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タンパク質の摂取量を3食均等にすると、効率よく筋力・筋持久力が向上する可能性

タンパク質を一度にまとめて摂るよりも、3食のばらつきを少なく、まんべんなく摂るほうが、筋力や筋持久力の維持・向上には良いことを示す研究結果が昨年報告されている。米国の研究者によるもの。

タンパク質の摂取量を3食均等にすると、効率よく筋力・筋持久力が向上する可能性

筋肉量の維持だけでなく、筋力やパフォーマンスにも摂取量の均一性が影響するか?

食事により摂取されたタンパク質(アミノ酸)は、筋肉の材料として使われるだけでなく筋タンパク質の合成刺激にも重要。一方、エネルギーバランスが負の状態や外傷、感染症などでは体タンパク質の異化が亢進する。そのため、空腹の時間帯が少ないことが、筋タンパク質の減少の抑制に有利と考えられ、実際に15件の研究のシステマティックレビューからも、それが示唆されている。ただし、筋力やタンパク質の代謝回転に対する摂取タンパク質量の均一性の影響はわかっていない。この論文の研究では、その疑問の答を探るため、一般女性を対象とする横断調査が行われた。

幅広い年齢層の女性を対象として横断的に解析

研究対象は、米国のノースダコタ州立大学周辺の地域住民から募集された195人。年齢は18~79歳と広い範囲に分布しており、平均は41.9歳で標準誤差(SME)が1.3歳。喫煙者でないこと、疾患に罹患していないこと、補助なしで独立歩行が可能なこと、ふだん動物性食品と植物性食品ともに摂取していることが適格条件であり、研究の目的から夜間勤務者は除外されていた。1週間の中等度~高強度運動の時間は89.3分、SME2.2分だった。

摂取タンパク質量は3日間の食事記録、および、153項目からなる食事摂取頻度調査票(Food Frequency Questionnaire;FFQ)で把握。後述の方法で均一性を評価した。摂取タンパク質量との関連を評価した指標は、除脂肪体重、体脂肪率、握力、30秒間の椅子立ち上がりテスト、6mの歩行速度、下半身のピークトルクと筋持久力など。

摂取タンパク質量の均一性の評価について

食事記録および食事摂取頻度調査票(FFQ)に基づき、以下の三つの時間帯に分けて、タンパク質を含む栄養素摂取量を把握した。まず、朝食を含む時価帯として起床~11:30、次に昼食を含む時間帯として11:31~16:30、最後の時間帯は夕食を含む16:31~就床まで。

摂取タンパク質量は、3食のうちいずれかの食事での摂取量の絶対量、および相対量で判定した。すなわち、絶対量では、上記の三つの時間帯のいずれかで、25g以上のタンパク質が摂取されていた場合に、不均一性のある食事と判定。相対量については既報研究に基づき、60歳未満では、いずれかの時間帯に0.25g/kg以上、60歳以上では0.4g/kg以上が摂取されていた場合に、不均一性のある食事と判定。それらの回数を合計して4段階の順序変数に換算し、その値が小さいほどふだんの摂取タンパク質量の均一性が高い(摂取タンパク質の変動が少ない)と評価する指標とした。

摂取タンパク質量を分散させると同化が最大化しパフォーマンスUP

結果について、まず栄養素摂取量をみると、エネルギー量については食事記録からは2,022±40kcal、FFQでは2,004±63kcal。以下、食事記録に基づく数値として、タンパク質は85.3±1.8g、脂質84.5±2.0g、炭水化物230.9±5.7gであり、体重換算では同順に29.736±0.686kcal/kg、1.262±0.033g/kg、1.238±0.033g/kg、3.401±0.095g/kg。

次に、摂取タンパク質量を前記の三つの時間帯別にみると、絶対量としては、朝食を含む時間帯は17.4±0.8g、昼食を含む時間帯は28.1±0.9g、夕食を含む時間帯は39.8±1.1gであり、相対量では同順に、0.255±0.012g/kg、0.418±0.015g/kg、0.588±0.018g/kgだった。

除脂肪体重や筋力・筋持久力との有意な関連

続いて本研究の主題である、摂取タンパク質量の均一性の高さと体組成、筋力、筋持久力との関連を、総摂取エネルギー量および総タンパク質摂取量を調整したうえで検討。すると、以下の記すように、除脂肪体重や握力、下半身の筋力、筋持久力などのいくつかの指標との有意な関連がみつかった。

除脂肪体重

摂取タンパク質の絶対量で評価した均一性の高さ(1日を三つに分けた時間帯のうち、一つの時間帯での摂取タンパク質量が25gを超える回数の少なさ)が、除脂肪体重が大きいことと関連(β=1.067±0.273、p<0.001)。

摂取タンパク質の相対量で評価した均一性の高さ(1日を三つに分けた時間帯のうち、一つの時間帯での体重あたりの摂取タンパク質量が、60歳未満は0.25g/kg、60歳以上は0.4g/kgを超える回数の少なさ)が、除脂肪体重が大きいことと関連(β=0.754±0.244、p=0.002)。

握力

摂取タンパク質の絶対量で評価した均一性の高さが、握力が強いことと関連し(β=3.274±0.737、p<0.001)、相対量で評価した均一性の高さも握力の強さと関連(β=2.451±0.658、p<0.001)。

下半身のピークトルクや筋持久力

摂取タンパク質の絶対量で評価した均一性の高さが、下半身のピークトルクが強いことと関連(β=22.858±7.918、p=0.004)。相対量で評価した均一性の高さとの関連は非有意。

下半身の筋持久力については、摂取タンパク質の相対量で評価した均一性の高さと関連(β=184.852±77.185、p=0.018)。絶対量での評価との関連は非有意。

なお、体脂肪率、椅子立ち上がりテスト、歩行速度に関しては、摂取タンパク質量の均一性との有意な関連が認められなかった。

以上より論文の結論は、「摂取タンパク質量の均一性の高さは、女性の除脂肪体重、筋力、および筋持久力に関連している。タンパク質の摂取量を、1日を通して分散させることで、同化作用が最大化され、筋肉量とパフォーマンスが向上する」とまとめられている。

文献情報

原題のタイトルは、「Evenness of Dietary Protein Intake Is Positively Associated with Lean Mass and Strength in Healthy Women」。〔Nutr Metab Insights. 2022 Jun 16;15:11786388221101829〕
原文はこちら(SAGE Publications)

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