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コロナ禍の休校中に起床時刻が遅かった小中学生は、学校再開後の睡眠時間や清涼飲料の摂取量に大きな変化

コロナ禍で臨時休校中に、起床と朝食の時刻が遅かった小中学生は、学校再開後、起床時刻と睡眠時間、清涼飲料の摂取量に大きな変化が生じていたことが報告された。東京大学の研究グループの研究によるもので、詳細が「Journal of Nutritional Science」に論文掲載されるとともに、同大学のサイトにプレスリリースとして掲載された。小中学生4千人以上を対象とする縦断調査の結果。

コロナ禍の休校中に起床時刻が遅かった小中学生は、学校再開後の睡眠時間や清涼飲料の摂取量に大きな変化

研究の概要

学校は学齢期の子どもたちの生活に大きくかかわっている。COVID-19の流行による長期の臨時休校中の生活習慣は、学校が再開された後の生活習慣にも影響している可能性がある。そこで、東京大学未来ビジョン研究センターや同大学大学院医学系研究科の研究グループは、臨時休校から学校が再開された直後(2020年6月)と、学校再開後(2020年7月~2021年2月)に、小中学生4,084人に対して縦断調査を実施。臨時休校中および学校再開後の睡眠や食事、運動などの生活習慣を尋ねた。

全体として、学校再開後は、起床時刻が1間早くなるとともに睡眠時間は1時間短くなっていた。一方で食事の摂取量は、チアミン、ビタミンB6、カリウム、果物類、乳製品類で増加が見られ、砂糖・菓子類と清涼飲料類で減少がみられたものの、その他の食品・栄養素の摂取量には大きな差はみられなかった。また、睡眠習慣の変化に比べると、食事摂取量の変化は相対的に小さいものだった。

調査で得られた臨時休校中の起床・就寝・食事の時刻パターン別にこれらの変化を分析したところ、起床と朝食の時刻が遅かったパターンの子どもたちは、起床と朝食の時刻が早かった(つまり、平時と同様の時刻と思われる)パターンの子どもたちに比べて、起床時刻と睡眠時間の変化がより大きく、さらに、清涼飲料類摂取量の減少幅が大きい傾向が見られた。

臨時休校中も、子どもたちの食事はあまり悪くなっていなかった可能性が示唆された一方で、学校の再開により、子どもたちの睡眠習慣が大きく変化していたこと、夜型に近い子どもでは変化がより顕著であったことが示された。

研究の詳しい内容

研究の背景:コロナ禍の休校と再会の子どもたちへの生活パターンへの影響は?

COVID-19の流行により、日本を含め世界の多くの国で臨時休校が実施された。日本では、臨時休校中の学齢期の子どもたちの睡眠と食事の時刻パターンの分析から、平時より著しく遅い時刻に起床し朝食をとっている子どもたちがいたこと、その子どもたちでは不健康な生活習慣を持つリスクが高いことが示された。長期の臨時休校中の生活習慣は、学校が再開された後の生活習慣にも影響している可能性があるが、学校再開後の睡眠習慣、食事習慣の変化は明らかになっていない。

そこで本研究では、①臨時休校から学校が再開した後の小中学生の睡眠習慣と食事摂取量の変化を調べること、②臨時休校中の睡眠と食事の時間的パターンの違いによる変化の有無について検討すること、を目的とした。

研究内容:睡眠パターンに比べれば食習慣への影響は少ない傾向

調査では、全国14都道府県の47の学校・団体に所属する小中学生を対象とした。2020年6月(臨時休校中の生活習慣の測定)と2020年7月から2021年2月(学校再開後の生活習慣の測定)の2回に、質問票(簡易型自記式食事歴法質問票を含む)を配布した。初回調査でリクルートされた1万1,958人のうち、2回の調査の両方で質問票に回答し、必要な変数のそろっている4,084人の子ども(8~15歳)を解析対象とした。

就寝および起床時刻、睡眠時間、主な栄養素および食品群の摂取量を、臨時休校中と学校再開後とで比較。さらに、潜在クラス分析※1から得られた臨時休校中の睡眠・食事の時刻パターンの四つのクラス間で、これらの変数の変化を比較した。

