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競技やレベル・性別によって必要度の高いサプリメントが異なる? 山岳ランナーでの検討結果

スポーツアスリートの多くがサプリメントを利用しているが、行っている競技や競技レベル、性別によって、利用するサプリが異なるのだろうか。このような視点で、山岳ランナーを対象に調査し、既報研究の結果と比較検討した論文を紹介する。山岳ランナーが利用しているサプリはエビデンスレベルの高いものが主体であり、その選択の背景には栄養士の関与が示唆されると、著者らは述べている。

競技やレベル・性別によって必要度の高いサプリメントが異なる? 山岳ランナーでの検討結果

山岳ランナーのサプリ摂取状況の特徴を探る

近年、山岳ランニングの人気が高まっている。山岳ランニングの大会は、開催される山の標高の高低によって難易度が大きく異なる。また、レース距離も短いものは20kmほどだが長いものは200km以上にもなる。これらのレースを完走し好成績をおさめるには、入念に練られた栄養戦略が欠かせず、スポーツサプリメントが必要になることが多い。ただし、山岳ランニングを行うアスリートが利用することの多いスポーツサプリの傾向は、これまで十分に調査されなく、十分な客体で調査したものは本論文の研究が初めて。

研究仮説として、以下の3項目が立てられていた。

  • 仮説1:最も利用頻度の高いスポーツサプリは、性別によって異ならない。
  • 仮説2:女性のスポーツサプリ摂取量は、男性よりも少ない。
  • 仮説3:山岳ランナーのスポーツサプリ摂取状況は、トライアスリート、水泳選手、ランナーなど、他の持久系アスリートで報告されている結果と異ならない。

山岳ランナーの94%がサプリを利用

研究対象は、スペインの関連団体を通じて募集された。既報研究から統計学的な有意差を検証するには357人が必要と推定され、男性262人、女性95人が解析対象とされた。年齢は37.27±10.52歳で、全員が少なくとも2年以上、地域大会レベル以上の競技会に参加してきており、過去6カ月以内に疾患や怪我の既往のあるアスリートは含まれていなかった。

競技レベルは、地域大会レベルが239人(男性178人)、国内大会レベルが97人(男性74人)、国際大会レベルが21人(男性10人)。

競技レベルの高いアスリートはエビデンスのあるサプリを利用

全体の93.84%がスポーツサプリを利用していた。利用率自体は、競技レベル(地域レベル 92.89%、国内レベル95.88%、国際レベル95.24%)や性別(男性94.65%、女性91.57%)による有意差はなかった。

ただし、サプリのエビデンス別に解析すると、競技レベルの高いアスリートは、エビデンスレベルの高いサプリの利用数が多いという有意差があった。より具体的には、オーストラリア国立スポーツ研究所(Australian Institute of Sport;AIS)によるABCD分類のカテゴリーAの利用サプリ数が、地方レベルでは4.52±0.20、国内レベルでは5.36±0.30、国際レベルでは6.05±0.66だった。なお、AISのABCD分類のカテゴリーAはスポーツにおける有益性のエビデンスのあるもの、カテゴリーBはさらなるエビデンスが必要とされ研究目的で使用されるべきもの、カテゴリーCは有益性のエビデンスがほとんどないもの、カテゴリーDは禁止物質やそのリスクのある物質。

サプリ使用のきっかけとなった人物は、栄養士がトップ

サプリの使用目的は、パフォーマンスの向上が66.95%で首位。次いで健康管理が18.49%だった。摂取するタイミングは、トレーニング日と競技参加日が59.94%、競技日が24.93%、毎日が10.64%だった。

サプリを摂取し始めた契機となった人物は、栄養士が33.61%でトップであり、続いてコーチ28.29%、友人21.57%などが挙げられた。購入ルートは専門店が48.18%、インターネット44.82%、薬局15.97%などで、栄養士への相談を介してという回答も6.72%あった。

性別・競技レベル別にみた利用率の高いサプリ

利用されているスポーツサプリのタイプをみると、スポーツドリンク(60.5%)、スポーツバー(66.1%)、スポーツ ジェル(52.9%)、カフェイン(46.2%)の順だった。

性別で比較した場合、スポーツドリンク(p=0.020)、炭水化物サプリ(p=0.025)、 分枝鎖アミノ酸(BCAA.p=0.028)は、男性のほうが有意に多く利用していた。一方、鉄サプリは女性の利用のほうが有意に多かった(p=0.000)。

競技レベル別の比較では、国際レベルのアスリートはホエイプロテイン(p=0.007)、鉄サプリ(p=0.010)、ビタミンD(p=0.040)、およびカフェイン(p=0.046)の利用が多く、国内レベルのアスリートはクレアチン一水和物(p=0.005)とBCAA(p=0.015)の利用が多かった。

これらの結果を基に著者らは結論を以下のように記している。

「山岳レースにおけるスポーツサプリメントの利用は、その生理的特性から高い。アスリートの競技レベルが上がるほど利用率が高くなる。山岳アスリートが最も利用しているスポーツサプリは、スポーツドリンク・バー・ジェル、カフェインであり、エビデンスレベルが最も高い、カテゴリーAに属するサプリが中心だった。また、多くの山岳アスリートが栄養士からアドバイスを得ていた。それは、利用されていたサプリがカテゴリーAのものが中心であったことの理由の一部を説明するものと言える。なお、サプリの利用状況としては、他のスポーツで行われた既報研究と同様の傾向だった」。

文献情報

原題のタイトルは、「Are the Consumption Patterns of Sports Supplements Similar among Spanish Mountain Runners?」。〔Nutrients. 2023 Jan 4;15(2):262〕
原文はこちら(MDPI)

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