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スポーツジムユーザーの完璧主義はオルトレキシアに関連することが縦断的研究で確認される

ジムユーザーを対象とする縦断的な研究から、完璧主義であることが、オルトレキシアと有意な関連のあることが示された。論文の著者によると、これら両者の関連はこれまでにも指摘されてきたが、その大半は横断的なデザインでの研究によるものであり、縦断的な解析の結果として示したのはこの研究が初めてとのことだ。また、完璧主義とは異なり、自分が完璧であると他者から評価されることを重視するという特性と、オルトレキシアとの有意な関連も確認され、この点も本研究により初めて明らかになった点だという。

ジムユーザーの完璧主義はオルトレキシアに関連することが縦断的研究で確認される

オルトレキシアと完璧主義および完璧主義的な自己顕示

オルトレキシアは、食事や栄養に関して病的なほど規律を守ろうとする強迫観念。現時点では、米国精神医学会の精神疾患の診断分類(Diagnostic & Statistical Manual of Mental Disorders,5th ed.;DSM-5)や世界保健機関(World Health Organization;WHO)の国際疾病分類(International Classification of Diseases 11th Revision;ICD-11)にオルトレキシアは規定されていない。ただし、近年、オルトレキシアに該当すると考えられる人が増加している可能性があると報告されている。とくに、競技のプレッシャーに日々さらされているアスリートは、オルトレキシアのリスクが高いことも指摘されている。

オルトレキシアを摂食障害の一つの亜型または閾値下の摂食障害とする考え方もある。摂食障害のリスク因子として、過度に批判的な自己評価を行う完璧主義も挙げられている。よって、オルトレキシアにも完璧主義が関連していると考えられ、そのような報告もみられる。ただ、それらの関連を示した研究の大半は横断的なデザインで検討されており、完璧主義がオルトレキシアのリスク因子と断定はできていない。

一方、完璧主義とは異なり、さまざまなメンタルヘルス状態との関連が示唆されている特性として、完璧主義の自己顕示という概念も存在する。これは、自分が実際に完璧であることよりも、他者から完璧と評価されることをより重要視する特性。そのような特性もまた摂食障害や身体イメージの固執、運動依存などと関連があるとする報告もみられる。そのため、完璧主義の自己顕示という特性がオルトレキシアに関連している可能性がある。

今回紹介する研究は、

  1. 完璧主義がオルトレキシアと有意に関連しているかを縦断的デザインで検討すること、
  2. 完璧主義の自己顕示という特性がオルトレキシアと有意に関連しているかを確認すること

などを目的として実施された。

6週間隔で2回の調査を行い、縦断的に解析

研究の対象は、2021年に英国内でソーシャルメディアを通じて募集されたジムユーザー。177人が第1回目の調査に回答し、その6週間後に行った第2回目の調査には、そのうちの82人が再度回答した。この6週間という間隔は、摂食障害の発症リスクを検討した過去の縦断研究に基づいて設定された。なお、2021年はコロナパンデミック下にあり、英国政府の外出制限等の規制が解除されておらず、回答したジムユーザーの多くが自宅でのトレーニングを行っていた。

回答者の主な特徴は以下のとおり。年齢は第1回目の平均が31.6±7.9歳、第2回目の平均は31.2±8.4歳、男性の割合は同順に61.6%、63.4%であり、トレーニング時間はどちらの調査時点でも60~90分/日の範囲だった。

オルトレキシアや完璧主義の評価手法

オルトレキシアの評価には、21項目からなる自己申告アンケート(eating habits questionnaire;EHQ)を用いた。「健康的な食事を摂ると気分がよくなる」などの質問に4段階のリッカートスコアで回答してもらうもの。ただし、EHQを用いたオルトレキシアの判定のためのカットオフ値はまだ確立されていない。

完璧主義の評価には、15項目からなる自己申告アンケート(多次元完全主義スケール、multidimensional perfectionism scale;MPS)を用いた。「自分が完璧主義だと思うか」などの質問に7段階のリッカートスコアで回答してもらうもの。15項目のショートバージョンは基になった45項目の基本バージョンと、妥当性や一貫性が許容範囲内であることが確認されている。

完璧主義の自己顕示の評価には、27項目からなる自己申告アンケート(完全主義的自己呈示尺度スケール、Perfectionistic Self-Presentation Scale;PSPS)を用いた。「公の場所でミスを犯すことは許されない」などの質問に7段階のリッカートスコアで回答してもらうというもの。

完璧主義のスコアでオルトレキシアを予測可能

上記3種類の評価スケールのスコアに基づき、第2回目の調査で把握されたオルトレキシアの状態が、第1回目の調査の完璧主義のスコア、および、完璧主義の自己顕示のスコアによって予測可能か否かを検討した。

解析の結果、第2回目の調査でオルトレキシアの程度を表すスコアを、第1回目の調査での完璧主義のスコア、および、完璧主義の自己顕示のスコアによって予測可能であることが明らかになった。ただし、重回帰分析でオルトレキシアと有意に関連している因子として抽出されたのは完璧主義のスコアのみであり、完璧主義の自己顕示のスコアは非有意だった。この結果の解釈として著者らは、「オルトレキシアに対する最も効果的な介入は、自己顕示の特性ではなく、完璧主義という特徴に対するものである可能性が高い」と述べている。

完璧主義がオルトレキシアに関連しているという新たなエビデンス

著者らは本研究の限界点として、第1回目の調査から2回目の調査にかけての脱落者が多く、積極的に2回の調査に参加したジムユーザーのみを対象としていることから、選択バイアスが存在する可能性のあること、対象をジムユーザーに限定したため、解釈の一般化は制限されること、MPSのショートバージョンに対しては評価精度に関する批判的論調もみられること、オルトレキシアの判定基準が確立されていないことなどを挙げている。

そのうえで、「本研究の結果は、完璧主義がオルトレキシアに関連しているという新たなエビデンスを追加するものとなった。また、完璧主義とオルトレキシアの関連に比べると、完璧主義の自己顕示という特性とオルトレキシアの関連は弱いと考えられる」と結論づけている。

文献情報

原題のタイトルは、「A longitudinal study of perfectionism and orthorexia in exercisers」。〔Appetite. 2023 Apr 1;183:106455〕
原文はこちら(Elsevier)

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