なお、潜在クラス分析※1により、とくに起床と朝食の時刻が異なる四つのパターンが見いだされた。

※1 潜在クラス分析:カテゴリカル変数を用いて、解析対象の集団に属する個人を、統計的にクラス分けする手法。

四つのパターンは、時刻の順に、「非常に早い(6時頃に起床、6~7時頃に朝食)」、「早い(7時頃に起床、7時頃に朝食)」、「遅い(7~8時頃に起床、8時頃に朝食)」、「非常に遅い(8~10時頃に起床、9~10時頃に朝食)」とラベル付けされた(図1)。

図1 臨時休校中の睡眠および食事の時刻パターン

臨時休校中の睡眠および食事の時刻パターン
  • 起床と朝食の時刻が遅いパターンほど、起床する時間帯と、朝食をとる時間帯が遅い
  • 起床と朝食の時刻が「とても遅い」パターンでは昼食をとる時間帯が遅い
  • 夕食をとる時間帯は、パターン間の差が小さい
  • 起床と朝食の時刻が遅いパターンほど、就寝する時間帯も遅いが、パターン間の差は小さい
潜在クラス分析を用いて、対象者の臨時休校中の睡眠および食事の時刻のパターンを分類した。睡眠は、起床と就寝の時刻を、食事は、朝食と昼食、夕食、夜食を食べ始めた時刻を用いた。結果、とくに起床と朝食の時刻が異なる四つのパターンが見いだされ、時刻順にそれぞれ「とても早い」「早い」「遅い」「とても遅い」パターンと名付けられた。
(出典:東京大学)

起床と朝食の時刻が早いパターンでは、学校のある平時と同様の時刻に起床し朝食をとっていると思われたが、遅いパターンでは、早いパターンと比較して、起床、朝食、昼食の時間帯が1~2時間以上遅くなっていた。学校の再開後、全体として、参加者の起床時刻は休校中より1時間早くなり、睡眠時間は0.94時間短くなった(図2)。

図2 臨時休校中と学校再開後の睡眠習慣の比較

臨時休校中と学校再開後の睡眠習慣の比較
いずれの群でも、起床時刻は早くなり、睡眠時間が短くなっている傾向がみられた。「とても早い」パターンでは、変化が比較的小さかった一方で、「遅い」パターン、「とても遅い」パターンになるにつれて、変化が大きくなる傾向がみられた。
(出典:東京大学)

食事摂取量は、チアミン、ビタミンB6、カリウム、果物類、乳製品類で増加が見られ、砂糖・菓子類、清涼飲料類で減少が見られたものの、効果量は小さかった。また、休校中に起床と朝食の時刻が遅いパターンを持っていた子どもでは、起床時刻、睡眠時間、清涼飲料類の摂取量の変化がより大きい傾向がみられた(図3)。

図3 臨時休校中と学校再開後の食品摂取量の比較

臨時休校中と学校再開後の食品摂取量の比較
とくに起床・朝食の時刻が遅いパターンに分類された子どもほど、休校中に比べて、学校再開後の清涼飲料類の摂取量の減少量が多い傾向がみられた。
(出典:東京大学)

結論として、学校に通うことが、子どもたちの睡眠習慣、とくに起床時刻に大きな影響を及ぼすことが示唆された。食事摂取量については、子どもたちの家族が、COVID-19の流行下で子どもたちの健康と食事に気を遣っていたために、学校の再開後も大きく変化しなかったと考えられる。

社会的意義

本研究により、長期に学校が休校になった際、平時より著しく遅い時刻に起床し朝食をとっている子どもでは、学校再開後に睡眠習慣への変化が大きいことが明らかになった。将来、感染症や災害等による長期の休校が起き、その後に学校が再開すると、夜型に近いタイプの子どもでは、睡眠習慣の変化への影響が大きくなる可能性が示唆された。

プレスリリース

コロナ禍による臨時休校中に、起床と朝食の時刻が遅かった小中学生は、学校再開後、起床時刻と睡眠時間、清涼飲料の摂取量に大きな変化(東京大学)

文献情報

原題のタイトルは、「What happened among Japanese children from school closure due to COVID-19 after school re-opening? Changes in sleep habits and dietary intake」。〔J Nutr Sci. 2023 Jan 23;12:e8〕
原文はこちら(Cambridge University Press)

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