラアスリートの食事の質が有意に異なることも示されている。

パラアスリートの食事の質の評価結果 個人競技と団体競技での差などが明らかに

ブラジルのパラアスリート101人を対象に、複数回の調査で食事の質を評価

障害のあるアスリート(パラアスリート)の食事の質に関する研究は、どの国でも健常アスリートでの研究に比べて極めて不足している。この研究が行われたブラジルでも既報研究は、トレーニングキャンプ中の20人のパラアスリートの食事の質を、同国でブラジル人向けに開発された指標(Brazilian Healthy Eating Index Revised;BHEI-R)で評価した1件のみであり、1年の大半を占めるキャンプ以外での食生活は調査されていないという。このような状況を背景として著者らは、ブラジルのパラアスリートの食事の質に関する大規模な調査を行った。

研究参加アスリートの特徴

ブラジル国内の地域レベルの大会、国内大会、および国際大会に参加したことのある全パラアスリートのうち、複数回の24時間思い出し法による食事調査への回答が困難な重度の視覚障害・知的障害のある選手や、活動歴から初心者レベルと判断される選手を除外して、研究参加協力を依頼。13競技にわたる101人が回答した。

101人の主な特徴は、男性が82人(百分率もほぼ同じ値につき省略)、年齢は30歳超が64人、酸化競技は個人競技が45人、団体56人、競技レベルは国際レベルが23人、国内・地域レベルが78に、所得は低所得が67人、高所得34人、スポーツ奨励金受給者46人、栄養サポートありが31人。

食事の質の評価方法について

食事調査は前述のように24時間思い出し法を用いた。ただし、1回のみでは再現性が十分でない可能性があるため、非連続の4機会に実施したうえで、複数ソース法(multiple source method;MSM)という手法により個人内の日差変動を調整した。検討に際しては、初回の24時間思い出し法での評価を「Rec1(initial 24 h recall)」と定義し、MSMによる評価を「ふだんの食事」と定義した。

食事の質の評価には、前記したブラジルで開発されたBHEI-Rと、非感染性疾患(Non-Communicable Diseases;NCD)のリスクに関連する食事の質の評価を意図して開発された国際的な指標(Global Diet Quality Score;GDQS)の2種類を持ちいて、それらの評価結果の相関または相違を検討した。

BHEI-Rは、12の食品群の摂取量に基づき100点満点で評価し、51点未満は不適切な食事、51~80点は何らかの修正が必要、80点超は健康的な食事と判定する。GDQSは25項目の回答に基づき49点満点で評価し、15点未満はNCDハイリスク、15~23点は中程度のリスク、23点超は低リスクと判定する。

双方の評価スケールで、パラアスリートの食事の質は「中程度」との結果

結果について、まずBHEI-RとGDQSの相関をみると、ふだんの食事の評価結果同士の相関はr=0.579、Rec1同士の相関はr=0.484であり、いずれも有意だった(いずれもp<0.0001)。

BHEI-Rでは、ふだんの食事の評価では90人が51~80点の「何らかの修正が必要」の範囲であり、Rec1の評価では73人がそれに該当した。平均スコアは、ふだんの食事が60.3±11.1点、Rec1は80.7±6.2点であり、初回の24時間思い出し法の1回の調査では高値となっていた。

GDQSでは、ふだんの食事の評価では93人がNCDリスクが中程度であり、Rec1の評価では64人がそれに該当した。平均スコアは、ふだんの食事が19.5±6.5点、Rec1は18.3±2.6点だった。

栄養サポートを受けているパラアスリートは食事の質が有意に高い

次に、アスリートの年齢や性別、教育歴、栄養サポートの有無などで層別化し、BHEI-RとGDQSごとに群間差を検討した。

BHEI-Rに基づく群間差の検討

BHEI-Rでの評価結果に基づく検討では、年齢(30歳以下/30歳超)、性別、収入(高/低)、スポーツ奨励金受給の有無、競技レベル(国際/国内・地域)での比較では、食事の質に有意な差はみられなかった。それに対して、参加競技と栄養サポートの有無での比較では、以下のように群間に食事の質の有意差がみられた。

参加競技が個人競技の選手は団体競技の選手よりもRec1の評価結果が有意に高かった(p=0.02)。ふだんの食事の評価結果は有意水準未満だった(p=0.09)。栄養サポートを受けている選手は、Rec1の評価結果(p=0.03)、ふだんの食事の評価結果(p=0.01)ともに、サポートを受けていない選手より有意に高かった。

GDQSに基づく群間差の検討

GDQSでの評価結果に基づく検討では、年齢、性別、収入、スポーツ奨励金受給の有無、競技レベルでの比較では、食事の質に有意な差はみられなかった。それに対して、参加競技と栄養サポートの有無、および教育歴での比較では、以下のように群間に食事の質の有意差がみられた。

参加競技が個人競技の選手は団体競技の選手よりもRec1の評価結果が有意に高かった(p=0.08)。ふだんの食事の評価結果は群間差が非有意だった(p=0.35)。栄養サポートを受けている選手はサポートを受けていない選手よりも、Rec1の評価結果が有意に高かった(p=0.00)。ふだんの食事の評価結果は有意水準未満だった(p=0.09)。教育歴に関してはRec1の評価結果との関連の解析で、教育歴が最も長い選手は高スコアだった(p=0.02)。

単回の調査では再現性の限界がある

著者らは、「ブラジルのパラアスリートの食事の質の評価には、BHEI-R、GDQSいずれも十分な精度があると考えられた。ただし、調査を散発的に行う場合は、単回調査と繰り返し調査の解離が少ないGDQSのほうが適している」と述べている。また調査結果から得られたポイントとして、「パラアスリートの食事の質は全体的に中程度と言え、個人競技のアスリートや栄養サポートを受けているアスリートは食事の質が高い傾向にあった」としている。

文献情報

原題のタイトルは、「Intermediate-Level Diet Quality of Brazilian Paralympic Athletes Based on National and International Indexes」。〔Nutrients. 2023 Jul 17;15(14):3163〕
原文はこちら(MDPI)

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