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高校スポーツにおけるセクハラと虐待の実態と対策 ノルウェーでの調査結果

高等学校におけるセクシャルハラスメントと虐待の実態や、その被害者となった場合にだれに相談すべきか、そのような報告システムが整備されているかといった対策の実情を、体育高校と普通高校での比較を含めて調査した結果が、ノルウェーから報告された。体育高校の生徒は普通高校の生徒に比べて、セクハラや虐待を受けた際に相談や報告をする頻度が低いことも示されている。

高校スポーツにおけるセクハラと虐待の実態と対策 ノルウェーでの調査結果

思春期に受けたセクハラなどの被害は一生、人に明かされないことが多い

セクシャルハラスメントと虐待(sexual harassment and abuse;SHA)は、あらゆる性別と年齢層で発生し得る社会問題だが、思春期はとくにSHAが生じやすい時期と言える。思春期にSHAの被害を受けた生徒の多くは、そのことを長年にわたって口外しなかったり、生涯ひとに語らないことも珍しくないと考えられている。報告によると、SHAの被害を受けた中高生のうち、18~56%はそれを他者に語っていないという。また、女子は男子よりも相談や報告をする頻度が高いものの、その相手は大半が友人や同僚、家族であり、学校という組織中でシステマティックに解決されるケースは少ないとされる。

SHA発生に関するシステマティックな報告システムの欠如は、SHAの発生を助長し被害を拡大する可能性がある。米国の大学生対象調査では5人中4人が、所属している大学がSHAに関する対策の方針を打ち出していることを認識しており、実際に被害に遭った場合の報告先についても過半数の学生が認識していた。一方、学生アスリートがスポーツ活動の中でSHAに遭遇した場合の報告先の認知率は、5人に1人とのデータがある。しかし、高校でのそのようなデータは少なく実態が不明。

普通高校と体育高校の生徒と責任者・コーチを対象にアンケート調査

この研究では、ノルウェー国内のすべての体育高校と、普通高校の一部を対象として、生徒およびリーダー(校長またはスポーツ部門の責任者)、コーチに対するアンケート調査が2回実施された。初回調査の横断的解析と、初回調査と1年後の第2回調査までの結果の変化を検討する縦断的解析が行われている。

アンケート回答者の特徴

生徒は12年生(17.1±0.4歳)で、アンケートの有効回答率は78.8%であり、追跡期間の退学などにより脱落した51人を除外し、1,200人を解析対象として、全体を以下の3群に分類した。体育高校に通学しオリンピックスポーツセンターの協力による体育指導を受けているエリート高校生アスリート630人、普通高校に通いスポーツクラブに所属しているレクリエーション高校生アスリート307人。普通高校に通いスポーツを行っていない生徒(対照群)263人。

一方、リーダーおよびコーチは460人に回答協力を依頼し、54.1%にあたる249人から有効回答を得られた。内訳は、スポーツ部門のリーダーが47人、非スポーツ部門のリーダーが12人、コーチまたは体育教師が190人。リーダーの年齢は、普通高校は45.9±6.7歳、体育高校は52.0±8.1歳で、コーチは41.7±10.3歳であり79.5%が男性。

アンケートの内容

アンケートでは、セクシャルハラスメントと虐待(SHA)を、「攻撃的で敵意があり、恐怖を与えたり品位を傷つけ、屈辱的または迷惑となる、あらゆる形態の望ましくない行動」と位置づけ、言語(例えば性的な発言)、非言葉(性的な画像の同意のない共有)、身体(望まない接触、レイプ)などの13項目について、遭遇体験の有無の回答を求めた。初回調査では、その時点までの生涯の体験を問い、第2回目の調査では、初回調査以降に遭遇した体験について質問した。

また、SHAの被害に遭遇していた場合は、それを誰かに開示(報告や相談)したか、誰に開示したかを質問した。さらに、SHAに遭遇した場合に開示するシステムが学校に存在するか否か、存在する場合はそれを利用したいと思うか否かなどを質問した。

リーダーとコーチに対しては、上記の質問に関する事項をサポートする内容の質問を行った。

6割近くの生徒がSHA被害の経験があり、アスリート高校生は開示率が低い

初回調査において、696人の生徒(58.0%)が以前にSHAの被害に遭遇したことがあると回答した。生徒のカテゴリー別では、エリートアスリート50.5%、レクリエーションアスリート66.8%、対照群(一般の生徒)65.8%。

SHAの生涯経験を報告した696人のうち、そのことを誰かに開示したことがあるのは20.1%に過ぎなかった。性別で比較すると女子は男子よりも開示率が有意に高かった(25.4 vs 12.1%、p<0.001)。カテゴリー別の比較では、対照群の開示率が27.7%であるのに対して、エリート高校生アスリート(18.6%)とレクリエーション高校生アスリート(16.1%)は開示率が有意に低かった(p=0.012)。

学校でのSHA報告および被害者サポート制度の認識

生徒の認識

高校生全体の11.4%が、自分が通う高校にSHAに遭遇した場合の報告システムがあると認識していた。その認識は男子のほうが女子よりも高かった(14.0 vs 8.9%、p=0.016)。アスリートか一般の高校生かというカテゴリー別では、認識率に有意差はなかった。

SHAに遭遇した場合のサポート制度の存在については34.0%が認識しており、性別やカテゴリー別の比較で有意差はなかった。

初回調査から第2回目の調査の1年間で、6.5%の生徒がSHAに対する何らかの対策を講じたり、学校の報告システムに開示したと回答した。

リーダー・コーチの認識

リーダーは3人を除くすべて(9人)が、勤務先の学校にSHAの報告およびサポートのリソースがあると回答した。一方、コーチに関しては、SHA報告システムの存在を認識していたのは51.9%、サポートシステムの存在を認識していたのは51.3%にとどまっていた。

学校のSHA報告システムを利用しようと思わない理由

学校のSHA報告システムの存在を任してしているにもかかわらず、それを利用しようとは思わないと回答した生徒がその理由として挙げたのは、羞恥/恐れが27.3%、SHAの体験がないため必要性がない25.5%、誰かほかの人に開示する23.6%などだった。

一方、誰かに開示すると回答した生徒が開示先として挙げたのは、友人/仲間38.6%、親/家族25.0%、コーチ/教師13.6%などだった。

文献情報

原題のタイトルは、「Sexual harassment and abuse; disclosure and awareness of report- and support resources in Norwegian sport- and non-sport high schools: a prospective exploratory study」。〔Front Psychol. 2023 Jul 14;14:1168423〕
原文はこちら(Frontiers Media)

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