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朝食を食べないと運動が楽しくなくなる可能性 思春期女子でのクロスオーバー試験

思春期の女子を対象に、朝食欠食による代謝や基質酸化などへの影響を検討した結果が英国から報告された。成人では知られている「セカンドミール効果」が思春期の女子にも存在し、朝食を欠食した場合は昼食後の糖代謝への負荷が高くなることが明らかになったという。また、朝食欠食によって、午後の身体活動の楽しみが低下する傾向も認められたとのことだ。

朝食を食べないと運動が楽しくなくなる可能性 思春期女子でのクロスオーバー試験

思春期女子の朝食欠食問題

思春期は、それ以前は生活パターンが保護者によって規定されていることが多いのに比べて、自分の判断でライフスタイルを変え始める時期にあたる。それに伴い、それまで毎日食べていた朝食を食べなくなることが多い。一方で思春期は、成長ホルモンの増加に伴いインスリン抵抗性が亢進しやすいことが知られており、この時期に身体活動量が減る子どもが多いことと関連して、食習慣の乱れが糖代謝に影響を及ぼしやすいと考えられる。その影響は、男子より女子でより大きいことが示唆されている。

成人の場合、健常者であっても朝食を抜くと、昼食の後に血糖スパイクが生じやすくなることが知られている。ただし、思春期の女子にもそのような現象が生じるのか否かはこれまでのところ不明。今回紹介する論文の研究はその点をクロスオーバー試験によって検討し、同時にエネルギー基質の酸化や、運動時の気分への影響を検討している。

12~14歳の女子に無作為化クロスオーバー法で朝食欠食の影響を調査

研究参加者は、12~14歳でふだん学校に通学していて、朝食欠食の習慣のない女子。朝食欠食の影響を検討するという研究目的上、朝食欠食習慣のない女子のほうが適していると考えられることから、それを適格条件とした。なお、試験食に対するアレルギーのある者は除外した。

クロスオーバー法で有意差を検討するには16人が必要と計算され、20%の脱落を見込み22人を募集した。朝食摂取条件と欠食条件の試行は無作為化し、7~30日のウォッシュアウト期間を設けた。なお、代謝に影響を及ぼす月経周期も考慮したが、思春期には月経周期の変動があるため、十分な調整は困難だったという。

ひと晩の絶食後、8時30分に呼気ガスや血液検体を採取後、朝食摂取条件では標準化された朝食を摂取し、欠食条件では標準食に含まれている水分と同量の水のみを摂取した。その3時間後に両条件ともに標準化された昼食を摂取し、さらに2時間後に自転車エルゴメーターを用いて増分試験を行った。食事や運動負荷試験以外の時間は、読書、映像鑑賞などが許可され、水は自由に摂取して良いこととした。

研究参加者の特徴と試験食の内容

最終的な解析対象は17人だった。年齢は13.2±0.7歳、BMI20.9±4.9、体脂肪率27.6±7.0%、Tanner分類による発育過程は乳房と陰毛がともに中央値4(四分位範囲1)で、安静時代謝量(resting metabolic rate;RMR)は1,566±244kcal/日だった。4人は過体重、1人は肥満に該当したが、インスリン感受性(HOMA-IR)や年齢、性別、BMIに基づき、心血管代謝性疾患のリスクがあると判定された者はいなかった。

個別化された試験食は、朝食は588±92kcalで、炭水化物70%、脂質15%、タンパク質16%であり、グリセミックインデックス(glycemic index;GI)が42、昼食は768±120kcalで炭水化物67%、脂質27%、タンパク質6%で、GIが75だった。

思春期でもセカンドミール効果が存在

論文では、血糖、インスリン、中性脂肪の経時的変化および変動曲線下面積(area under the curve;AUC)、糖質や脂質の酸化率、心拍数などの多くのパラメーターに関する解析結果が述べられている。それらの中からここでは主に、著者らが強調している糖代謝と運動時の楽しみへの影響を中心に紹介する。

糖代謝への影響

昼食前の血糖値に条件間の有意差が観察され、朝食欠食条件のほうが低値で推移しており、AUCに有意差が認められた(p=0.027)。一方、昼食後にも条件間の有意差が観察され、関連が逆転し朝食欠食条件のほうが高値で推移しており、AUCに有意差が認められた(p<0.001)。

インスリン値も同様に、昼食前に条件間の有意差が観察され、朝食欠食条件のほうが低値で推移しており、AUCに有意差が認められた(p<0.0005)。一方、昼食後にも条件間の有意差が観察され、関連が逆転し朝食欠食条件のほうが高値で推移しており、AUCに有意差が認められた(p<0.0005)。つまり、朝食を摂取することが昼食後の糖代謝への負荷を抑制するというセカンドミール効果が、思春期の女子においても認められた。

運動負荷時の反応への影響

運動負荷時の心拍数、脂質酸化速度、自覚された運動強度には有意差がなかった。16項目で評価した運動の楽しさは、わずかに有意水準未満ながら、朝食欠食条件のほうが低かった(p=0.055)。

著者らは結論として、「われわれは、ふだん朝食を摂取している思春期の女子が朝食を抜いた場合、昼食後の血糖値とインスリンレベルが上昇することを初めて示した。また、朝食を欠食すると、運動時の心拍数や脂質酸化には影響を及ぼさないが、運動の楽しみが減ってしまう可能性がある。これらの発見は、思春期の少女の習慣的な朝食摂取率を高める、効果的な戦略が必要であることを示唆している」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Acute Cardiometabolic and Exercise Responses to Breakfast Omission Versus Breakfast Consumption in Adolescent Girls: A Randomised Crossover Trial」。〔Nutrients. 2023 Jul 19;15(14):3210〕
原文はこちら(MDPI)

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