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アスリートのオルトレキシア有病率を調査 半数以上が該当する可能性が示される

アスリートにおけるオルトレキシア(orthorexia、orthorexia nervosa)の有病率を既報研究のシステマティックレビューとメタ解析により検討した結果が報告された。全体で55.3%という高い有病率が示されたという。ただし、研究間の不均一性が極めて高く、オルトレキシアの診断に関する定義や評価手法の統一が必要だと著者らは述べている。

アスリートのオルトレキシア有病率を調査 半数以上が該当する可能性が示される

アスリートはオルトレキシアの有病率が高い可能性があるが実態は不明

オルトレキシアは、食事に関する何らかの制限、儀式化された食事パターンなどを特徴とし、その該当者はしばしば食事による健康等へのメリットやデメリットを過大評価しており、栄養失調や不健康な体重低下につながりやすい。

摂食障害は食事の量が問題とされることが多いのに対して、オルトレキシアでは食事の質の問題が大きくなりやすいという相違がある。近年、オルトレキシアを摂食障害の一亜型としてとらえるという提案もみられるが、現在のところ疾患として扱うことのコンセンサスは得られていない。また、「健康的なオルトレキシア」と「不健康なオルトレキシア」が存在するという考え方の提案もされているが、この点についてはその後、明確な差はないことが報告されている。

運動やスポーツが食事と並んで、健康の維持・向上にとって重要であることは今日、普遍的な情報となっている。ただ、健康の達成への強すぎるこだわりがある場合、強迫観念が生じてしまい、かえって不健康な状態を招くことがある。この点で、高い目標に向かってトレーニングを続けているアスリートはオルトレキシアのリスクが高い可能性があり、とくに不安やストレスを仲間と共有する機会が限られている個人競技のアスリートは、団体競技アスリートに比べて、よりハイリスクではないかと考えられる。ただし、それを明確に示した研究報告はまだない。

以上を背景として今回紹介する論文の著者らは、システマティックレビューとメタ解析によって、アスリートのオルトレキシアの有病率を検討し、かつ、行っている競技によってその値が異なるか、また性別の影響はあるかなどを検討した。

文献検索の手法について

PubMed、Embase、Web of Science、PsychInfo、CINAHLという五つの文献データベースを用いて、システマティックレビューを実施。それとともに、灰色文献(商業ルートで入手困難な文献)も渉猟するためGoogle ScholarとOpenNetも利用した。2022年1月20日~2月1日の間に検索を行い、9月10日に新たに追加された報告の有無を確認した。

各研究の研究対象がアスリートであるか否かは、

  1. パフォーマンスまたは結果を向上させることを目的としたスポーツのトレーニングを行っていること、
  2. 競技会に積極的に参加していること、
  3. 何らかのスポーツ競技団体に所属し正式に登録されていること、
  4. スポーツのトレーニングと競技への参加を関心の対象とし、多くの時間を割いていること、

などから判断した。

また、研究対象の競技のタイプは、個人競技、団体競技、および、対象にそれら双方が含まれている研究または競技が不明の研究という、三つのカテゴリーに分けた。

2名の研究者が独立して検索作業を行い、採否の意見の不一致は討議により解決した。

有病率は5割超。ただし、不均一性が極めて高いという結果

文献データベースの一次検索で1,089報がヒットし、灰色文献のハンドサーチで211報がヒット。タイトルと要約に基づくスクリーニングと全文精査を経て、24件の研究を抽出した。なお、スクリーニング段階での研究者間の判断は96.0%が一致し、全文精査では94.7%が一致していた。

すべての研究の参加者数合計は7,592人で平均316人(範囲41~1,090)。このうち4,288人が女性、3,304人が男性、研究が行われた国は、ポルトガル4件、イタリアと米国が各3件、ブラジル、トルコ、ポーランドが各2件で、その他、英国、ドイツ、スウェーデン、デンマーク、ハンガリー、レバノン、スペイン、カナダが各1件。

研究参加者は主に、フィットネスジム、体育大学、競技団体を介して募集されていた。無作為化試験が1件あったのを除き、ほかはすべて横断研究だった。

オルトレキシアの評価方法としては、大半(18件)がORTO-15という質問票により評価していた。その他はORTO-11という質問票が3件。なお、ORTO-15は現在最もよく使われているオルトレキシアの評価ツールではあるが、対象者の健康状態を考慮せずに厳格な食事制限を一律に有害と扱っていること、評価が過大になる傾向のあることに対して批判的な意見もある。

学生対象研究を除外した感度分析もほぼ同じ結果

メタ解析の結果、24の研究すべてでのオルトレキシアの有病率は、55.3%(95%CI;43.2~66.8)と計算された。ただし、不均一性の指標であるI2が98.4%であり、研究ごとの異質性が極めて高いこともわかった。なお、感度分析として実施した、研究対象が大学生の研究(13件)を除外した解析からも、51.3%(32.3~70.0)と、ほぼ同様の有病率が示された。

行っている競技のタイプ(個人競技か団体競技か)、研究参加者に占める女性の割合、研究参加者数で層別化して解析し、オルトレキシアの有病率に何らかの異なる傾向が認められるか否かを検討したところ、有意な関連は認められなかった。ただし、これらの情報が欠落している研究報告が多く、その場合は「不明」とコード化して解析しているため、有意な関連が示されなかったことが必ずしも、競技のタイプや性別などがオルトレキシアの有病率に関連がないことを意味するものではないという。

オルトレキシアの定義と評価手法の確立が求められる

一方、オルトレキシアの評価方法でサブグループ化して比較すると、ORTO-15で評価した研究での有病率は65.6%(55.1~74.7)、ORTO-11では63.4%(37.4~83.4)であり、他の手法による評価では5.7%(2.1~15.2)よりはるかに高く、顕著な乖離があることも明らかになった。

これらの結果に基づき著者らは、「研究間に大きな差はあるものの、アスリートのオルトレキシアの有病率はかなり高いことが示された。研究間の不均一性は、参加者の性別や行っている競技、サンプルサイズなどによっては説明されなかった。ただし、評価手法は不均一性の一部を説明可能と考えられ、最も広く用いられている評価指標での研究は有病率が高かった」とまとめている。そのうで、オルトレキシアについて、依然としてスタンダードな診断基準がなく、評価手法も標準化されていないことを問題点として指摘している。

文献情報

原題のタイトルは、「The prevalence of orthorexia in exercising populations: a systematic review and meta-analysis」。〔J Eat Disord. 2023 Feb 6;11(1):15〕
原文はこちら(Springer Nature)

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