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子どもの朝食欠食、睡眠の質低下、身体活動量低下、注意力低下は一つのセットになっている

子どもたちの好ましくない行動、例えば朝食の欠食や遅い就床時刻、それに伴う睡眠の質の低下、身体活動量の少なさなどは、それらが単独で発生していることは少なく、セットになって発生しているとする研究結果が報告された。ドイツからの報告。

子どもの朝食欠食、睡眠の質低下、身体活動量低下、注意力低下は一つのセットになっている

良くない習慣は個別に発生しているのか、それともセットになっているのか?

朝食を食べないことで、注意力や記憶力、実行機能などの認知機能が低下するが、これは成人だけでなく、子どもたちの間でもそのような関係があることが知られている。子どもたちの認知機能にマイナスの影響を及ぼす、もう一つの明らかになっている要因は、睡眠だ。睡眠時間が少ないこと、および、睡眠の質の低さは認知機能の低さと関連があり、また、身体活動時間・量の少なさや肥満リスクの上昇との関連も示唆されている。新型コロナウイルス感染症のパンデミック以降、子どもたちのスクリーンタイム(スマホやパソコンの操作、テレビの視聴時間など)が延びて、このような傾向に拍車がかかっていることも報告されている。

では、朝食を欠食することや、身体活動量が少ないこと、睡眠習慣が良くないこと、そして認知機能の低下は、それぞれ独立して発生しているのだろうか? より具体的には、それらの行動や状態が該当する子どもは、重複することなく、個別に存在しているのだろうか? 今回紹介する論文の著者らは、これらの関連性にスポットを当てて以下の研究を行った。

朝食の摂取状況と睡眠習慣、身体活動量に有意な関連

この研究の対象は、ドイツのある総合学校の5年生と6年生のうち、保護者の同意の得られた223人(男児63.7%)。注意力のテストと、睡眠・身体活動・朝食摂取習慣に関するアンケートを行った。

注意力のテストは、静かな教室内でパソコンを用いて評価。黒い画面に26個の白い正方形が表示され、そのうち一つだけが緑に変換される。そこをクリックすると色がグレーに変わり、できるだけ早くすべてをグレーにするというもの。アンケートでは、前日の就床時刻、睡眠時間、睡眠の質(よく眠れたか)、当日の朝食を食べたか、ふだん朝食を食べているか、学校外でのスポーツを行う頻度などを質問した。

1割強が朝食を欠食

男児と女児で結果を比較すると、朝食摂取状況には有意差がなく、全体の60.5%は調査当日の朝食を十分摂取していた。一方で27.8%は調査当日の朝食を摂取してきておらず、10.9%はふだんから朝食を食べてなかった。

睡眠習慣についても有意な性差はなかった。平均睡眠時間は9時間10~15分、就床時刻は20時47~55分、起床時刻は6時12~17分、睡眠の質が良くないと回答した割合は9.4%だった。

それに対して身体活動量については男児のほうが多いという有意な性差が認められた。まず、学校外でのスポーツを行う頻度は男児が週4回、女児は週2回であり、学校外でスポーツを全く行っていない割合は同順に2.8%、12.5%(いずれもp<0.001)。ただし、1日の歩数は有意差がなかった。

続いて注意力テストの結果は、最初の緑の正方形に反応するまでの時間(男児4.1±1.7 vs 女児4.5±1.2秒)、すべてをチェックし終えるまでの時間(38.1±7.27 vs 43.0±9.3秒)ともに男児のほうが優れていた(いずれもp<0.001)。

朝食を食べない子どもは就床時刻が遅く、学校外でのスポーツをしていない

次に、朝食の摂取状況で3群(当日に十分な食事を摂取していた群、当日は朝食を摂取していなかった群、ふだんから欠食している群)に分け、睡眠習慣や身体活動量、BMIなどとの関連を検討。その結果、以下のように、睡眠習慣と学校外でのスポーツ活動の頻度に有意差が認められた。

睡眠習慣については、起床時刻は全群同等だが、就床時刻は、当日に十分な食事を摂取していた群は20時46分、当日は朝食を摂取していなかった群は20時50分、ふだんから欠食している群は21時12分であり、朝食を食べない群で有意に遅かった(p=0.007)。また睡眠時間は同順に、9時間28分、9時間ちょうど、9時間10分であり、調査当日に朝食を摂取していなかった群で短かった(p=0.012)。

学校外でのスポーツ活動の頻度は同順に、週4回、週3回、週2回であり、朝食欠食群で低かった(p=0.014)。

なお、BMIについては有意な群間差がなかった。

子どもの不健康な習慣は集積しやすい

次に、注意力テストの結果を従属変数、睡眠習慣、BMI、朝食摂取状況、身体活動量を独立変数とする回帰分析を施行。その結果、統計的有意性の見られる関連は示されなかった。そこで二項目間の相関を割り出して全体の関連性を検討した。すると、さまざまな有意な関連が浮かび上がった。

例えば朝食欠食は、就床時刻の遅さ、睡眠時間の短さ、歩数の少なさ、学校外でのスポーツ活動の頻度の少なさと有意な関連があり、学校外でのスポーツ活動の頻度の少なさはBMI高値や注意力の低さと有意な関連があった。また、注意力の低さは就床時刻や起床時刻の遅さ、睡眠の質の悪さと関連があった。

以上を基に著者らは、「学校に登校する前の朝食の摂取は、身体活動量や睡眠習慣と関連していて、それらを介して注意力課題の結果とも関連があり、これらのうち、一つの不利な行動が単独で発生していることはほとんど認められない。よって、子どもの認知機能や可能性を増進させるためには、全体論的なアプローチが必要とされる」と結論づけている。

文献情報

原題のタイトルは、「Unfavorable Behaviors in Children Run in Packs! Dietary and Non-Dietary Modulators of Attentional Capacity」。〔Nutrients. 2022 Dec 9;14(24):5264〕
原文はこちら(MDPI)

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