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アスリートの食事や調理のスキルの高さは? どうやって身に付けている? 団体競技選手での調査

チームスポーツアスリートの調理や食事のスキルを調査した結果がアイルランドから報告された。女性は男性よりもそれらのスキルが優れていること、それらのスキルは果物や野菜の摂取量と正相関していること、約半数のアスリートは13~17歳の間にそれらのスキルを習得し、習得のための情報源は母親が約半数を占めることなどが明らかにされている。

アスリートの食事や調理のスキルの高さは? どうやって身に付けている? 団体競技選手での調査

調理や食事のスキルがパフォーマンスにつながる?

スポーツパフォーマンスの最大化のためには栄養戦略が欠かせない。しかし、アスリートの栄養素摂取はエビデンスに基づく推奨に即していないことがよく指摘される。例えば、タンパク質が多すぎたり、炭水化物、果物や野菜の摂取が少なすぎることが、しばしば報告される。

一方、アスリートの調理や食事のスキルが適切な栄養素摂取と相関しているとする研究報告がある。ただし、団体競技アスリートに特化して、そのような視点で行われた研究はない。団体競技のアスリートは栄養に関する知識が乏しいという報告もあることから、この集団での調理・食事スキルの実態の把握が必要とされる。

今回取り上げる論文は以上を背景として、アイルランドにおけるオンライン調査として実施された。なお、調理のスキルとは、料理を作る調理のための知識や技術のことで、食事のスキルとは、栄養バランスのとれた料理を準備するための知識や技術と定義されている。

アイルランドの団体競技アスリート266人を対象に調査

研究への参加条件は、18歳以上でアイルランドに居住し、団体競技の試合またはトレーニングに週2回以上参加していて、週に1回以上は「主食」の「準備」をしていること。ここでいう主食とは、家庭で摂取される食品の中で最も摂取量の多い食品であり、その準備とは、食べられる状態にするために何らかの手を加えることであって、食材から調理することはもちろん、出来上がっているものを温め直すことも含まれるとされている。

研究デザインはオンラインアンケートを用いた横断研究であり、アンケートは回答に約15分を要する内容。

調理スキルについては14の質問に対して1(極めて苦手)~7(極めて得意)という7点のリッカートスコアで評価し、満点は98点。質問内容には、食材を刻む、煮込む、焼くといった調理工程の自信を問う項目などが含まれていた。食事スキルについては19の質問で評価し、満点は133点だった。

このほかに、果物・野菜の摂取量、一般的な健康への関心の程度などが評価された。

解析対象者の特徴

回答が収集された2021年4月から翌2022年5月に770人がアクセスし、そのうち42%にあたる322人が回答を開始した。部分的な質問のみに回答したものは解析対象から除外。また、18歳未満、アイルランド以外に在住、団体競技のアスリートでない、週に1回以上主食の準備にかかわっていないなどの理由で除外され、最終的な解析対象数は266人だった。

主な特徴は、年齢24.8±6.1歳、男性56.4%で、BMIは男性26.6±4.4、女性23.8±3.6、トレーニング歴は同順に15.8±7.4、13.1±6.7年、週あたりのトレーニング時間は7.5±3.7、7.1±3.3時間。

行っている競技は、ゲーリックフットボールが約半数(50.8%)であり、サッカー(18.8%)、ラグビー(18.8%)と続き、そのほかに、ホッケー、バスケットボール、バレーボール、アメリカンフットボールなどが含まれていた。競技レベルは、レクリエーションレベルが7.5%、サブエリートレベルが65.8%、エリートレベルが26.7%だった。

調理の頻度は、毎日が24.8%、週に5~6回が16.5%、週に3~4回が32.3%、週に1~2回が26.3%。大半(93.2%)のアスリートは、調理に関する系統的なトレーニングを受けたことはないと回答していた。

男性の団体競技アスリートに、調理スキル向上の介入を

スキルは性別や経験と関連し、年齢やBMIは関連なし

結果について、まず調理スキルに着目すると、98点中62.7±17.4点(64.0±17.8%)だった。属性別に比較すると、男性より女性のほうがハイスコアで(57.6±16.6 vs 69.3±16.2、p<0.001)、過去に調理のトレーニングを受けた群はそうでない群より有意にスコアが高かった(71.5±16.5 vs 62.1±17.3、p=0.027)。また、調理の頻度が高いほどスコアが高かった。

食事スキルは133点中83.8±20.1点(63.0±15.1%)だった。男性より女性のほうがハイスコアで(80.6±19.8 vs 88.0±19.8、p=0.003)、過去に調理のトレーニングを受けた群はそうでない群より有意にスコアが高かった(95.2±21.5 vs 83.0±19.8、p=0.027)。また、調理の頻度が高いほどスコアが高かった。

なお、調理スキル、食事スキルともに、年齢、BMI、教育歴は、スコアと有意な関連がなかった。

半数は10代に母親から習得し、スキルが高い人ほど果物・野菜を多く摂取

調理のスキルを習得した時期は、48.5%が10代(13~17歳)と回答し、46.2%は成人後(18歳以上)で、他の5.3%は12歳未満と回答した。より早く料理スキルを習得していた人のほうがスキルが高いという関係も認められた。具体的には、12歳未満で習得した群が最も高くて80.2±17.4、13~17歳で習得した群は65.2±16.6、18歳以上で習得した群は58.2±16.6だった。

スキル習得のための情報源は母親が49.2%と最多であり、そのほかには、試行錯誤(14.7%)、レシピ本(8.6%)などが挙げられた。

1日あたりの野菜摂取量は2.7±1.4ポーション、果物は2.5±1.3ポーションであり、合計5.1±2.2ポーションだった。この値は調理スキル(rs=0.258、p<0.001)、食事スキル(rs=0.212、p<0.001)と正の相関が認められた。

論文の結論によると、この調査で示された団体競技アスリートの調理や食事のスコアは、ほかの集団での調査結果よりも低い値だという。そして、「調理や食事のスキルを高める介入によって、チームスポーツのアスリートの食事摂取量にプラスの効果が生じるのではないか。とくに、(現在のスキルが低い)男性アスリートが、そのような介入の恩恵を最も強く受けると考えられる」と述べられている。

文献情報

原題のタイトルは、「Cooking and food skills confidence of team sport athletes in Ireland」。〔Nutr Bull. 2023 Sep;48(3):329-342〕
原文はこちら(John Wiley & Sons)

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