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日本人男子大学生の社会的時差ぼけの最大の原因は、講義開始時間が曜日によって異なること?

日本人男子大学生を対象に、社会的時差ぼけと関連する因子を検討した研究結果が報告された。平日と休日の睡眠時間の差よりも、平日の起床・就床時刻の不均一性のほうが、より強い影響を与えているという。広島工業大学環境学部地球環境学科の西村一樹氏らの研究によるもので、「Chronobiology International」に論文が掲載された。

日本人男子大学生の社会的時差ぼけの最大の原因は、講義開始時間が曜日によって異なること?

社会的時差ぼけは、日中のパフォーマンス低下や疾患リスクの上昇を招く

睡眠時間が短いことがさまざまな疾患リスクと関連のあることはよく知られている。また、日本は人々の睡眠時間が世界で最も短い国とされており、平日の睡眠不足を休日に補おうとする人も少なくない。ただし、平日と休日の睡眠時間の差が大きいこと、いわゆる社会的時差ボケ(social jetlag)も、インスリン感受性の低下と関連があるという報告があり、また、喫煙習慣や運動不足といった非健康的な習慣の増加、肥満や糖尿病、心血管代謝性疾患のリスク増大、メンタルヘルスの不調との関連も報告されている。

平日の睡眠時間が少ない人は社会的時差ボケのリスクが高いと考えられるが、それに加えて、平日の睡眠習慣が不規則なことも、社会的時差ボケのリスクとなる可能性がある。大学生は、曜日によって講義の開始時刻が異なることが多く、平日の睡眠習慣が不規則になりやすい。ただし、そのような視点での既報研究はほとんどなく、社会的時差ボケにどのような因子が最も影響を及ぼし得るのかは明らかになっていない。

西村氏らは、週末の長時間の睡眠時間と、平日の起床・就床時刻の不均一性が、社会的時差ボケに関連しているという仮説を立て、以下の検討を行った。

睡眠時間の乱れよりも起床・就床時刻の乱れのほうが影響大

この研究には、19~22歳の日本人男子大学生1,200人が参加した。連続8日間の睡眠日誌をつけてもらい、睡眠習慣を把握。その記録が不十分な参加者や、クロノタイプの評価のため休日(休講日)の起床にも目覚まし時計を利用していた参加者は、解析から除外し、最終的に1,092人を解析対象とした。なお、大学の講義開始時刻は、8時50分、10時30分、13時15分、15時10分、17時05分の5通りだった。

社会的時差ぼけの程度は、休講日の平均睡眠時間の中間点の時刻と、登校日のその時刻との差で定義した。このほかに、休講日の平均睡眠時間の中間点の時刻からクロノタイプを把握。また、連続2日間の起床・就床時刻の標準偏差も、社会的時差ボケとの関連する可能性のある因子として検討に加えた。

男子大学生の時差ボケの程度は約1時間で、43%が1時間以上の社会的時差ボケを有している

解析の結果、起床時刻は8時30分±1.1時間、就床時刻は25.0時(1時)±1.1時間、睡眠時間は7.5±1.1時間であり、クロノタイプの指標であるsleep corrected MSF(midsleep on free days)は5時18分±1.5時間であって、社会的時差ボケの絶対値は1.1±1.0時間であることがわかった。また、43.2%の学生は社会的時差ボケの絶対値が1時間以上であり、14.2%は2時間以上だった。

各パラメーター同士の相関の検討から、クロノタイプはその他のパラメーターとの相関係数が0.7以上であり、社会的時差ボケの独立変数の候補から除外。続いて施行した重回帰分析の結果、起床時刻、就床時刻、睡眠時間、および登校日と休講日の起床時刻の差は、社会的時差ボケとの関連が非有意だった。

一方、以下の因子が社会的時差ボケに関連する独立変数として特定された。起床時刻の標準偏差(β=0.487)、登校日と休講日の就床時刻の差(β=0.469)、登校日と休講日の睡眠時間の差(β=0.265)、就床時刻の標準偏差(β=0.209)。

週末に近づくほど、起床・就床時刻が乱れていく

このほか、連続する2日間の起床時刻や就床時刻の標準偏差の検討から、週の初めから週末に近づくにつれて、標準偏差が大きくなっていくことがわかった。著者らはこの点について、疲労の蓄積と社会的時差ボケとの関連を表しているのではないかとの考察を加えている。

本研究の仮説は、「社会的時差ボケは、週末の睡眠時間の延長だけでなく、平日の起床・就床時刻の乱れにも関連している」というものだった。検討の結果、前述のように、評価したすべての睡眠関連パラメーターのなかで、起床時刻の標準偏差や登校日と休講日の就床時刻の差が睡眠時間の差よりも、社会的時差ボケ強い関連があることが示された。これにより著者らは、「この結果は研究仮説を支持するもの」と述べている。また、大学生の生活パターンは曜日ごとに異なる講義始業時間の影響を受けやすいが、「始業時間にかかわりなく、起床時刻を一定に保つことが、社会的時差ボケにつながるのではないか」と付記している。

一方、研究の限界点として、睡眠日誌の記録が8日間という短期間であったこと、対象が男子大学生のみであること、睡眠習慣に影響を及ぼし得る日光曝露時間、スクリーンタイム、居住環境、社会経済的状況、BMIなどを評価していないことなどを挙げ、この知見の一般化のために、さらなる研究が必要としている。

文献情報

原題のタイトルは、「Examination of sleep factors affecting social jetlag in Japanese male college students」。〔Chronobiol Int. 2022 Dec 20;1-7〕
原文はこちら(Informa UK)

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