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勝ち試合と負け試合の前後で睡眠時間が異なる? オーストラリアンフットボール選手で検討

オーストラリアンフットボールの選手37人の睡眠行動を、1シーズンにわたって追跡調査した結果が、昨年報告された。試合日とトレーニング日の比較、ホーム戦とアウェー戦の比較、試合に勝った日と負けた日の前後の比較など、さまざまな解析がなされている。

勝ち試合と負け試合の前後で睡眠時間が異なる? オーストラリアンフットボール選手で検討

パフォーマンスを発揮しきるための一つの鍵は睡眠

エリートレベルで活躍するアスリートにとって、十分な睡眠を確保することは、パフォーマンスを維持するための重要な要素の一つ。しかし、アスリートの70%以上が習慣的に1時間以上の睡眠不足の状態にあるという報告や、競技会出場中はより睡眠の質が低下するといった報告がみられる。

アスリートの睡眠を左右する要素として、試合の開始時刻、遠征のための移動、ストレス、栄養などが考えられ、それらの影響が認められたとする研究報告も存在する。ただ、それらの研究は調査期間が限られており、プロスポーツで行われているような、数カ月に及ぶシーズン全体で選手の睡眠行動の変化を追跡した研究はない。それに対して本論文の著者は、オーストラリアンフットボール選手に手首型活動量計を装着して1シーズンすごしてもらうという研究を行い、睡眠行動に影響を与え得る因子を検討している。

37人の選手を1シーズン追跡

この研究の参加者は、オーストラリアンフットボールリーグの1シーズンの第1ラウンドから第23ラウンドまで出場した、同一クラブの男子シニア選手37人。年齢は24.8±3.4歳、プレー経験(出場試合数)は81±70試合。

睡眠行動は、各ラウンドの4夜連続(試合の2日前から試合当日とその翌日まで)、手首装着型活動量計で把握した。なお、活動量の測定が目的ではなく、睡眠行動の把握が目的であるため、トレーニング中や試合中は取り外した。また、本来は昼寝の時間も評価すべきだが、選手の負担を考慮し、昼間の睡眠は評価しなかった。

研究期間中のサプリメント、カフェイン、アルコールの摂取は制限しなかった。睡眠薬を含む薬剤の使用に関する情報は、分析に含まれていない。

試合日は睡眠時間が短く、ナイトゲーム、アウェー戦でより顕著

合計で、シーズン中の1,229泊分のデータが収集された。

平均入眠時間は0時6分±1時間42分、起床時刻は7時42分±1時間24分であり、睡眠時間は平均)6.8±1.9時間であって、平均睡眠効率(就床時間に占める睡眠時間の割合)は77.1±13.8%だった。

試合前後の変化:試合日が最も睡眠時間が短く睡眠効率も低い

入眠時刻や起床時刻、平均睡眠時間、睡眠効率は、試合の2日前、前日、および試合翌日の3日については大きな変化はなかった。例えば入眠時刻は23時30分~23時48分、起床時刻は7時12分~8時12分、睡眠時間は6.9~7.7時間、睡眠効率は77.6~79.3%の範囲に分布していた。

それに対して試合当日は、入眠時刻が1時24分、起床時刻が7時12分で睡眠時間は5.2時間と短く、睡眠効率は73.8%と低値だった。

デーゲームとナイトゲームの差:ナイトでは試合日の睡眠時間がより短い

次に、試合が日中に行われた場合と夕方以降に行われた場合の前後の睡眠行動を比較すると、試合当日以外については有意差がみられなかった。

それに対して試合日は、ナイトゲームの場合にはより入眠時刻(2時8分)が遅く、起床時刻(7時14分)は早くなり、睡眠時間(4.9時間)が短くなっていた。睡眠効率は72.8%であり、前述の73.8%よりやや低値であるものの、デーゲームとの比較で有意差はなかった。

ホームとアウェーの差:試合の2日前~試合翌日の4日間、連続して睡眠に影響

続いて、ホーム戦とアウェー戦の前後の睡眠行動を比較すると、試合の2日前~試合翌日の4日間、連続して睡眠行動に有意差が認められた。

まず、試合の2日前は、入眠時刻・起床時刻ともにアウェーのほうが有意に遅く、睡眠時間はアウェーのほうが有意に長かった。試合前日は、入眠時刻・起床時刻ともにアウェーのほうが有意に遅かったが、睡眠時間は有意差がなかった。

試合日は、入眠時刻・起床時刻ともにアウェーのほうが有意に遅かった。睡眠時間はアウェーのほうが有意に短く、本論文に示されている解析条件の中で最短の4.8時間だった。

試合の翌日は、起床時刻のみ有意差があり、アウェーのほうが早かった。

勝ち試合と負け試合の比較:負けた日の夜の睡眠効率は72.4%

最後に、試合に勝ったラウンドと負けたラウンドの睡眠行動を比較すると、試合の2日前~試合当日は連続して睡眠行動に有意差が認められ、試合翌日は有意差がなかった。

まず、試合の2日前は入眠時刻・起床時刻ともに勝ち試合だったラウンドのほうが有意に遅く、試合前日は入眠時刻が勝ち試合だったラウンドで有意に遅かった。

一方、試合当日は前日までとは反対に、入眠時刻・起床時刻ともに負け試合だったラウンドのほうが有意に遅かった。

なお、睡眠時間や睡眠効率には有意差がなかった。ただし、試合に負けた当日の睡眠効率は72.4%であり、本論文に示されている解析条件の中で最低だった。

以上を総括した結論は、「エリートレベルのオーストラリアンフットボール選手は、シーズンを通して十分な睡眠をとるが、試合がホームかアウェーかにかかわらず、試合日の夜には睡眠不足になりやすい。この睡眠時間の減少が、試合後の回復に悪影響を及ぼすか否かを検討することが求められる」とされている。

文献情報

原題のタイトルは、「The Sleep Behaviors of Elite Australian Rules Footballers Before and After Games During an Entire Season」。〔Int J Sports Physiol Perform. 2022 Jan 31;17(6):932-942.〕
原文はこちら(Human Kinetics)

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